2018年08月21日
TEXT:山口真弘(ITライター)
近年話題になることも多いVR(仮想現実)ヘッドセット、皆さんは実際に試したことはおありでしょうか。筆者は乗り物酔いに似た症状になることが多く、これまで長らく敬遠していました。特に以前、量販店の体験コーナーでジェットコースターのVRコンテンツを試したときは気分が悪くなり、帰宅に支障をきたしたほどです。
そんな筆者がVRヘッドセット「Oculus Go」を購入した理由は、初回に買った人達が軒並み絶賛していることに加えて、23,800円からという破格の安さに惹かれたためです。つまりそれほど強い物欲にかられて買ったわけではなかったのですが、しばらく試すうちにとある用途で筆者のニーズにジャストフィットであることが分かり、今では手放せない一品となっています。その用途とは、動画の鑑賞です。
「Oculus Go」を横から見たところ。バンドを後頭部および頭の上にかけて固定します
メガネをかけたまま装着可能。できればレンズ側に度の調節機能があるとよいのですが……。
視野の中でメニューを選択したり、クリックをする場合は、付属のコントローラを使用します
コントローラは左右どちらの手でも握れます。あまり複雑な動きは得意ではないようです
筆者はAmazonビデオやNetflixなどの動画配信サービスについて、これまでPCもしくはタブレットで視聴してきました。しかしPCは基本的に座って視聴する必要がありますし、タブレットは軽くても300g、重ければ500gはするので、長時間手で持っていると疲れてしまう欠点があります。
それを解消すべくタブレットを吊り下げるアームを導入したり、また小型のプロジェクタも試してみたのですが、同じ姿勢をずっと取らなくてはいけないことから腰に負担がかかることが分かり、継続利用を断念しました。それゆえベッドに寝転がっての動画鑑賞は、ここしばらくスマホに頼っていたというのが実情です。
その点、Oculus Goによる動画視聴は、手で保持する必要がないばかりか、動画アプリが対応していれば天井方向や横方向など、画面の正面をあらゆる方向に固定して視聴できます。寝転がって横を向いたときに画面が正面に来るよう、向きを連動させることもできます。
また音声は耳の付近から聞こえるためイヤホンが不要(3.5mmジャックもあるのでイヤホンを使うこともできます)で、何より視野を覆うゴーグルならではの没入感は、動画を集中して視聴するにはぴったりです。
「Netflix」の基本画面。洋間のソファに座った状態で動画を視聴できます
ソファの上には端々まで作り込まれた小物が。ちなみに手に取ることはできません
スクリーン左上「VOID Theater」という白マークを選ぶと画面の向きが変えられます
これはスクリーンを真上、天井に固定している状態。これで寝転がって視聴できます
実際に使ってみて驚いたのは、スマホやタブレットによる視聴と比べて、目の疲れが圧倒的に少ないことです。
筆者はこれまでスマホやタブレットでの動画視聴はせいぜい連続30分が限界で、それを超えると目の焦点が合いづらくなっていましたが、Oculus Goでの動画視聴は2時間ほどぶっ通しで視聴していてもまだまだ余裕があります(残念ながら2時間を超えるとバッテリーが心もとなくなってくるため、2時間を目安に中断しています)。むしろスマホやタブレットよりも疲れるだろうと予想していただけに、これは驚きでした。もっと解像度が高いVRヘッドセットならば、さらに快適かもしれません。
ちなみに筆者が使っている動画アプリは主に2つあります。ひとつはご存知「Netflix」。操作性は独特でやや微妙な作りなのですが、きちんとOculus Go向けに作り込まれており、PCやスマホで観た動画の続きをこちらで観たり、その逆だったりと、シームレスに利用できます。前述のようにスクリーンの表示方向を自在に変えられるので、寝転がった状態で真上にスクリーンを表示するのもお手の物です。
もうひとつは、DLNA対応の動画アプリ「Pigasus VR Media Player」です。これはNASなどネットワーク上のデバイスに保存してある動画ファイルを呼び出して視聴するためのアプリで、劇場の座席で鑑賞するかのようなスキンが用意されており、動画を快適に視聴できます。
しかも劇場のいちばん後ろ、真ん中、前方と、席を移動する感覚でスクリーンとの距離を調整できるので、動きが激しい動画は後方で、そうでなければ前方もしくは中央付近でと、リアルな劇場と同じように席を選べます。言うまでもありませんが、貸し切り状態なので快適です。またこちらもNetflixと同様、スクリーンを天井方向に固定することができます。
動画アプリ「Pigasus VR Media Player」。ネットワーク上の動画を鑑賞できます
本物の劇場のようなリアルなスキン。座席は前方/中央/後方と移動できます
中央の座席に移動したところ。スクリーンとの距離が先程と違うのが分かるでしょうか?
さらに後方に移動したところ。動画に酔いそうな場合はこのくらいの距離が適切です
本製品を購入して3ヶ月余り、肝心のVRコンテンツはまだお試し程度でしか使っておらず、製品のポテンシャルを100パーセント発揮できているとは言い難いのですが、特にそちらの用途が失格というわけではありませんので(ジェットコースター系だけは個人的に遠慮したいところですが)、今後ぼちぼち使っていきたいと考えています。
本製品は容量が少ない32GBモデルで23,800円という破格の安さで、また既存の製品と違い、本体にスマホをセットしなくてよいのも利点です。寝転がっての動画鑑賞という用途では競合となる製品も見当たらないことから、敢えてそのためだけに購入するのも、悪くない選択肢といえそうです。
製品名:Oculus Go
実売価格:23,800円(32GBモデル)
発売元:Oculus
[筆者プロフィール]
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn
2018.08.21 Tue