
旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考のプロセスを伺うとともに、創作のスタンスに迫るこのコーナー。第29回目はマッチアンドカンパニーの町口覚氏。第1話では、氏がクリエイティブディレクションを手がけている隔月刊誌「DIRECTOR'S MAGAZINE」に注目する。
原稿用紙ベースの本文組み
『DIRECTOR'S MAGAZINE』
文字を主体としたクリエイター向けの雑誌
クリエイティブ業界で人材派遣などを展開するクリーク・アンド・リバー社。同社が発行する雑誌『DIRECTOR'S MAGAZINE』は、創刊10周年で大幅な刷新を遂げた。町口さんは、リニューアル号となった2007年4月・5月号から同誌に携わっている。
「さまざまなつくり手の考え方を紹介する雑誌で、僕も以前に取材を受けたことがありました。当時は月刊でしたが、デザインを引き受ける際の条件として、発行ペースを落として内容をより充実させることを提案したんです。そのアイデアが採用され現在のような隔月刊になりました」
そんな思い切った判断を下せる『DIRECTOR'S MAGAZINE』の編集部。実務を手がけるのは編集長である永瀬由佳氏のみで、主だった記事の取材・執筆はすべて氏が担当している。 「永瀬さんとの出会いがあったから、僕はこの雑誌に携わっているんです。彼女は一度噛み付いたら離さない、今どき珍しいガッツのある編集者。そうでなければ、ここまで濃い内容の誌面をつくることはできません」
一見してもわかる通り、この媒体の特徴はとにかく文字が多いこと。表紙が文字だけで構成されていることも雑誌としては異例だが、本文ページも文字で埋め尽くされている。
「永瀬さんには“どんなに文字数が多くても削らず書きたいだけ書いてほしい”と伝えています」
「永瀬さんには“どんなに文字数が多くても削らず書きたいだけ書いてほしい”と伝えています」
フォーマット設計の奏効
レイアウトのベースは4段組みのフォーマット。文中に人名が登場する場合は必ず注釈を付けるため、下方の段は脚注スペースに割り当てられている。さらに、段の途中までしか原稿が達していない箇所もあったりと、文字は多いといっても、窮屈で読みづらい印象は与えない。
「1段は原稿用紙2枚分とまったく同じ20字×40行に設定してあって、文字行が段の幅に沿わなくても、後から原稿量を調整するような処理は求めていません。だって永瀬さんは、一文字一文字に魂を込めているはずですからね。それに決められたフォーマットに、文字数フリーの原稿を配置することで、誌面に必要な間を自然に生みだすことに成功していると思います。逆に言えば、読者が“読む”という行為をしない限り、この雑誌は理解できないデザイン設計になっているのですが(笑)」

もちろん文字主体だからといって、写真に関しても手を抜くことはない。むしろ掲載点数が少ない分、大きく力が注がれている。昭和の巨人のポートレイトを町口さんがセレクトして掲載するコーナー「PHOTO ESSAY」や、特集記事冒頭の撮りおろしポートレイトなど、どれも力のある写真ばかりだ。

「特集の人物写真は、取材日とは別日程で撮影しています。あらかじめ取材と執筆を終えている永瀬さんから、人となりを説明してもらい、どのような写真家に撮影してもらうべきかを決めるんです。僕も撮影現場に同行して、ベストな写真が得られるように努めています」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第2話は「平滑でない紙を使った写真集」について伺います。乞うご期待。
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●町口覚 |




