
第1話に引き続き、canariaの徳田祐司氏によってデザインされた作品を紹介し、その制作過程における思考のプロセスに迫る。第2話では、キリンビールの技術を結集して開発された「キリン・ザ・ゴールド」の広告に注目。
第2話
広告の担う役割
「キリン・ザ・ゴールド」
13年振りに開発されたビール
2007年3月20日に発売された「キリン・ザ・ゴールド」。キリンビールの創業100周年に合わせて登場し、大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。
「キリンビールとしては『一番搾り生ビール』以来、13年振りに発売されたビールの新商品です。僕は、ティーザーから起ち上げまでの広告、パッケージのディレクションなどを担当しました。この商品は、“新しい世代に、新しいビールをつくろう”といっ
た企画意図からスタートしています。酵母から麦芽、ホップ、色や泡など、すべてにこだわって開発された、本当においしいビールです」
た企画意図からスタートしています。酵母から麦芽、ホップ、色や泡など、すべてにこだわって開発された、本当においしいビールです」 徳田氏曰く「ビールは、コマーシャルによって大きく売り上げが左右する商品」。「キリン・ザ・ゴールド」はキリンビールの強い意気込みが感じられる主力商品だけに、広告でも最上級の売り上げに直結するものが期待された。
販売サイドを勇気づける広告
「ビールの売れ行きをアップするためにはコンビニや酒屋など、どこに行っても、その商品が置いてある状況を用意しなければならない。つまり棚を確保してもらうことが大切なのです。そのためには売る側をも勇気づけるようなコマーシャルが必要です」
商品に関わるすべての人を味方につけ、数千万人にも及ぶターゲットにコミュニケーションするため徳田氏が提示した方向性、それは「王道」な見せ方だった。ひねらず、うそをつかない、堂々とした直球のコミュニケーションである。
「まず、発売前にすでにみんなが『キリン・ザ・ゴールド』の名前を知っている状況を作りだす目標が掲げられました。そこで、最初はタレントを登場させず、新しいパッケージのみを見せて商品自体の存在感を訴求しています。CFでは出荷時のトラックやトレーラーを映し出すことで“これから日本中に届くぞ”といった空気を生み出しました。これらの展開によって、日本中に大きな“うねり”を醸し出せたと思います。実際、店頭では“まだ売ってないの?”との問い合わせも多かったようです」商品とターゲットとのリンク
仕事に携わる際に、何より「伝えるべき本質」を大切にしている徳田氏。造形センスや文字の選び方で勝負する以前に「商品自体が力を持っている場合には、それを素直に出したい」と語る氏にとって「キリン・ザ・ゴールド」の広告手法は必然だった。だが商品パッケージのみを見せた理由はそれだけではない。
「みんなに合わせて何となく飲むビールではなく、クリエイティビティのある生活のためのビールにしたいと考えたのです。もちろん仲間と楽しく一緒に飲むものですが、個々だって、さまざまな意識や未来像を持っている。そんな自立したライフスタイルを持つ新しい人たちをターゲットに設定しました。その凛とした強さを表現するために、直接的に人間を登場させるのではなく、堂々と背筋を伸ばして立っている商品パッケージの姿を用いたのです」
シンプルで「王道」の佇まいをまとった広告。そこにはさまざまな思いが込められている。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
シンプルで「王道」の佇まいをまとった広告。そこにはさまざまな思いが込められている。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第3話は「ストーリーからの派生」について伺います。こうご期待。




