携帯電話をかけ、その声に反応して表参道のイルミネーションが変化する「akarium Call Project」、ネットユーザーが遠隔操作し、銀座のソニービルを自分の好きな色に変えることができるソニー BRAVIA(ブラビア)「Color Tokyo!〜Live Color Wall Project」など、新しいスタイルのインタラクティブ広告として国内外で数々の賞を受賞し、高い評価を受ける作品を作り続けているのが777interactive(トリプルセブン インタラクティブ)である。今回は「アジア太平洋国際広告祭2008」から戻ったばかりの777interactiveプランナー 益田準也氏に、777interactiveの活動についてや、インタラクティブ広告の現状、国際的な広告祭を通じて感じた日本と海外の違いなどについて聞かせていただいた
第4話 日本の環境に合わせたインタラクティブ
動画投稿は、日本人にはまだまだハードルが高い
——海外と日本の状況の違いはありますか?
益田●今年のアドフェスト(アジア太平洋国際広告祭)は入賞作品のほとんどが日本なんですね。これってすごいですよね。まるで東京インタラクティブ・アド・アワードなんじゃないかってくらいで。ほかの国の作品はきれいにつくり込んではいるのですが、ただそれだけというか。日本の作品は根本的なコミュニケーションの土台から考えられていて、一歩、二歩先のことを考えてつくられていると思います。テクノロジーをうまく使っているというのも特徴かもしれないですね。日本の作品はクオリティが高いと思います。
——ユーザー側の意識も日本と海外では違っているのでしょうか?
益田●アドフェストのセミナーで、アメリカのクリエイティブディレクターがデジタルメディアはこれからすごい。コンシューマがこれからは広告をつくっていく時代だと、いろいろな事例を見せてくれたのですが、アメリカでは自分の映像やスポーツのスーパープレイを投稿するというキャンペーンにかなりの投稿があったらしいのです。それを聞いて、日本は違うなって思いました。
コンシューマが広告をつくっていくという点は同じなのですが、動画投稿は日本人にはまだまだハードルが高いし、あと、日本人はゼロから作品をつくることが得意ではないですよね。YouTubeやニコニコ動画を見て思うのは、アメリカのYouTubeで人気になっているのは、ユーザーがオリジナルでクリエイションしたもの、例えばスケートボードのスーパープレーとか、ミュージシャンに成りきって歌を唄うといった、自分をアピールするものが多いんですね。
でも、日本のYouTubeだと、スキャンダルや、テレビの録画や報道系のニュース、あとはそれをマッシュアップしたものが多くて、自分でゼロから何かをつくることが少ないし、日本人はあまり自分を出さないですよね。民族性の違いだと思うのですが、コンシューマが広告をつくるといっても、日本でアメリカと同じようにはいかないと思います。特に投稿する、参加することに対する感覚は欧米と日本では大きく違っていますね。ニコニコ動画のようなつっこみ方をするのも日本独特でしょうし。書き込みで新しい遊び方を発見したりするのも日本らしいですね。
——日本の作品はどういったところが高く評価されているのでしょうか?
益田●決して海外が乱暴ということではないですが、日本のWebは仕事が丁寧で、しっかり考えられてつくられていますね。そこが高く評価されているのではないでしょうか。日本の環境に合わせてつくられていますし。最新のCGを使った車のサイトなども海外にはありますが、最近の受賞作品を見ていると、そういった表現的なものはあまり上位には上がってこないですね。去年あたりからWebの使い方そのものを変えていくようなところがないと、なかなかおもしろいと評価をしてくれない。
今回アドフェストで「Color Tokyo!」がいくつかの賞をとったのですが、あの作品はアウトドア広告として評価されたり、イノベイティブなアイデアとして評価されるなど、いろいろなカテゴリで高く評価されていて。そういった事実からも、表現だけではないところがより重要視されているし、自分としてもこの方向性でがんばっていけばいいのかなと実感しました。
メディアを選ぶところからアイデアをスタートさせる
——今後はどのような展開をしていく予定ですか?
益田●クライアントの課題を解決するのだったら、どんなメディアでもいいかなと思っています。今はWebの仕事が多いですが、Webじゃなくて、これはイベントをやったほうがいいのではないかといったこともありますし。Webは伝えていくための装置としてはすごく強いのですが、起爆力があるかといわれると、決してそうでもないんですよね。今はWebだけでがんばるという状況ではなくなってきていて。僕はインタラクティブがWebだけとは思っていなくて、コミュニケーションそのものを双方向でやりとりをすることがインタラククティブだと思うんですね。そういった点でいうと、メディアを選ぶところから、僕らはアイデアをスタートさせていくのではないでしょうか。今はそういうタイミングになってきていますね。
——クライアントの意識も変わってきているのでしょうか?
益田●クロスメディアという意味も大きく変わってきています。3、4年前まではCM、アウトドア、交通広告などを使って、そこをポツポツと埋める。複数のメディアを使ったらクロスメディアと言っていたと思うのですが、でも、今は違ってきています。「Color Tokyo!」のようにCMを打たなくてもWebやビルを使って、遠隔で操作をしながら色を変えるブランドコミュニケーションはクロスメディアですよね。CMに効果がないんだったら、CMは必要ないでしょうし。そのメディアを使わないといけないという根本的な裏付けが必要になっています。いまは、単純にたくさんのメディアを使いました、繋げましたというだけでは、クライアントも代理店も納得してくれないですね。
——最後に今後の予定について教えてください
益田●アディダスのサイトを今年からやっていて、今はティザーであがっているのですが、ランニングをテーマにしたコミュニティをつくります。5月にスタートする予定ですが、そこでおもしろいチャレンジをしていくので楽しみにしてください。
(インタビュー/蜂賀亨 撮影/谷本夏)