第4話 そして現在 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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様々なジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回は株式会社イメージソースの清水幹太さんを取材し、ディレクター/デザインエンジニアとして活躍する今日までの足跡をたどりま


第4話 そして現在



渋谷区神泉のオフィスにて、清水幹太さん

渋谷区神泉のオフィスにて、清水幹太さん


人の仕事の領域を侵犯する



──入社されてからの仕事は?

清水●社長は私が何ができるのか、まったくわからないまま採用しているので「まあFlashでも組んでみなよ」と。で、作ったものを見せて、段々任せてもらえるようになっていきました。最初のスピードは早かったですね。背水の陣でのぞんでいるから自分で仕事を見つけるようなところがあって、自分の手があいたら人の仕事を手伝ったり。で、直属の上司のディレクターが一杯一杯になったら、スケジュールを引いたり進行、ディレクションも引き取るような感じになっていったんです。

──なんでもやってやろう、と。

清水●ええ。かなり躁的に仕事に取り組んで……あまり帰宅しないから嫁には評判悪いのですが、どんどん人の領域に侵入していった。すると半年ぐらい経ったときにはディレクターとして頭数に入れてもらえるようになったんです。ただ、逆にデザインそのものには限界を感じていて。

──どうしてですか?

清水●手を動かして絵を作っていくのって、抽象的で答えがない世界じゃないですか。逆にプログラミングだと答えが出る。もちろん、動きとかはきっちりデザインしていかないとならないけど、そっちは感覚でわかるようになったんです。一方、絵やレイアウトというものは技術的なところまでは行けるんだけど、世間で活躍しているアートディレクターやデザイナーさんの領域に行ける気がしなかった。

──次第にインタラクティブな方面への興味が?

清水●そうですね。そっちのほうが手を動かしやすいし、自分として善し悪しがわかる。結局、デザイナーって自分が絵が作れなくても。善し悪しがわかれば伸びしろがあると思うんです。ただ、その善し悪しがわからないと、ずっと迷い続けてしまう。私は限界を知って、諦めが早かったと思います。いまもたまにデザインをやったりしますが、基本はディレクター兼エンジニアですね。

──いま、満足に仕事ができていると自覚がありますか?

清水●あからさまに満足とは言えませんが、結果は出せていると思います。ただ、それは単純に入ったきっかけがミーハー根性だったからです。周りの人がいいものを作っていたり、業界的に評価されたいという小さいところだったので。その目的はほぼ達成できてしまっていますが……実際に満足しているかというと、案件を抱え過ぎたり、一個一個のクオリティがついてこなかったり、細かいところでの満足はありませんね。


UNIQLO MEETS CORTEO(2008年)UNIQLO MEETS CORTEO(2008年)

清水幹太さんの仕事より
UNIQLO MEETS CORTEO(2008年)http://www.uniqlo.com/meets/
ユニクロが“世界の才能とのコラボレーション”を謳う新プロジェクト=ユニクロ ワールド・ドキュメントのサイト。第一弾の参加は「シルク・ドゥ・ソレイユ」で、アクロバティックで甘美なショーを堪能できる



デザインにこだわらないべき



──何事において、スピードが早い業界でもありますね。

清水●最前線に身を置いているからかもしれませんが、それはあまり気にしてないです。入社してからは、スピードも感じないぐらい無我夢中でやってますから。体力的には厳しいものがありますが……ほんとは身体を壊したいんですけど、なかなか壊れない(笑)。

──この仕事で必要なものは何だと感じますか?

清水●いろいろな切り口があると思いますが……ディレクターとしては周囲の信頼を得たり、仕事を見つけていく目配りかな。ディレクターなんて、言ってしまえば雑用係ですから。かゆいところに手が届き、どんどん人の仕事の領域を侵犯していって、ある程度任せないとならないところは任せるってことですね。あと、お客さんとちゃんと話ができないとならない。

──テクニカルな部分では?

清水●自分から率先してハマっていかないとならない、ということですね。テクニカル・ディレクターでもあるので、技術的に新しいものは首を突っ込んで、率先してつまづいていると人に良いディレクションができる。

──では、最後にアドバイスを。

清水●このサイトは主にデザイナーの方々が見ていると思いますが、あえて申し上げたいのは「デザインにこだわらないべき」です。デザインという仕事はものすごくコンテクストが広くて、単純に絵を作るだけの仕事ではありません。Webサイトの構造をデザインしたり、人を引き込む構造を考えるのもデザイン。絵を作ることだけにこだわっていると、ただの絵を作る人になってしまう。自分は絵を作るデザイナーだと思うだけではなく、他の領域に手を広げると、たぶんデザイナーとしても広がっていくし、デザインではないもっと楽しいものを見つけられるかもしれないと思います。


今回で「これがデザイナーへの道」第28回・清水幹太さんのインタビューは終了です。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)


清水幹太さん

[プロフィール]

しみず・かんた●1976年東京都生まれ。東京大学在学中よりWeb制作会社、デザイン事務所での勤務を経て、大学中退後に独立。雑誌/書籍などのグラフィックデザイナーとして活動後、2005年「株式会社イメージソース」に入社。現在、同社のディレクター/デザインエンジニアとして勤務中。

http://www.imgsrc.co.jp




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