このサイズで10,000mAh!? 最大18WのUSB PDにも対応したモバイルバッテリー~ティ・アール・エイ「cheero Power Plus 5 10000mAh」レビュー
TEXT:山口真弘(ITライター)
最近のモバイルバッテリーの売れ筋は、容量が「10,000mAh」クラスへとシフトしつつあります。従来の売れ筋だった5,000~6,000mAhの製品は大容量のスマホではやや容量が心もとないこと、一方で15,000~20,000mAhの製品はかなりの重量があることから、結果的にその中間、数字的にキリのいい10,000mAhクラスの製品が選ばれているという図式です。量販店の店頭を見ても、この容量帯の製品が明らかに品数を増やしています。
そんな10,000mAhクラスのモバイルバッテリーの中で、コンパクトさでは群を抜くのが、今回紹介する「cheero Power Plus 5 10000mAh」です。
このサイズに10,000mAhもの容量を詰め込んでいるせいか、さすがに本体は重量感がありますが、アルミ製ボディゆえ剛性は高く、チープさもまったくありません。また発熱も、USB PDを利用する場合を除けばほんのり熱い程度で、スマホとともにポケットに放り込んで充電を行っても、熱くて困ることはありません。
また本製品は、バッテリーの残量をLEDの残り個数ではなく、液晶のパーセンテージで表示できます。LEDの個数で残量を表示するタイプは、例えば4つのLEDのうち2つが点灯状態だったとして、それが残量50%近くなのか、それとも25%をわずかに超えている程度なのか、レンジが広すぎて判断できません。本製品は1%刻みで残量が表示されますので、バッテリーの残量を正確に把握できるというわけです。
一般的に、18WのUSB PDといえば、スマートフォンが該当します。タブレットやノートPCはそれ以上、30Wや45Wに対応する製品がほとんどで、本製品を接続した場合、充電自体は可能でも、スマホほどのスピードは出ません。このサイズでUSB PDに対応しているのは魅力ですが、性能をフルに発揮するのは、実質スマホと組み合わせた場合に限定されると考えたほうがよいでしょう。
ちなみにこの最大18Wというのは、USB Type-Aとの合計値ですので、USB PDで対応スマホを急速充電中にType-Aポートに別の機器を接続して同時に充電を始めると、USB Type-C側の電圧が最大9Vから5Vに制限されます。そのためUSB PDで急速充電を行う場合は、USB Type-A側にはなにも接続しないほうがよさそうです(もっとも、2ポートを搭載したモバイルバッテリーの多くはおおむね似た仕様なので、本製品だけの制限というわけではありません)。
例えば、外部機器を充電中であることを示すインジケータは存在しておらず、スマホ側の表示を見る以外に、充電中であることを知る術はありません。LEDで残量を示すモデルは、充電中はそのLEDが点滅することで充電中を知らせる仕組みが多く採用されていますが、本製品はLEDがないためそれも不可能です。
それならば点灯している液晶画面の数字を充電時は点滅させればよいのでは……と思うのですが、液晶画面は側面ボタンを押して数秒だけ点灯する仕様で、本体の充電中を除けば普段は消灯していますので、こうした使い方には不向きです。そもそも液晶を派手に光らせて電力を余分に消費しては元も子もないでしょう。
同じ理由で、本製品側の容量がゼロに近づいても、とくに見た目の変化があるわけではないので、少ない残量から充電を開始すると、ふと気づくと充電しているつもりが残量が空になっていて、放置しているだけだった……ということが起こりえます。
また、本製品自体を充電しつつ、接続したスマホを同時に充電する、いわゆるパススルー充電に対応しないのも、用途によっては不便です。このように、実際に使ってみると、欠けている機能がちょくちょく目につくのは事実です。
国内メーカーが企画、検品を行っている製品であることもプラス要因で、5,000~6,000mAhでは少なすぎるので10,000mAh程度は欲しい、でもボディサイズが大きくては困るという欲張りなニーズに、応えてくれる製品と言えそうです。
実売価格:3,480円
発売元:ティ・アール・エイ
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B07PNLGD9B/
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn
2019.07.23 Tue