ウェブアクセシビリティ・レポート 第5回 ブログ、SNSのアクセシビリティを考える | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

ウェブアクセシビリティ・レポート 第5回 ブログ、SNSのアクセシビリティを考える

2024.4.24 WED

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ウェブアクセシビリティ・レポート

文=KeiYu HelpLab石田優子
ユーザーの視点に立ったサイト構築、運営に関するユーザビリティ、アクセシビリティの向上などのコンサルティング、調査などを行っている。


第5回
ブログ、SNSのアクセシビリティを考える


ネットにおけるコミュニケーション手段として欠かせないものになりつつあるブログとSNSだが、その利用者の中には障害者や高齢者も含まれる。今回はブログ、そして代表的なSNSであるmixiのアクセシビリティなどを取り上げる。


ブログのアクセシビリティ

音声読み上げソフトでわかりやすいブログのデザイン
ブログのデザインでは、左右にサイドバーを付けた3カラムレイアウト、左右いずれかにサイドバーを付けた2カラムレイアウトが多いが、このうち音声読み上げソフトユーザーにとってわかりやすいのは、右にサイドバーがあるレイアウトだ。

多くの場合、ユーザーがブログで真っ先に欲しいのは記事本文の情報だ。この記事が左側にあると最初に読み上げられ、それから右のサイドバーの過去記事やリンクへと移動することができる。CSSでレイアウトをする場合、レイアウトは構造とは関係なく定義できるので、構造的に本文が先になるように設定すれば左サイドバーでもよいということになるのだが、ややこしくつくり込むよりは、素直に右サイドバーレイアウトにするほうがよいだろう。

記事はひとつのみが表示される形式よりは、月ごとなど、下まで続いているほうが、右サイドバーと行き来しないですむので探しやすい。また、音声読み上げブラウザのホームページ・リーダーやボイスサーフィンには見出し読み上げモードがあり、全部のテキストを読み上げないでも、見出しだけをたどって必要な情報にたどり着くことができる。このため、日付やエントリーのタイトルなどを見出しタグでマークアップしているとわかりやすい【1】。

【1】右サイドバーレイアウトの例
【1】右サイドバーレイアウトの例


音声読み上げユーザーがブログを作成するうえでの問題
多くの音声読み上げユーザーが、既存のブログサービスを利用しているが、ここでよく問題となるのが、ブログのユーザー登録時に必要な画像認証だ。

画像認証の中には音声読み上げソフトで閲覧している場合、画像の文字が見えなくても文字や数字を音声で聞くことができ、それを入力するようにしているシステムがあるが、実際のところまだ少ない。画像を読み取る必要があるシステムの場合は、音声読み上げソフトではそこで操作に行き詰まってしまう。

しかし、いったんユーザー登録さえできれば、通常のWebサイト制作よりも操作が簡単なブログは障害者や高齢者にとっても使いやすい点が多く、実際利用者は多い。ブログサービスや提供されているテンプレートによって使い勝手の差が出るが、支援ソフトを使いながらでも、慣れればエントリーの投稿やコメント付け、トラックバックが行える【2】。

【2】ブログサービスなどのユーザー登録時には画像認証を求められることが多い
【2】ブログサービスなどのユーザー登録時には画像認証を求められることが多い


音声読み上げソフトユーザーに使いやすいRSSリーダー
音声読み上げユーザーも、ブログの閲覧にはRSSリーダーを利用している場合がある。代表的なものとしては、ニュース TO スピーチのRSS/Atomリーダー機能などがそうだ。

ニュース TO スピーチはニュースサイトの情報をすばやく得ることに特化した音声読み上げソフトなのだが、その付属機能として、RSSやAtomのアイコンが見えなくても、「ここでリターンキーを押すと拡張モジュールに登録」と音声案内してくれるので、Enterキーを押すだけでRSSリーダーに登録される。音声読み上げユーザーにとっては非常に便利なソフトだ。しかしRSSフィードのアイコンが音声読み上げソフトでは見つけにくいものである点は留意しておいたほうがよいだろう【3】。

