第2話 ピクトグラムの可能性「PICTOLOGY」 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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第1話に引き続き、Donny Grafiksの山本和久氏によってデザインされた作品を紹介し、その制作過程における思考のプロセスに迫る。第2話では、Treasured Trash Projectの各種ピクトグラムについて詳しく話を伺う。



ピクトグラムの可能性
「PICTOLOGY」




デザイナーと環境問題


環境問題に対してデザインがいかに貢献できるかを探る「Treasured Trash」。このプロジェクトを発端として作成されたのが今回のピクトグラムだ。


「これらのピクトグラムは、当初、ペットボトルなどを分別するリサイクルボックスに描く用途を想定していた作品です。ゆくゆくは絵本のようなスタイルでも発表できればと思っています。制作する際には、どうしたら楽しく分別作業を行えるかを追求しました。特別な行為としてではなく、当たり前のこととして日常に取り入れられることが、エコロジーにとっては大切だと思うからです」

リサイクルやエコロジーは、近年さまざまな分野で大きな注目を集めているトピックであることはご存じの通り。
「グラフィックで直接環境を変えることはできないのですが、ビジュアルでメッセージを伝えることによって、間接的に貢献できることもあるはずです。特に、グラフィックデザインやエディトリアルデザインは、たくさんの紙を使う仕事だから、真摯に考えていきたいですよね」


言語に依らないピクトグラム


今回の作品のようにミニマムな表現は、まさに山本氏のデザインの真骨頂といえるだろう。そもそも「いかに少ない形でシンプルに物事を伝えられるかに興味があった」と語る氏は、ピクトグラム全般に対して次のように指摘する。

「ピクトグラムの中には、文字を併記しているものも多いのですが、形だけで理解できないと、言語を学ぶ以前の子どもや異なった言語圏の人々など、すべての人には伝わらない。ピクトグラムとは本来言語に依らないビジュアルとして成立すべきなのです。特にビジュアルコミュニケーションは、世界共通の言語になりうる可能性を秘めたものですしね。また、交通標識のような人命にも関わってくるようなサインでは、一瞬で内容を判断できるべきでしょう。すると、あれもこれもとメッセージを盛り込んでいくのではなく、本質に絞りこんで表現することが大切になるのです」


いろいろな見方ができるグラフィック



一方で、シンプルな形だからこそ、それを見た人が千差万別なイメージを持つこともある。そこに着目した山本氏は、今回の作品で、あるメッセージを伝えることを念頭に置くとともに、より広がりのある伝達を目指した。

「たとえば地球を頭にした人型のビジュアルでは、頭に指を差して環境に対する注意を喚起するとともに、ピストルを突きつけているような(引き金は引いていない)ビジュアルにも見せています。さらに、海外ではこのジェスチャーで“crazy”を示すこともあるようなのです。ただ、どのように受け取られても、最終的に導かれる答えは同じ。そのように、考える余地は残しつつも、最終的に同じ答えに辿り着くデザインを目指しました。見る人によって、いろんな印象を持たれることも、デザインの面白い部分ですからね」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)


次週、第3話は「象形文字を意識したアイコン」について伺います。こうご期待。




●山本和久(やまもと・かずひさ)
多摩美術大学卒。フラミンゴ・スタジオを経て独立。CIからエディトリアルデザイン、Webデザインまで幅広い分野を舞台にして活動。代表的な仕事には、 IID(世田谷ものづくり学校)のアートディレクション、IDEEのカタログデザイン、「ビンタ本」(幻冬舎)の装丁などがある。メッセージの本質を見す え、最小限の要素で訴求するピクトグラムなどには定評がある。
http://www.donnygrafiks.com/

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