第4話 二足のわらじを履くスタイル「Edition 08-09 AW」 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第4話 二足のわらじを履くスタイル「Edition 08-09 AW」

2024.5.15 WED

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浜田武士氏によるデザイン術を紹介してきた本連載。最終回となる第4話ではファッションブランド「Edition」のカタログをピックアップ。それに関連して制作された店舗用のアートワークを合わせて紹介する。


第4話
二足のわらじを履くスタイル「Edition 08-09 AW」




1つの媒体でADとアートワーク制作を担当


アートディレクションとアートワーク制作。その両方を、浜田さんが1つの媒体で同時に担ったのが「Edition 08-09 AW」だ。このカタログでは、抽象的なアートワークを使用し、同じコンセプトに基づく作品をショップ内で展示することが決まっていた。

「2008年の春夏カタログを制作したときと同様に、最初はアートディレクションだけの依頼のつもりで、今回のテーマにマッチしたアーティストを探していました。しかし、スケジュールの都合などもあり、なかなか適任が見つからなかった。そこで自分でアートワークも担当することをクライアントに提案すると、先方も“実は私たちもそれが良いのではと考えてました”と言われたのです」

そこで、まずはカタログ用に丸や四角、線などの図形だけを組み合わせたグラフィックを用意。それを自らレイアウトした。テーマは「光と闇」。それにしたがい、各ページの背景は交互に白と黒に。カタログにはCDも同梱されており、それらの収納ボックスの外側を覆うスリーブ函は透明フィルム。ボックスを引き出す際には、印刷された抽象的なグラフィックの重なりがズレて偶発的な動きを体感できる仕組みになっている。


透明フィルムを用いた「発見」


「今回のグラフィックを作る過程では、まず最初にMac上に同じ図形を並べたパターンを用意しました。丸や四角、線などを用いて、拡大率を変えたりしながら複数のバリエーションを設けていったのです。そしてそれを透明フィルムに出力しました。さらに、それらを重ね合わせて、少しずつズラしながら模索していきました。Mac登場以前、版下を用いながら手作業していたのと同じ感覚です」

その言葉の通りに受け取るなら、さながら目的地のない旅のようなプロセス。想像を超えた何かをつかみ取る試みのようですらある。
「僕のアートワークは発見に近いんです。完成型のイメージは何となくあるのですが、その設計図に厳密に沿って進むわけではありません。いろいろ試しているうちに“これだ!”という瞬間に遭遇したり、意外な答えが見つかったりするのです」

相乗効果を生み出す


アートディレクションの仕事とアートワーク制作では、どちらか一方を専門にするケースが多い。だが、第3話で伺ったように、浜田さんは両立を指向している。

「二足のわらじを履くことが大切だと感じています。僕の場合は、どちらか一方だけでは行き詰まってしまう。それに両者の間には相乗効果があると思うのです」
具体的に相乗効果とは何だろうか。浜田さんはわかりやすく「仕事」と「作品」に置き換えて語ってくれた。

「仕事では、自分が向き合いたいテーマ以外の何かが求められることもあります。たとえば、いつもなら使わないような書体が適切であるといったケース。そこで、その書体について新しく発見したことが個人的な作品制作にも影響する。逆も然り。作品制作での発見も仕事に対して好影響を及ぼすものだと思うのです」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)


「このアートディレクターに聞く」第27回浜田武士さんのインタビューは今回で終了です。次回からは大島依提亜さんのお話を掲載します。





●浜田武士(はまだ・たけし)
1970 年生まれ。高岡一弥氏に師事した後、 渡独。 2003年よりフリーランス。現在の主な仕事内容は、ミュージシャンや、ファッションブランド、マガジンへのデザインワーク、またギャラリーのカタログ制 作など。以前よりサイドプロジェクトとしてインターネット上のスクリーン・マガジン『tiger』(http: //tigermagazine.org/)を主宰。東京タイポディレクターズクラブ会員。
http://hamada-takeshi.com/

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