第4話 シリーズ2冊目のブックデザイン『続 まこという名の不思議顔の猫』 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第4話 シリーズ2冊目のブックデザイン『続 まこという名の不思議顔の猫』

2024.5.25 SAT

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大島依提亜氏によるデザイン術を紹介してきた本連載。最終回となる第4話では、マーブルトロンより発行されている『続 まこという名の不思議顔の猫』をピックアップ。続編ならではの配慮と、盛りだくさんなアイデアについて詳しく話を伺う。



第4話
シリーズ2冊目のブックデザイン『続 まこという名の不思議顔の猫』


著者自装の1冊目との兼ね合い


巷で人気を呼んでいるブログ「まこという名の不思議顔の猫」(http://scomu.jp/makocat/)。ファニーフェイスの猫を飼い主が撮影し、ユーモアのあるテキストと合わせて公開されていることはご存じの通り。2007年には書籍化も果たし、現在ではDVD化までもが実現している。

「僕も猫を飼っていて、以前から猫の本の仕事をやりたいと思っていたのです。実際、本屋でペット書籍のコーナーを眺めることも多かったのですが、もし自分がやるとしたらこんな本が良いなと感じていたのが、まさにこの『まこ猫』でした。だから、話をいただいたときは、すごく嬉しかったです」

しかし喜ぶばかりでなく「これは大変だ」とも感じたという。好評を博していた1冊目は、著者自身が装丁を手がけ、すでに一定の世界観が完成されていた。そのため立ち入る隙がないと思っていた。
「ならば、1冊目と2冊目の世界観とを乖離させず、一見したときには似ているように“偽装しよう”と考えたのです(笑)。前作がクラフト紙の帯だったので、2冊目では反対にカバーをクラフトにして、それぞれの面積の比率を合わせました。ちょうど逆転させたような格好です」


第三者ならではのアイデアの数々


だが、デザイナーでもある著者が、あえて大島さんに装丁を依頼したのはコラボレーションにより新たなアイデアを取り入れるため。1冊目を踏襲するだけでは、大島さんがブックデザインを手がける意義も半減だ。そこで大島さんが提案したアイデアは次のようなもの。
「まずひとつは、まこと著者が、あまりにも蜜月な関係だったので、あえて誌面上で切り離してみたのです。それが“今月のまこ色”という章。文字を入れずに、写真と色面だけを組み合わせて見開き完結させています。そのほかにも、まこの姿に似ている急須の写真を配置したり、知人のイラストレーターに絵画でまこを表現してもらったりと、僕からの提案もいろいろと受け入れてもらいました」

冒頭にブック・イン・ブックのようなスタイルで綴じ込まれた冊子も、大島さんのアイデア。極めつけは、ところどころで数字の1を蟻のグラフィックに置きかえたノンブル。
「このノンブルは、うちの猫を観察しているときに思いついたアイデア。ほかの仕事で可読性をチェックするために数字をズラリと並べた用紙を眺めていたら、やおら猫が数字を叩き始めたのです。おそらく虫に見えたのでしょう。そのときに、これは猫にとってのグラフィックなんだと感動して、この本のデザインにも取り込もうと思ったのです」

偶然にも猫を飼っていたからこそ生まれたアイデア。2冊目の『まこ猫』は、猫好きのデザイナーと、猫好きの著者のタッグがあってこそ生まれてきた。身を乗り出して数々のギミックについて語る大島さんの笑顔がとても印象的だった。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)


「このアートディレクターに聞く」第28回大島依提亜さんのインタビューは今回で終了です。次回からは町口覚さんのお話を掲載します。




●大島依提亜(おおしま・いであ)
1968年栃木県生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業。映画、展覧会のグラフィックを中心に、ファッションカタログ、ブックデザインなどを手がける。近作の仕事としては『2クール』(日本テレビ)、『百万円と苦虫女』(日活)、「かもめ食堂」(メディア・スーツ))、「めがね」(日活)など

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