緊急時の通話用にもう1台いっとく? 格安SIMカードが使えるカードサイズの携帯電話~フューチャーモデル「NichePhone-S 4G」レビュー
TEXT:山口真弘(ITライター)
災害などの非常時に備えて、ふだん使っているスマホとは別にもう1回線、通話が可能な電話機を携行しておきたいという人は、少なくないのではないでしょうか。とはいえスマホを複数台持つとなると維持費もかかりますし、荷物も増えます。維持費を最小限に抑えつつ、持ち歩いても邪魔にならないサイズの製品があれば、興味を持つ人は多そうです。
そうしたニーズに合致するのが、フューチャーモデルの「NichePhone-S 4G」です。通話とショートメールに特化しつつ、本体は90×50mmという名刺サイズ、重量はわずか52gしかない、名前の通りニッチすぎる端末です。ちなみにベースになっているのはAndroid 6.0ですが、アプリの追加などはできず、あくまでも携帯電話という位置づけになります。
しかし今回の製品は、バッテリー容量が550mAh→1000mAhへとほぼ倍増したことで、電池の持ちは大幅に改善され、実用レベルに仕上がっています。試しにテザリングを2~3時間使っても、その後バッテリーが約1日持ちましたので、終日テザリングで繋ぎっぱなしにするなどの極端な使い方でなければ、ガラケー並とは行かなくとも、スマホと同じような運用で大丈夫そうです。
専用のマグネット式DC端子をUSBケーブルの先端に挿し、磁力でくっつけて行う独特の充電方法はそのままですが、バッテリーの持ちが改善されたことで外出先でこまめに充電する必要がなくなったため、従来のようにバッグの中で端子が外れないよう気を使う必要はなくなりました。
ただし、マグネット式DC端子が必須であることに変わりはないため、自宅とオフィスの両方で充電をするのであれば、マグネット式DC端子を常時持ち歩くか、あるいは買い足す必要があります。ここは少々不便さを感じるところです。
文字入力は一昔前のガラケーのレベルで、日常的に高い頻度で使うのはおすすめしませんが、非常時にこちらの状況を知らせたり、相手から届いたショートメールに返信するぶんには、操作のしづらさは感じつつも使えるレベルです。天地が狭いガラケーのボタンとは違い、ほぼ正方形の、指先でしっかりと押せるボタンサイズを確保できているのは秀逸です。レスポンスも悪くありません。
今回は筆者手持ちのmineoのドコモプラン(Dプラン)のカードと組み合わせてみましたが、問題なく利用することができました。また(製品名からも明らかですが)3Gのみ対応だった従来モデルと違ってLTEにも対応しているので、通信可能エリアが広いのもプラス要因です。
気をつけたいのは、90×50mmの名刺サイズでありながら、本体の厚みはそこそこあることです。従来のモデルは厚み6.5mmと、無理をすれば財布のカード入れに押し込むこともできなくはなかったのですが、本製品の厚みは9.5mmということで、現行のスマホと大差ありません。バッテリー容量を増やすにあたって面積を変えなかったのは英断と言えますが、もう少し薄ければ、と思ってしまうのは事実です。
文字入力の使い勝手やメールへの対応、ウェブの参照など、機能だけで言えば一般的なガラケーのほうが上ですが、月千円台で運用できる格安SIMカードと組み合わせることが可能で、かつ本体も1万円ちょっとで入手できるということで、コストパフォーマンスは良好です。
本製品に似たカードサイズ端末は他にもなくはないのですが、本製品は国内メーカーが手掛けており、各種認証もきっちりと取得しているのも利点です。またカメラを搭載しないのも、法人ユースではプラスになる場合もあるのではないでしょうか。緊急時に備えて最小限の機能さえあれば構わないという人にとって、よい選択肢だと言えそうです。
実売価格:12,800円
発売元:フューチャーモデル
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B07H2YRFCH
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn
2018.09.18 Tue