第4話 日本の親密さや特性を活かした「ユーザビリティ」 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第4話 日本の親密さや特性を活かした「ユーザビリティ」

2024.5.10 FRI

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現在のWebビジネス戦略において欠かすことができない「ユーザイビリティ」。ユーザー視点からWebサイトを設計・構築し、Webビジネス戦略を立案する「ユーザビリティ」の方法論をいち早く確立し、また、独自のユーザ個別行動観察「ユーザビリティテスト」といった観察手法を用いてWebビジネスの世界にイノベーションを吹き込んできたのがビービットである。今回はビービットの設立メンバーのひとりであり、取締役兼プロジェククトマネージャーでもある武井由紀子氏にビービットという会社について、そして「ユーザビリティ」という概念についてなどの話を伺った。

第4話 日本の親密さや特性を活かした「ユーザビリティ」



ビービットの方法論を世界へ



——最近のWebにおけるデザインについてはどう思いますか?

武井●最近はデザインがしっかりしていて、ユーザーの気持ちをしっかりと踏まえているサイトが増えてきていますよね。一流のクリエイターさんは見た目のデザインだけではなくて、ユーザーのことも本当によく考えていて、決してひとりよがりのデザインはしないですよね。そういった点で、我々とコアなところではいっしょだなと思います。コミュニケーションの重要性や人間の心理などがよくわかっているなと。

——今後はどのような展開を考えていますか?

武井●ユーザー理解をするというのはとても地味な作業なのですが、それは実はとても価値があることだと思っているんですね。ぱっと見が派手でよく見えるものよりも、地道なものこそ価値があるはずで、その価値はけっして日本だけでなくて世界でも認めていただけるものと思っています。ですから国内だけではなく、世界中に何らかの形、コンサルティングなのかソフトウェアなのかわからないのですが、この価値を広めていけたらいいなと考えています。

「ユーザビリティ」という方法論はアメリカから来ていて、そういった新しい方法論や枠組みを創出する大胆さやアイデアにおいてはアメリカの方が上手だと思うことが多いですが、日本の緻密さなどの特性を活かしたら、世界に貢献できることもまだまだ多いと思っています。また昨年、弊社はソフトウェア事業に乗り出し、広告効果測定ツールをリリースしたのですが、こういったソフトウェアも「ユーザを理解する」「ユーザのことを意識できるようになる」ということを強く意識して作っていまして、こういったツールの普及にも努めていきたいと考えています。

あとは、企業のなかでWebが重要視されてきていて、Webの担当部署も以前は広報部やシステム部だったのが、いまはWebビジネス部といった専用の部署だったり、経営企画室やブランド室が担当するようになり、Webが会社の中枢機能のひとつとして位置づけられてきています。経営者もWebに興味をもつようになってきているので、よりもっと高度な分析とか、企業のなかでどのように活用していくのか、といったWeb戦略がますます必要になっていくのではないでしょうか。

ですから、ただ見た目がきれいだとか、ユーザーが気持ち良いだけではなく、ビジネス的視点も含めたコンサルティングがますます必要になってきているので、我々の需要も増えてきていると思います。また、データベースと連携していくとか、コールセンターや営業店といった他の媒体とどう連動していくといった案件も増えてきているので、そういったことには積極的に取り組んでいきたいです。




表層的なものに頼り過ぎず目的を大事に



——今後のWeb状況はどうなっていくと思いますか?

武井●Webは企業と個人とが直接コミュニケーションをとることができるツールなので、そこでなにを生み出すことができるか気になりますね。いまは企業がブログをつくったりもしていますが、それ以外に、企業と個人がきちんとしたコミュニケーションをとれるものを考えていくべきだと思います。

結局企業が生み出したものを消費者が消費をして、その消費者もいち企業人として繋がっているわけで、今まではその繋がりが見えてこなかったのが、その循環のなかにWebが入っていくことによって、もっといい商品が世の中に出てきたり、いいフィードバックがお客様から企業に入って、それで社会がよくなっていくとか、そういった触媒みたいにWebがなっていくといいですよね。

——Webの問題点はあると思いますか?

武井●Webの問題点ではないかもしれませんが、“土足マーケティング”はやらない方がいいですよね。インターネットってデジタルですから、すべてがデータになるのはいいのですが、そのデータを活かして企業がユーザーに対していろいろなことをやり過ぎだなって思う瞬間もときどきあります。アメリカではcookieを削除している人も増えてきていますし、日本もそういった動きは当然今後増えてくるのではないでしょうか。

ですから、土足で踏み込むようなマーケティングに頼っていると、いきなり梯子をはずされるようなことも起きうると思います。もちろんデータベースと連動することも重要でしょうが、一方でやり過ぎないというか、ユーザーを裏切らない節度を持つという倫理観がとても重要になると思います。データを元に企業はいろいろなことをやりますが、それが加熱しすぎると、かえってユーザーの拒絶反応を招きます。そこは注意しなければいけないと思います。

また、そういった技術やデータだけを頼りにしていること自体も危険だと思いますね。技術に踊らされず、よりベーシックなところでどうユーザとコミュニケーションをとって行くのか、もっと人間の知恵も使って考え続けないと上手くいかなくなる瞬間がやってきてしまうと思います。

結局は、なんのためにサイトをやっているのかという目的が重要だと思いますね。人を集めることだけに集中してSEO対策ばかりがエスカレートしてもお金の無駄使いということだってありますし。目的が売り上げや会員数を増やすということであれば、SEOにお金をかけなくてもいいことだってあるかもしれません。おもしろいコンテンツを出すことのほうが先じゃないのかなってケースも多いですよね。

我々はSEOというのはコンテンツの価値を上げることと定義していますが、それは決して上位表示することだけではないし、コンテンツに魅力を感じてもらって長期的に付き合えるユーザーを連れてくることのほうが大切だと考えています。ネットの世界は技術や流行が絶えず変化しているので、そういった表層的なことではなく根幹にあるものを見失わないことのほうが大事ですからね。





——武井さんのインタビューは今回が最終回です。次回は●●さんの予定です。 ——

(インタビュー/編集部 撮影/谷本夏 編集/蜂賀亨)






[プロフィール]
(株)ビービット取締役
武井由紀子(たけい・ゆきこ)


早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。金融機関の組織戦略立案や官公庁のシステム開発に従事した後、ビービット設立に参加。ビービットでは、金融機関や製造業、インターネット専業企業などのウェブサイトコンサルティングに携わる。主な関与先は、三井住友銀行、本田技研工業、Yahoo!JAPAN、マネックス証券など。著書に『ユーザ中心ウェブサイト戦略』(ソフトバンク・クリエイティブ、2006)、『ウェブ・ユーザビリティルールブック』(インプレス、2001)がある。



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