第4話 1アーティストを長く継続 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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まざまなジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回はグラフィックデザイナーの阿萬智博さんを取材し、今日までの足跡をたどりま


第4話 1アーティストを長く継続



阿萬智博さん

世田谷代田の仕事部屋にて、阿萬智博さん


スタイリストとしても活動



──独立直後はどうでした?

阿萬●もともと広告代理店にいた頃からのイラスト仕事は続いていたし、ちょこちょこあるジャケットでなんとか食べていけるだろうと思ったのですが、一回全部仕事がなくなりましたね。独立記念みたいな仕事は来ましたが、あとが続かない。でも堅い医療関係の雑誌のカットとか、なんとかイラストで食いつないでいるうちに、またちょっとずつデザイン仕事の話が来始めて。

──やっぱり音楽関係が多かった?

阿萬●そうですね。やっているうちにオセロケッツというバンドの仕事が来て、メンバーとワイワイやりながら、だいぶ変なこともできた。そこから、また広がっていった感じです。

──そこからは順調に?

阿萬●はい。今日も撮影してきたんですけど、自分で撮ったんです。予算がなければ写真も撮るし、スタイリングもやる。ヘアメイク以外はたまに自分でもやるんです。キンケイ時代、スタイリストの事務所とシェアしていたのですが、その関係でリースさせてくれるところを教えてもらったり。そうしたらスタイリストでも仕事が来るようになって、そこからジャケットが回ってきたり。

──いい循環ですね。

阿萬●そうですね。で、パニクルーという8人組がいたんですけど、そのスタイリングが来たんですね。たぶん8人もいるから誰もやりたくなかったんだと思うのですが、最初スタイリストで仕事が来て、メジャーデビューのときにジャケットを手がけて。その後、そのときのディレクターがJEに移籍して、おかげでジャニーズの仕事が来るようになったんです。なにかやらせてくださいよと言ったら、いきなりKinKi Kidsの案件が来て。

──人間の出会い、大切ですね。

阿萬●そうですね。学校の先生も打越さんも。ちなみに打越さんとは、辞めてから3年ぐらいして「サーフィン行こう。」って電話がきて、やっと許してもらえた気になりました(笑)。


PaniCrew『DisCoNection』hot hip trampoline school『Hot for teacher / Green Water』大木こだま『おやじブルース』

ラムジ『momoiro』大樹『5+』

阿萬さんの仕事より
上左:PaniCrew『DisCoNection』2000年
スタイリングから発生した珍しいパターン。別ユニットも含めるとジャケットは15枚くらいやった。途中、自分がデザインした衣装をアンルセット市原氏に作ってもらったりもした
上中:hot hip trampoline school『Hot for teacher / Green Water』2005年
このときの衣装もデザイン画を描いて作ってもらったもの
上右
大木こだま『おやじブルース』2008年
おじさんのスタイリングも楽しい
下左:ラムジ『momoiro』2007年
ラムジも最初の1回をのぞいて、ほぼ阿萬企画スタイリング
下右:大樹『5+』2007年
これはスタイリングだけでなく撮影も自分でやりました


楽しみたいのが一番



──いまは楽しくできていますか?

阿萬●ええ。自分が思い描いていた38歳とは、だいぶ違いますが。

──どう思い描いていたんですか?

阿萬●人をアゴで使いつつ、ディレクターに徹している感じをイメージしていたんですけど……。でも現場のほうが楽しい。KinKi Kidsの堂本剛くんが「244 ENDRI-x」というソロプロジェクトをやっているのですが、打越さんたちのミラーボーラーズと一緒に作ったんですね。一応僕がアートディレクター、アートワークをミラーボーラーズ、デザイナーは阿萬企画から独立した人間で、タテの関係で仕事ができて楽しかった。

──では、最後にアドバイスを。

阿萬●阿萬企画をたちあげて10年なんですけど、下のデザイナーが10数人辞めていって、いま独立してやり続けているのが一人しかいない。だから、大変な仕事なのかなと。体力必要だし。外から見るほど華やかな世界ではない。地味な世界ですよ。

──でも、10年やれているのはいいことですよ。

阿萬●やっぱり絵が描けたことが大きい。あとは、結局ミーハーなんですかね。先日、TOKIOのツアーTシャツの発注があって、長瀬くんに会いたくて、直接本人と打合せさせてもらった。直接会わないと仕事しないよ……ぐらいの勢いで言って(笑)。

──好奇心、必要ですよね。

阿萬●ですね。で、アイドルでやったことをロックバンドでやったらどうか、とか。両極端なことをやることでバランスもとれるし。カッコイイものを作りたいって気はもちろんあるんですけど、楽しみたいっていうのが一番。

──今後やってみたいことは?

阿萬●GO!GO!7188のおかげで武道館のステージ演出もできたし、KinKi Kidsのおかげで自分がやったジャケットのCDがオリコン1位にもなったし(笑)……なにかな? 一度PVの監督とかもやったんですけど、1アーティストのビジュアルを全部やれるようになりたいですね。Webも部分的にやっているだけなので、もっと本気出してやってみたい。この業界、実は媒体によって見え方がバラバラだったりしますから。長く継続してできるように頑張ります。


今回で阿萬智博さんのインタビューは終了です。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)


阿萬智博さん

[プロフィール]

あまん・ともひろ●1970年福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、打越俊明が率いる「錦瓊」参加。97年に独立し「阿萬企画」を立ち上げる。CDなど音楽パッケージの他にイラストレーション、スタイリングの分野でも活躍。

http://www.amankikaku.com/




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