マッチアンドカンパニーの町口覚氏によるデザイン術を紹介してきた本連載。最終回となる第4話では、デザイナーにとっての使い勝手が追求された王子製紙の新しい紙見本帳「王子製紙書籍総合見本帳」と「OPL Colorful BLACKS」に注目する。
デザイナーの使い勝手を追求した
「王子製紙書籍総合見本帳」「OPL Colorful BLACKS」
デザイナーと製紙会社による取り組み
近年、製紙メーカーからデザイナーに向けたアプローチが増えているのはよく知られたことだが、そのひとつの象徴とも言えるのが王子製紙が運営する「OJI PAPER LIBRARY」。銀座にある王子製紙の本社1階にオープンしたこの画期的なショールームの総合ディレクションも町口さんにとっては重要な仕事のひとつだ。
「デザイナーは紙がなければ食べていけません。にも関わらず、長らく製紙メーカーとデザイナーは直接の繋がりを持っていませんでした。その状況を打破するために、僕はデザイナーの立場から王子製紙に対して、いろいろな提案をしてきました」
ショールームに設置された棚には300種以上もの紙見本が収納され、すべて自由に持ち帰ることができる。銘柄によっては紙の裏面に印刷したサンプルが用意されていることなどで評判が良い。実用的な情報を無料で得られるわけだ。
ショールームに設置された棚には300種以上もの紙見本が収納され、すべて自由に持ち帰ることができる。銘柄によっては紙の裏面に印刷したサンプルが用意されていることなどで評判が良い。実用的な情報を無料で得られるわけだ。
「ショールームでは定期的に企画展も行っています。それについても“メーカーにしかできないことをやるべき”と提案しました。その結果、製紙工場のスタッフが薦める紙を紹介するなど、独自の切り口での展開が続いています」
最近では、1冊にまとめられた書籍総合見本帳も刷新。従来から続いていたB5縦サイズは踏襲せず、ゼロから設計し直した。もちろんこれも無料で入手できるもののひとつ。
「書籍用紙は、四六判の横目を在庫する銘柄が多いんです。それらの紙を使用する場合、B5縦サイズは紙取りが非常に悪くてムダが生じます。紙の見本帳だからこそ、当たり前のことを当たり前に意識しているんです」
ツールではなく会社をデザインする

本文でも今までの見本帳にはない工夫が凝らされている。1銘柄につき4ページを設け、そのうちの3ページに図版や文章を印刷。1枚目の印刷は表裏の関係にあるため裏抜けの具合も確認できる。

「書籍用紙についてデザイナーが知りたいのは、そのような情報なんです。ほかにも各色の再現性を把握するためのカラーバーや、罫線を確認できる図版も盛り込んでいます。本当の意味でつくり手が使いやすい見本帳を目指しました」
さらにまったく新しいタイプの見本帳も誕生させた。グレードや銘柄の分類にこだわらず、王子特殊紙が製造している黒い紙だけを集めた「OPL Colorful BLACKS」だ。リング綴じで開きやすいことからも、使いやすさへの強い配慮が感じられる。

「このような見本帳は自分でも欲しかったんです。これもショールームでは無料配布しているのですが、使ってみると便利ですよ。きっと別の色でも同じような見本帳がほしい、というユーザーの声が届くはずなので、次々と色を変えて製作する予定です」
町口さんは、単に頼まれた仕事だけを手がけるのではない。そこからも王子製紙や製紙業界に深く関わっていく意気込みが感じられる。
「僕は王子製紙全体をデザインする、ということを志しています。そうしていかないと世の中は変わりませんからね」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
「僕は王子製紙全体をデザインする、ということを志しています。そうしていかないと世の中は変わりませんからね」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
「このアートディレクターに聞く」第29回町口覚さんのインタビューは今回で終了です。次回からは青木康子さんのお話を掲載します。
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●町口覚 |




