第4話 相乗効果で成り立つ仕事 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて


パンゲアの青木康子氏によるアートディレクション術を紹介してきた本連載。最終回となる第4話では、ファッションブランド「inmercanto」(インメルカート)に注目。デザインの仕事に携わる上での心構えについて話を掘り下げる。

第4話
相乗効果で成り立つ仕事
「inmercanto」


ショップ全体をトータルにディレクション


2008年に誕生したばかりのファッションブランド「inmercanto」。山口県の防府市に1号店がオープンしたのを皮切りに、群馬県伊勢崎市、山梨県中央市と、郊外に店舗を構えてきたブランドだ。商品ラインナップでは「普段着」が意識され、家族で来店する客も多いという。

「市場(いちば)のような雰囲気をコンセプトにしています。私はブランドの起ち上げから関わっていてネーミングも担当しました。inmercantoはイタリア語の市場(mercato)などから派生させた造語です」

ショップで使用するアイテムとして、オリジナルのテープやギフト用のクラフト包装袋など、数多くの品目をデザイン。白のショップバッグには大きさの異なるバリエーションも用意。大型のものは古新聞の回収袋として再利用できるなど工夫は盛りだくさん。

「店舗のインテリアにも携わっています。クライアントや内装デザイナーと相談しながらアイデアを出し合いました。イラストなどのラフを描いたわけではなく、言葉ベースでの打ち合わせだったので、常にスタッフ間でしっかりと意思統一をしながら仕事を進めました」

結果、象徴的な木漏れ日を感じさせるポール、セール情報を記すための黒板など、いたるところで暖かみを感じさせるショップに仕上がった。店先にはパンツの修繕を受け付けるスペースも設置。そこでは他店の商品の持ち込みも受け付けている。

「人の集まる場であることや、地域の中での意味性を意識したのです。同様に、店内には時計台やベンチを設置した居場所も設け、その周囲には人工芝を敷きました。これは父親や子どもが母親の買い物が終わるまでの時間をリラックスして過ごせる工夫です」





クライアントの持つ力を最大限に引き出す



このように関連する制作物をトータルに手がけ、ひとつのブランド像を形作っていく過程では、クライアントとの密な協力態勢が欠かせない。そのために青木さんは「事前の交通整理が大事」と語る。

「方向性をハッキリとさせて色を出さないと、企業は生き残れない時代だと思います。そのため、クライアントが何を目指しているかを探るところからアートディレクターの仕事が始まるのです。それを吸い込み、噛み砕いて、どのエッセンスを抽出すれば消費者とコミュニケーションしやすいかを考えるのが私の仕事です」

デザインの出発点になるのは企業の意志。それを見定めなければ腕の振るいようがない。そのステップをクリアしさえすれば、後工程でも歯車が狂うことはなくなり、結果として良いものが生まれる。

「そんな風に考えると、私にはデザインだけですべての課題をクリアできるとは思えません。デザインはあくまで末端。企業の商品開発力などのパワーがもとにあって、はじめてうまくいくものでしょう。デザインの仕事ってクライアントの持つ力を最大限に引き出して、相乗効果を生み出すことに尽きるのです」

(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)


[プロフィール]
あおき・やすこ●アートディレクター。1988年からサイトウ・マコトデザイン室に在籍。1994年に設立。2001年有限会社パンゲア設立。美術展のグラフィックやアパ レルブランド「LOWRYS FARM」のクリエイティブディレクション、その他、広告、パッケージ、CM、ロゴなど分野を問わず幅広く活動。NY ADC国際展・銀賞、ブルーノ国際ビエンナーレ・入賞、東京タイポディレクターズクラブ・TDC賞入賞、日本パッケージデザイン大賞2005・入選など受 賞歴も多数。



twitter facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

この連載のすべての記事

アクセスランキング

8.30-9.5

MdN BOOKS|デザインの本

Pick upコンテンツ

現在