
第1話に引き続き、ドラフトの植原亮輔氏によってデザインされた作品を紹介し、その制作過程における思考のプロセスに迫る。第2話では「BETWEEN(=中間)」を表現したD-BROSの展覧会ポスターに注目。
2次元と3次元の狭間
「D-BROS EXHIBITION記念ポスター」
D-BROSの象徴である「BETWEEN」
魅力的なプロダクトを数多く発表し、熱烈なファンを得ているドラフトを母体にしたブランド「D-BROS」。2006年には、東京の青山スパイラルガーデンで「D-BROS EXHIBITION“GとPのあいだ”」と題した展覧会を開催。その記念として販売されたポスターも植原さんの手がけた作品だ。
「ポスターに書かれている“BETWEEN”は、D-BROSを的確に表した言葉です。グラフィックとプロダクト、2Dと3Dの中間、質感や技術へのこだわりと物語性、遊びと実用、自由と規則性など、さまざまな“中間”に位置する表現をしてきましたからね。ポスターでもそれらの要素を盛り込むように心がけました」

表裏の両面でさまざまな「中間」を表現したポスター。その徹底した工夫ぶりは文字に関しても垣間見ることができる。
「片面の文字はカリグラフィで、もう片面の文字には既存の書体を使用しています。手書きの文字のほうでは、複数の箇所で用いられている“BETWEEN”のような単語でも文字を使い回さず、1つずつ書いています」
「片面の文字はカリグラフィで、もう片面の文字には既存の書体を使用しています。手書きの文字のほうでは、複数の箇所で用いられている“BETWEEN”のような単語でも文字を使い回さず、1つずつ書いています」
複雑な型抜きで表現された物体感
さらに、このポスターの大きな特徴といえるのが型抜き処理。これも2Dと3Dの「中間」を表現するのに一役買っている部分だ。
「型抜きのラインは、実際に紙をちぎったものをベースにデータ化し、工程上でのズレの問題を考慮しながら、サイドを伸ばしています。いわゆるクッキーの型を伸ばすような処理ですが、コラージュしたデータを伸ばす作業はとても大変な作業です。このポスターでは、紙面を4分割した各々の型と、外側全体の輪郭に沿った型、つまり全部で5つの型を使っています。前者が細かいニュアンスを出せる金属製の腐蝕型で、後者がピシッとした線になる木型です」
複数の型を用いたため、見当合わせには非常に苦労したそうだが、その甲斐あって、型抜きのラインは見事なまでに物体感を感じさせる。
「腐蝕版の場合には、紙によって型を作った後で、周りを彫る作業が必要となることがあるのです。だから、まさに手作りのようなプロセスで仕上げられたわけです」
「腐蝕版の場合には、紙によって型を作った後で、周りを彫る作業が必要となることがあるのです。だから、まさに手作りのようなプロセスで仕上げられたわけです」
最適な中間点を模索する行為
ほかにも多くのアイデアによって具現化された「BETWEEN」。それは、D-BROSだけでなく、植原さん個人のデザイン哲学においても、重要なコンセプトのようだ。
「“曖昧”は、僕にとって大きなテーマです。いわば“白”でも“黒”でもダメ。常識的すぎては面白くないし、非常識はわかりづらい。コミュニケーションとは、白から黒までの幅のなかで、採るべきポイントを目的によって変える行為だと捉えています。その“中間を行き来すること”は、まるで“生きるか死ぬか”のような、とても気持ちのいいことなのです」
最適な中間点を模索する行為は、決まりきった端を見つけるより遥かに難しいはずだ。それでも「気持ちがいい」と言い切ることのできる姿は、植原さんのデザイナーとしての器を感じさせた。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第3話は「紙でつくられた時計」について伺います。こうご期待。
最適な中間点を模索する行為は、決まりきった端を見つけるより遥かに難しいはずだ。それでも「気持ちがいい」と言い切ることのできる姿は、植原さんのデザイナーとしての器を感じさせた。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第3話は「紙でつくられた時計」について伺います。こうご期待。




