第3話 日本酒のオリジナルボトル | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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第2話に引き続き、柿木原政広氏によってデザインされた作品を紹介し、その制作過程における思考のプロセスに迫る。第3話では、リニューアルを果たした日本酒「人気一」(人気酒造)のボトルに注目。


第3話
日本酒のオリジナルボトル
「人気一」



花鳥風月を表現した装飾



福島県二本松市にある蔵本、人気酒造。そこで製造されている大吟醸酒「人気一」が、ラベルを含めたボトルデザインを一新。3月に開催された食のイベント「FOODEX JAPAN 2008」で初披露され大きな話題を呼んだ。

「瓶の外周には、富士山や雲、千鳥、波、月、雪輪、桜など、日本の四季を感じさせる花鳥風月のような細工を施しました」
海外への輸出も決まっていたため「日本を代表するものにする」がひとつの目標とされたオリジナルボトル。今後同社の芋焼酎やスパークリング日本酒などでも採用される予定である。
「透明のガラスを採用しているため、ボトルの手前にある細工だけでなく、反対側に施された細工も透けて見えます。日本酒を飲みながら、これらを眺めても楽しいのではないでしょうか」


熱い想いと職人の技術



制作初期段階では、粘土を利用した模型を用意。その段階でクライアントへのプレゼンテーションを経て、アクリルを使用したサンプル作成へとコマを進める。それを元に厚みなどの情報を加え、型作りを担う職人へと入稿する。模様には凹凸が複雑に入り交じっていたため、現場チェックの段階では細かなニュアンスを伝えながらの微調整が重ねられた。

「このボトルデザインでは、水準の高い日本のガラス技術と、日本酒の職人の技術を、うまくリンクさせたかったのです。それなのに最終段階で手を抜いてしまったら、日本酒自体も“そんなものか”と思われてしまう。それだけは避けたかった。関係者にも自分の想いを伝えながらご協力いただきました」
ボトルのデザインを手がけたのはこれがはじめてだったという柿木原氏。パッケージデザイナーとタッグを組みながらの作業だったが、初めての体験には戸惑いも多かった。だからこそ完成したときの喜びは、ひとしおだったそうだ。

長期的な目線で捉えるモノ作り



さらに「人気一」では、外装パッケージにも一工夫が見られた。通常は木箱に収められるものだが、もうひとつ風呂敷を利用したパッケージも用意された。
「海外などに“日本”を伝える意味では風呂敷は最適です。一見すると、全体を包んでいる布と花の装飾は別物に見えるでしょうが、花結びという手法を用いて、1枚の風呂敷でパッケージしています」

風呂敷の色を決める際に、試しに白い布でボトルを包み、その状態のまま着色、それを紐解いてみると美しい色のグラデーションが目の前にあらわれたと語る柿木原氏。この風呂敷は、コストや手間などの都合から、すべての店舗で採用されるとはいかないが、これが実現した背景には、クライアントからの深い理解と力強いアシストがあった。

「商品を短期的に売ることだけを目的としていたら、コストの問題などに阻まれて実現しなかったかもしれませんが、日本酒のビジネス自体が長期的なもので、良いものを残していくという考えに根ざしていますからね。僕も日頃から長期的に積み上げていくようなデザインをしたいと考えていましたので、これはとても有意義な仕事でした」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)


次週、第4話は「子どものためのデザイン」について伺います。こうご期待。




●柿木原政広(かきのきはら・まさひろ)
1970年広島県生まれ。1993年拓殖大学工学部工業デザイン学科卒業。広告制作会社ザ・マンを経て1996年ドラフトに入社。03年日本グラフィックデザイナー協会新人賞受賞。07年に株式会社10を設立。

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