ウェブアクセシビリティ・レポート 第17回 サイトの文字へのルビ振り | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

ウェブアクセシビリティ・レポート 第17回 サイトの文字へのルビ振り

2024.4.27 SAT

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ウェブアクセシビリティ・レポート

文=KeiYu HelpLab石田優子
ユーザーの視点に立ったサイト構築、運営に関するユーザビリティ、アクセシビリティの向上などのコンサルティング、調査などを行っている。


第17回
サイトの文字へのルビ振り


サイトの文字に対してルビがあると便利な人たちはたくさんいる。発達障害、高次脳機能障害の人、日本語が母言語でない人、そして精神障害の人の中にもいる。今回はサイトにルビを振るさまざまな方法について取り上げる。


ルビを必要とするユーザーたち

ウェブアクセシビリティは視覚、聴覚障害も含め身体障害児・者への配慮について取り上げられることが多い。JIS規格のほとんどの項目も、これらの障害および高齢者に対する配慮に充てられている。しかし、ウェブ閲覧や操作が困難な人の範囲はより広い。

たとえばおもな発達障害には、知的障害、自閉症、アスペルガー症候群、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)などがあるが、以前にこのコラムでも取り上げたLD、特にディスレクシア(読み書き障害)の人、知的障害の人の中などには、ルビがウェブの文章を読んで理解する助けになる人もいる。

また、脳卒中、事故による頭部外傷などで部分的に脳に損傷を受けたことにより、言語や記憶などの機能に障害が残る高次脳機能障害の人にとっても助けになることがある。

発達障害、高次脳機能障害といっても人により障害の種類や重さはさまざまで、すべての人がルビを振られれば文章を理解できるものではないが、ルビがあれば助かる人たちが存在するのは確かだ。LDの人だけでも、全人口の数%に上ると見られているだけに、あらゆる障害を含めて考えると、ルビ振りで恩恵を受ける人は数多いと思われる。

海外から日本に来た人や子どもたちにもルビのニーズがある。さらに、精神障害の人の中にもルビ振りを求めている人たちがいる。精神障害当事者として、精神障害者支援活動を行っている長野英子氏のサイト【1】にルビ振り機能がついているので、その理由をお聞きしたところ、早期発病した精神障害の人の中には満足に義務教育も受けられなかったため、漢字を読むのが苦手な人もおり、長野氏らが発行している印刷物にも、ルビを振ってほしいという要望が来るとのことだ。

アダプティブテクノロジーのルビ振りサービスを利用した「長野英子のページ」(http://nagano.dee.cc/)
【1】アダプティブテクノロジーのルビ振りサービスを利用した「長野英子のページ」
http://nagano.dee.cc/


義務教育を満足に受けられなかった人、受けられずにいる人は、精神障害に限らず今の日本にもいる。それぞれの当事者が抱える問題については、インターネットなどで、詳しい情報が発信されているが、JIS規格やW3CのWCAG(ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン) 2.0などでもあまり掘り下げられていない、これらの障害、そして障害にかかわらないアクセシビリティの問題についても、サイト制作者としては目を向けるのを忘れずにいていただきたいと思う。


XHTML 1.1のruby要素を使ったルビ振り

ruby要素は、W3Cで検討中であったのものを1993年にInternet Explorer 5.0が独自機能として先に実装し、当初はIEでのみ利用できる要素だったが、W3CのXHTML 1.1からはW3Cの勧告にも盛り込まれた。しかし、XHTML 1.1やHTMLも含めてIE以外のブラウザはruby要素にまだ対応していない。ruby要素は、ルビを振る対象の文字を指定するrb要素、ルビを指定するrt要素と組み合わせる。そしてruby要素に対応していないブラウザにも配慮する場合は、rp要素も共に使う。

例)
ruby要素の基本形【2】

【2】ruby要素に対応しているInternet Explorerで表示した場合
【2】ruby要素に対応しているInternet Explorerで表示した場合


東京メトロ<ruby><rb>溜池山王</rb><rt>ためいけさんのう</rt></ruby>駅
ruby要素に対応していないブラウザでもルビとわかるように配慮した場合(rp要素を追加)【3】
東京メトロ<ruby><rb>溜池山王</rb><rp>(<rt>ためいけさんのう</rt><rp>)</ruby>駅

【3】ruby要素未対応のFirefoxで表示した場合
【3】ruby要素未対応のFirefoxで表示した場合


サイトへのルビ振りサービス

サイト制作側が特に何も設定しないでも、そのサイトのページのURLを入力すると、ルビを振って表示する各種のルビ振りサービスが無償提供されている。ひらひらのめがね(http://www.hiragana.jp/)では、URLを入力して[Go]ボタンをクリックすると、ブラウザにそのURLのページにひらがなのルビが振って表示される。また、AddRuby【4】では、ひらがな、カタカナ、ローマ字(発音)、ローマ字(読み)の4種類のルビ振りが可能だ。

【4】入力したURLのページにルビを振って表示するAddRuby(http://addruby.com/)
【4】入力したURLのページにルビを振って表示するAddRuby(http://addruby.com/


アダプティブテクノロジーのルビ振りサービスの場合は、ウェブページに独自のルビ振りアンカーを組み込むことで、そのサイト上でルビの表示/非表示を切り替えたり、ルビを漢字の右に付けるか、上に付けるかを変えたりするなどの設定ができる。

また、ルビ振りサービスを最初から組み込んだサイトもある。子ども向けのキッズGoo【5】では、サイト右上のひらがな変換ボタンをオンにすると漢字にルビが振られる機能を実装している。

【5】キッズGooでは子ども向けにひらがなのルビ振りサービスを標準装備している(http://kids.goo.ne.jp/)
【5】キッズGooでは子ども向けにひらがなのルビ振りサービスを標準装備している
http://kids.goo.ne.jp/


YomoYomo【6】は外国人向けのルビ振りサービスで、入力したURLのページにひらがな、ローマ字のほか、ハングル、デーヴァナーガリー、キリルの3言語のルビを振って表示することが可能だ。


【6】日本語のルビ振り以外に3カ国語にも対応したYomoYomo(http://yomoyomo.jp/)
【6】日本語のルビ振り以外に3カ国語にも対応したYomoYomo(http://yomoyomo.jp/


このほかにも、IBMのEasy Web Browsing V2.0や、日立のZoomSightなど、サーバサイドのアクセシビリティシステムの多くもルビ振り機能を持つし、ルビ振りに特化したホームページよみがな変換ASP 「かな棒くんWeb」のような製品もある。


ルビ振りの課題

これまで説明してきたように、漢字にルビを振る方法はいろいろと実用化されているが、「ルビを振った文章の読みやすさ」への配慮が今後の課題として残るだろう。

たとえば、ルビ振り機能をオンにしたときに文章レイアウトが崩れる場合があるが、見栄えだけでなく、レイアウト崩れによって文章が読みにくくなることもある。ルビの文字色やサイズ変更、ルビと漢字や文章の行間を変えるといった調整がないと、振られたルビが読みづらい場合もある。また、日本語の文章中の英単語にもルビを付けてほしいという要望も寄せられている。

単純なルビ振りから、よりユーザーに親切なルビへと、今後の研究開発が待たれる。


本記事は『Web STRATEGY』2008年9-10 vol.17からの転載です
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