【3】ニュース TO スピーチの画面ではRSS/Atomアイコン部分が文字で表示され、Enterキーで登録できる
【3】ニュース TO スピーチの画面ではRSS/Atomアイコン部分が文字で表示され、Enterキーで登録できる


mixiのアクセシビリティ

ここでも画像認証の壁
日本最大のSNSであるmixiの参加者は500万人を突破しているが、その参加者の中には当然さまざまな障害をもった人がいる。

mixiは標準では3カラムのテーブルレイアウトで、あまりアクセシビリティに配慮したデザインではないのだが、コミュニケーション手段としてのおもしろさから多くの人を引きつけて活用されている。

mixiのコミュニティの中には障害別のコミュニティや障害を横断したコミュニティが数多くあるし、障害に関係のないコミュニティにも、もちろん障害者が参加している。その中で問題となることのひとつにmixiの「友人を招待」機能がある。

ここでも画像認証が使われているため、音声読み上げユーザーは友人を招待することができないのだ。また、マイミクシィは写真と名前から構成されているが、写真に代替テキストを付けられないので「写真」と読み上げられてしまううえ、「写真」「写真」「写真」のあとにそれぞれの人の名前が続き、マイミクの人を探しにくいといった問題も生じる。

自分の日記を書いたり、マイミクの人の日記を読んだりするのに、リンクをいくつもたどらなければならないのもめんどうなのだが、ボイスサーフィンの「次の強調個所」機能を使うと数回の操作で日記にジャンプできる【4】【5】。

【4】mixiの「友人を招待」では画像認証が必要
【4】mixiの「友人を招待」では画像認証が必要

【5】mixiをボイスサーフィンで閲覧した画面
【5】mixiをボイスサーフィンで閲覧した画面


SNS参加をはばむデジタルデバイドとコミュニケーションデバイド
mixiに参加している何人かの障害をもった人にmixiのアクセシビリティについて質問してみたのだが、「それほど不自由していない」「慣れれば支障がない」という声が多かった。これは、操作できる人が参加しているのだから当然だったかもしれない。口にくわえたスティック操作でパソコンを操作している人でも、音声読み上げソフトで操作している人でも、通常のWeb閲覧が可能な人であればmixiは使える。

また、アクセシビリティ的に多少の問題があったとしても、ユーザーはそれぞれ使いやすい操作方法をあみ出すので、いったん学習してしまえばあとは気にならなくなるという面もある。より使いやすいものにするために改善できる点はそれぞれあると思うが、ほかのSNSでも同様の状態だろう。

しかし、SNSに参加できない、また参加していたとしても活用できない人がいる。たとえば一般的でない支援ソフトや機器を使っている人は、SNSにアクセスできない場合があるし、アクセスできたとしても文字入力に非常に手間がかかり、実用的でない場合がある。また、聴覚障害の人からは聴者の文章力、情報量に圧倒されてしまうという声もあった。

一概には言えないが聴覚障害者には読み書きが苦手な人がいる。耳から聞く情報だけでなく、読む情報も限定されるので、情報量が少なく、聴者のSNSの話の輪に入りにくいし、書き言葉での表現が難しい場合もある。学習障害や知的障害をもった人もテキスト主体のブログやSNSでは当事者参加が難しいことがあるだろう。

音声や動画での補完など、「ブログのアクセシビリティ」の項で取り上げたように、レイアウトなどのデザインで解決できる問題があり、それに取り組むことも大事である。

しかし、それと共にコミュニケーションツールとしてのブログやSNSの役割についても見直す時期に来ているのではないだろうか。そしてデザインだけでなく、コミュニケーション方法の構築まで含めて考えると、Web 2.0とアクセシビリティの世界にはまだまだ課題が残されているといえる。


本記事は『Web STRATEGY』2006年9-10 vol.5からの転載です
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