第3話 ディレクションとアートワーク制作『Zwischen』『Punkt』 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第3話 ディレクションとアートワーク制作『Zwischen』『Punkt』

2024.5.16 THU

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第2話に引き続き、浜田武士氏によってデザインされた作品を紹介し、その制作過程における思考のプロセスに迫る。第3話では、auとクリエイターとのコラボレーション企画「Mobile in Forest Exhibition」に出展されたアートワークを紹介。


第3話
ディレクションとアートワーク制作『Zwischen』『Punkt』




点と線をテーマにした表現


2008年7月2日から6日まで、渋谷のCASA Jinguumaeで「Mobile in Forest Exhibition」が開催された。このイベントには、+81のプロデュースにより、5名のクリエイターが参加。計10点のアートワークが展示され、浜田さんも2つの作品を提供している。

「another work*s」+81 collaboration with au photo by Daisuke Ishizaka 「A1サイズのパネルを使用し、指定されたauの携帯電話を盛り込む規定はありましたが、そのほかはまったくの自由でした。そこで僕がテーマにしたのは“点”と“線”です。携帯電話は、点在している人たちをネットワークというラインで繋ぐものですからね」

どちらの作品でも、電話機はパネルの下方に貼られている。『Punkt』では、そこに鏡を用いているのが印象的だ。これは、携帯電話が自分の分身ともいえる存在であることを意味している。
「正直な話、“真っ白なところに鏡がポンとあったらキレイかな”といった単純な好みからスタートしたのですが、造形的な発想にちゃんと意味付けできたことで自分としてはスッキリしました」



説明的な要素の“引き算”


「another work*s」+81 collaboration with au photo by Daisuke Ishizaka
今回の依頼を受けた時期を振り返り「その頃はアートワークを作ることに抵抗があった」と浜田さんは語る。それは、アートディレクションの仕事で手一杯になっていたこととも関係しているようだ。

「アートディレクションでは、クライアントの要望を叶えたり、ときに裏切ったりするさじ加減が面白いんです。そんな仕事が増えていたせいか、“自由にやってください”と言われて困ってしまったんです」

制作過程でも、ADとして身に付けた作法に悩まされた。最初の案は、見る人のことを考えた説明的な要素が満載だったという。そこから「アートワークの依頼なのだから、自らがきれいだと感じる形を追求しよう」と思い直し、最後に機種名を示すアルファベットまでを取り去ったとき「やはり自分はグラフィックが好きなんだな」と再確認できたという。


ディレクションと作品づくりの両立


「アートディレクションの仕事は、必要とされる工程が多いのです。打ち合わせをしたり、外に出向いて確認しなければならないこともある。自分だけの瞬発力では走れない対人間的なものでしょう。一方、アートワーク制作はよりパーソナル度が高い。自分の中で答えを出すものなので、集中すれば短い時間でも完成させられる」

このようにディレクションとアートワーク制作の違いを捉えている浜田さんは、今回の作品を作り終えて「これからは、できるだけグラフィック制作にも時間を割きたい」と考えた。

「今の僕はまだ、アートディレクション側の幅が大きくて、うまくバランスを取り切れていないように感じています。疲れていると自分がアートワーク制作も好きであることを忘れてしまうこともある。それがすごくジレンマなんです。だから今回の仕事は、そのようなスタンスを見直す良いきっかけになりました」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)


次週、第4話は「2足のわらじを履くスタイル」について伺います。こうご期待。




●浜田武士(はまだ・たけし)
1970 年生まれ。高岡一弥氏に師事した後、 渡独。 2003年よりフリーランス。現在の主な仕事内容は、ミュージシャンや、ファッションブランド、マガジンへのデザインワーク、またギャラリーのカタログ制 作など。以前よりサイドプロジェクトとしてインターネット上のスクリーン・マガジン『tiger』(http: //tigermagazine.org/)を主宰。東京タイポディレクターズクラブ会員。
http://hamada-takeshi.com/

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