第3話 独立してみたら…… | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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まざまなジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回はグラフィック・デザイナーの炭谷賢さんを取材し、今日までの足跡をたどりま


第3話 独立してみたら……



炭谷賢さん

初台の自宅にて、炭谷賢さん


仕事をもらったら次も絶対に



──独立直後はどうでした?

炭谷●営業に行ったりもしましたが、思うように仕事はとれなかったですね。あまり自分の作品がなかったですから。岩淵さんのところでは、自分の作品というのはほとんど作らせてもらってなかったから「こんなものを手伝っていた」「この部分をやった」とか。過去に請負った個人での仕事や、自分で作品を作って持っていったりしましたが、まともな生活ができるほどの稼ぎにはなかなかならなかった。そういう状況が2年ぐらい続きましたね。

──でも、少しずつ仕事を増えて?

炭谷●ええ。一度仕事をもらったら、絶対に次ももらえるように頑張ってやるようにしていました。たとえギャラは安くても、それ以上のことはやろうと。

──自分で「これをやりたい」と思った仕事は?

炭谷●CDのパッケージですね。どこかで音楽関係に繋がっていたかった。レーベルで3つぐらいのクライアントがついたんですね。それは誰かに紹介していただいたというのが一番強かったと思います。アシスタント時代から繋がっている人脈も少なかったから。

──みんな、独立した直後って仕事ないんですよね。

炭谷●仕事を振ってくれるボスのところで働いていると、独立しても仕事が降りてくる場合がありますよね。はじめは僕もそういうものだと思っていたんです。でも、そんなこと何もなくて(笑)。やっぱり会社じゃなくちゃダメなのかなーって焦りましたね。

──仕事が増えたきっかけはあったんですか?

炭谷●段々とですね。クライアントの数はそんなに増えてなかったのですが、任せてもらえる量が増えて。あと単純に単価が上がったり、ふと紹介してもらったところで広告の大きな仕事をもらえたり。で、なんとかなり始めてきたんです。……とはいえ、まだ落ち着いてもないんですけれど(笑)。

──いま、独立して何年目ですか?

炭谷●6年目です。一昨年はすごく仕事が入って、去年はあまりなくて、去年末から今年にかけては結構仕事ができています。この商売って、波がありますよね。

──作風的に変わったところは?

炭谷●基本的には仕事の内容、クライアントに合わせますが、割とCDジャケットは自由にやらせてもらえましたね。結構、自分で絵を描いているんです。

──桑沢で絵の勉強したから?

炭谷●受験のときにけっこうデッサン描いたんで、そのときの経験が活きていますね。そんなに得意じゃないですけれど。


No milk『Up All Night』藤井郷子クァルテット『Angelona』Essential Ellington『Island Virgin』

藤井郷子クァルテット『Bacchus』百々徹『116 West 238 St.』『116 West 238 St.』


炭谷さんの仕事より
上左:No milk『Up All Night』CD/Music Conception, Soundscape Corp.
画家の渋谷忠臣氏との共作
上中:藤井郷子クァルテット『Angelona』CD/Libra Records
沈黙と秘密を司る女神"Angelona"をパンキッシュに解釈。以前から目をつけていた「壁」を利用したステンシル
上右:Essential Ellington『Island Virgin』CD/Onoff, Muzak Inc.
日本Jazzピアノの巨匠、渋谷毅氏によるカルテット。アクリル画
下左:藤井郷子クァルテット『Bacchus』CD/Onoff, Muzak Inc.
友人のフラワーアーティスト、川崎直美氏の作品を梁田郁子氏が撮影。それを素材に、藤井郷子氏の音の世界を表現したデジタル・アートワーク
下右:百々徹『116 West 238 St.』『116 West 238 St.』CD/Jazz City, Muzak Inc.



自分でできることは全部やろう



──独立して、仕事に対する心構えは変わりました?

炭谷●とにかくきちんとやることです。自分でちゃんとケツを拭く感じですかね。前にも言ったように、出来る事での妥協はしない。それと文字組みはやっぱり大事にしてます。バランスはもちろんですが、最近は色を結構大事にしてて。

──作品を見るとカラフルな印象があります。

炭谷●ええ。色を使えるようになったんです。色に消極的にならないようにしてて。

──なにかきっかけが?

炭谷●師匠の岩淵さんは色使いがシンプルじゃないですか。そういうデザインも好きなのですが、一緒にやっていて、違うことがやりたいと思って。シンプルに見えても色気があるデザインというか……色使いには積極的になりたいなというのはあります。

──絵を描くばかりでなく、版画やスプレーアートも試してますね。

炭谷●基本はやっぱりストリートです。また、自分でできることは全部やろうと心がけています。あと、楽しみながらできるのがいい。CDは特にアイデアから自分で出して、作り方、表現方法まで自分でできるから楽しいんですよね。雑誌とかだと、そういうのあまりないじゃないですか。フォーマットを作って、それに合わせていく作業が多いから。だから CDという媒体が好きなんです。


次週、第4話は「満たされない部分を意識する」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)


炭谷賢さん

[プロフィール]

すみたに・けん●1973年神奈川県生まれ。桑沢デザイン研究所を卒業後、岩淵まどかさんのアシスタントを経て独立。現在、グラフィック・デザインの他、「STEREOCITI」名義で音楽活動も行っている。音源はスペインのレーベル「Deep Explorer Music」より配信中。

http://www.myspace.com/stereociti




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