第4話 Flexとの出会いが、さらなる転機に。 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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転職はゴールではない 3年目の壁、5年目の転機

“仕事の壁”は誰にでもやってきます。そんなとき、ほかのみんなは、どうしているのでしょうか? このコーナーでは、今まさに壁を乗り越えようとしている人、乗り越えて一歩先に進んだ人など、クリエイティブ業界でがんばる仲間たちが登場。これまでの失敗談・成功談や現在の課題、そして将来像を語ります。今の仕事に前向きに取り組み、階段を一段登るためのヒントが得られるはずです!


第2回 株式会社セカンドファクトリー 井原亮二さんの場合


株式会社セカンドファクトリーのエクスペリエンス・デザイナー、井原亮二さん。明治大学理工学部電気工学科出身で「とにかく電化製品が好き」という彼は、派遣スタッフとして電機メーカーのデザイナーを5年間経験したのち、29歳のときにセカンドファクトリーに入社する。アプリケーション開発で注目を浴びる「エクスペリエンス・デザイナー」とは……? 自分の目指す方向につねに前向きな井原さんに、今までの軌跡や現在の仕事についてお伺いしました。


第4話 Flexとの出会いが、さらなる転機に。

──2社目に派遣された電機メーカーで、ユーザーインターフェイスについての制作実務経験をかなり積まれたことになるわけですね。
井原●そうですね。そこでの経験もあって、現在のセカンドファクトリーにたどり着いていますね。

──それはどのような経緯だったのでしょうか。
井原●大企業では、当然のことながら、部署や事業所ごとのタスク分担がはっきりとしており、デザイン、営業、開発の各担当が揃う中で、バランス良く製品を作り上げる事が大変重要なのですが……やはりここが最も難しいところでして、自分がユーザーにとって最善と考えて「新しいインターフェイスとしてはこうなるといい」といろいろ提案しても、その場で理解はされるものの、諸々の条件により実現性が低くなってしまう状況でした。もちろん開発とはそうしたものだと理解はしていましたが、このジレンマを解消して実現性を高めるためにできることはもっとあるはずだと考えていました。

──そのジレンマは、組織が大きければ大きいほどあるかもしれませんね。
井原●ええ。ちょうどその頃、2004年のFlash Conferenceに出席したのですが、そこでセカンドファクトリーのプレゼンテーションを観る機会がありました。その中でFlexのHaloコンポーネントについての話を聞いたことが、今思うと転機でした。ある程度アプリケーションとして機能するワイヤーフレームがコンポーネントで構成されており、表層を自由にデザインしていく作業の流れを知り、こういった成果を企画時に見せられれば、アイデアの実現可能性は高められるだろうと大きな可能性を感じました。

──なるほど。
井原●それまでは顧客の要望ごとにPhotoshopでボタンの1個1個をゼロから作っていて、開発における効率の悪さを感じていましたし、同時に企画の実現性の低さも感じていて……何かないかなぁと思ってるときにFlexを知ったわけです。ストレートに「この方法は良いな」と思いました。 実はそこで初めてセカンドファクトリーを知ったのですが、その後調べてみたら、自分がこれまでに参考にしてきたアプリケーションも、セカンドファクトリーが開発していたということもわかり、自分の頭の中で「なるほど」と、いろいろな事がリンクしました。

──それが今の会社との出会いだったんですね。
井原●はい。表層部のデザインのみを検討していては、企画の幅が拡がりにくいと思っていましたし、ユーザーが本当に使えるものを、技術的にも可能にしたかったので……「この辺りの技術はデザイナー(設計者)としてやっておかなければマズイな!」と思いまして……それでセカンドファクトリーの門を叩くことになりました。

──お話を伺ってますと、本当にご自分の好きな分野に前向きで、ちゃんとそれを実現できる場所に行き着いていらっしゃいますね。何か秘訣はありますか?
井原●製品への愛情でしょうか(笑)。分野に限らず、そのモノが好きなら好きなほど深く追求しますし、要求事項も問題点も自然に浮かんでくると思います。ただし、追求しすぎると視野が狭くなるので「ほどよく好き!」なのが一番良いかもしれませんね。製品開発時に、ひたすらに向き合いすぎると発想しえないことが、外の世界に落ちていることが良くあると思います。ですので、ある程度ギャップを持っていた方が新しい発想も生まれやすいし、面白いのではないかと思います。私の場合、電化製品が好きで電気工学科に進んだのですが、今はインターフェイスデザインの仕事に取り組んでいる、この辺りのギャップも個人的には楽しんでいます。「インターフェイス」という言葉に目覚めたのは、2社目の電機メーカーで働いている頃ですから。

──では、お仕事をしていくうえで、だんだん焦点が定まったんですね。今後のさらなる目標は?
井原●今後はさらにシステムが扱う情報量も大きくなりますし、扱える機能の数も大きくなっていくと思います。それに伴った複雑化……というか、もう既に複雑になってますが、その複雑なものをどう変換して、使えるもの、心地良いものとして提供できるか、そして、その複雑な世界に、いかにナチュラル感を作れるか——NUI(ナチュラル・ユーザー・インター フェース)と呼んでますが——これからはその辺りを強く意識して開発していく必要があると考えています。ますますエクスペリエンス・デザイナーの出番は多くなっていくと思いますが、「エクスペリエンス・デザイナー」という職種自体は、まだまだ認知度が低いと思いますので、そういった意味でも、もっと世の中に訴求して行きたいですね。

──派遣先での経験が、現在のお仕事のポジションにかなり役に立ったと思われますか?
井原●派遣という業務形態で自分の興味のある業界にダイブして、業界の第一人者とともに実務をすすめる中で腕を磨けたことは、自分にとって大きなメリットでしたね。大企業の取り組みも垣間見ましたし、逆にベンチャーならではのスピード感で、イノベイティブな発想を担ってゆくタスクについても思うところがありました。最終的に自分の企画の実現性を高めるために、責任範囲を拡げて社員として腰を据えたほうが行動しやすいと思いますが、どんな勤務形態であれ、軸がぶれずに目指す方角が定まっていれば、自分自身を伸ばせるチャンスはいくらでもあると思います。

──ありがとうございました。


(取材・文:草野恵子  撮影:栗栖誠紀)

株式会社セカンドファクトリー
http://www.2ndfactory.com/
「アプリケーションに“おもてなし”の心を」を掲げ、システムやサービスを利用する際の“体験価値”をデザインするセカンドファクトリー。ますますニーズが増加しているRIA開発に特化し、設計からコンサルティングまで独自の構築プロセスに基づき、幅広く手掛けている。アドビシステムズ株式会社、日本オラクル株式会社、マイクロソフト株式会社のベンダーパートナでもある。


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今回で井原亮二さんの記事は終了です。次回をお楽しみに!
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