第3話 紙で作られた時計 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて









第2話に引き続き、ドラフトの植原亮輔氏によってデザインされた作品を紹介し、その制作過程における思考のプロセスに迫る。第3話では、D-BROSの製品のなかから、意外な素材を利用した時計をピックアップ。


紙で作られた時計
「Time Paper」



気軽に取り替えられる壁時計


食器や文具、インテリア雑貨など、幅広いプロダクトを扱うD-BROS。そんなラインナップの1つには時計もある。なかでも「Time Paper」は植原さんが渡邉良重さんと共同で企画したものだ。

「金属製の針と動力部の間に、文字盤を印刷した用紙を挟み込み、その紙自体を画鋲で留めることによって、壁掛け時計として完成する構造です。この仕組みでは、紙の部分だけを変えるだけで、どんどん新しい時計ができ上がります。飽きたら簡単に取り替えられますし、紙製だから風化しても味わい深くなっていきます」

材質に紙を採用した最大の理由は、手頃な値段を実現するため。そしてグラフィックデザイナーが作る時計なら材料には紙を選ぶべきという考えがあったから。現在7つのバリエーションが販売されているが、5,250円から7,350円までと、デザイン性の高い壁時計としてはリーズナブルである。


時計も情報を伝えるための媒体


そもそも植原さんらが「Time Paper」に取り組んだのは、時計に対して次のように感じていたことも大きく影響している。
「時計も情報を伝えるものであって、コミュニケーションしているわけですよね。それはデザイナーの得意とする分野です。巷の格好良い時計は文字盤に数字などが何も描かれていないことも多いですが、僕はあえて、それらの要素も盛り込みながら格好良く仕上げることに挑戦しました」
それはプロダクトデザイナーではなく、文字を扱うプロフェッショナル、グラフィックデザイナーとしてのこだわりだ。「Time Paper」は紙媒体とプロダクトの両方に造詣が深いことから実現された製品といえるだろう。

強度を高める秘訣は「折り目」


「紙でつくることを決めた後に、はじめはダンボールで試作しましたが、どうしても安っぽい雰囲気になってしまいました。そこで、スタッフとのアイデア交換を経て、一般的な紙を用いることにしました」

とはいえ、紙は風や湿気に弱いもの。ボール紙のような厚紙でなくても大丈夫なのだろうか。そんな心配に対して、植原さんは「むしろ針の進み方に引っ掛かりのできる厚い紙のほうが適していなかった」と答え、普通の紙でも強度を持たせる秘訣を次のように教えてくれた。

「実は販売して2年後に見直しをしたんです。この時計を見ると四つ折りにしたラインに気付くでしょうが、これがポイントなのです。折り目が時計の骨格になり、しっかりとしたテンションを生み出し、フニャフニャと頼りなくなったり、めくれてしまったりするのを防いでいます。ちょうど折り紙が、ただ折るだけで、しっかりとした構造を保てるのと同じ原理です。我々としても思い切ったアイデアだったのですが、紙の面白さの再発見につながりました」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)


次週、第4話は「さりげない工夫が光る会社案内」について伺います。こうご期待。






●植原亮輔(うえはら・りょうすけ)
1972 年北海道札幌市に生まれ。多摩美術大学染織デザイン卒。1997年、株式会社ドラフトに入社。1999年よりガムテープのデザインをきっかけにD- BROSに参加。また店舗や、企業のCI、SP、広告、ブランディングに関わるアートディレクション、デザインを手がける。主な仕事に「ミハラヤスヒロ」 のグラフィック(〜2002年)、「ラフォーレ原宿」の広告(2005年)、ワコールのショップ開発など。JAGDA新人賞、東京ADC賞、 N.Y.ADC金賞、など受賞歴多数。

twitter facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

この連載のすべての記事

アクセスランキング

8.30-9.5

MdN BOOKS|デザインの本

Pick upコンテンツ

現在