第4話 もう一度「焼け野原」の時代にて | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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様々なジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回はペッパーショップの古賀学さんを取材し、アートディレクターとして活躍する今日までの足跡をたどりま


第4話 もう一度「焼け野原」の時代にて



横浜市日吉のオフィスにて、古賀学さん

横浜市日吉のオフィスにて、古賀学さん



──ざっと振り返りましたが、どうですか?

古賀●問題になるのは、観客がバラバラなんですよ。ペッパーショップのブランド力はあるけど、いまクラブとかで『&a water/アンダーウォーター』を流して、オタクのイベントをやっている人とかに会うこともある。そこで実感するのは、「オタク」はとっくにかっこ悪い引きこもり文化というわけでもない。いたって健全なんです。僕にとっての『コミック・キュー』なども、うまくかっこ悪くなく作れていたと思うのですが。

──『PEPPER SHOP』は雑誌として復活させないんですか?

古賀●どうなんでしょうね。一番問題なのはあの頃、20歳とか24歳ぐらいの間、やたら若くて元気だったから許されることって感じだったので(笑)。

──若気の至りですか?

古賀●ハハハ。まあ、失礼なヤツだけど若いから許そうか、と。あと、ずっと寝てなさそうで大変だとか(笑)。でも、いま映像は楽しいですよ。ワープロを使ってミニコミを作るというのもテクノロジーの下駄を履いているわけじゃないですか。自分が何か発信したいと思ったときに、その時代の一番面白そうな下駄を履いてアウトプットするという意味で。で、一時期キャラクター物にドップリだったのでWebカルチャーとは距離が離れていたのですが、いままたWebの次に映像を個人レベルで作るというのが面白かったりしますよね。いまのプロジェクトもテクノロジーの下駄なくては成り立たない。そういった意味では似たようなことをやっていると思います。その時々コンテンツにしているのも、自分の脳内のイメージと対象を使ってどう表現するかってことなので。

──多分、そういう活動が続いて行くのでしょうね。

古賀●そうですね。いまネット環境も普通に映像を観れるのでWebも面白がれそう。デザイナーとして言うとエディトリアルの延長線上にしか過ぎないのですが、そこで映像が展開できたりする点では興味がある。あと、10年ほどオタク仕事中心だったのがここに来て突然サブカル方面に向かいつつある。Webだけではなくクラブ・イベントやエキシビションなどのリアル空間で起こっていることを見ると、「ここから面白くなりそうだ」と思って。ミニコミ作ってイベントやパーティでバラまいていた15年前、バブルが崩壊して数年だった頃、クリエイティブな意味では好転したじゃないですか。

──ええ。

古賀●世の中にお金がなくなってしまった、さあどうしようという時代だった。一回、焼け野原、津波の後みたいな状態のフラットなところからリスタートされているのを面白がっていた自分としては、いま無茶苦茶面白いんじゃないですかね。

──逆にまた、その時代がやって来てますね。

古賀●ええ。世界にお金がなくなって、ヤケになるしかないみたいな。でも、お金がなくなったわけではないんですよね。もともとなかったのに、あるように見せかけていたのがバレちゃったと。それは15年前にみんな体験していたのに、もう一回リセットが起きている。でもクラブとか行くと「なんでみんな遊んでいられるの?」ってぐらい、華やかな格好してて……単純に若いってことが正義って考え方をすると、そこには未来があるとは思いますね。ガンダムなどでオタクのハードコアに向かっていくと、「過去」を素材に作品をつくるわけですから、観客が自分よりも上の世代になってしまう。自分が年をとって行くと自動的に客層が狭くなって行く不安もある。でも、いまクラブで自分の作品を見せると、観客が一転、自分よりみんな若い。ようやく「未来」を素材にできて、すごく楽しいなって思っています。


charafortune ガンダム占い・光る宇宙PaPETCH/パペッチ

古賀さんの仕事より
左:『charafortune ガンダム占い・光る宇宙』(メガハウス/2007年1月)

右:『PaPETCH/パペッチ』プロデュースユニット「NORISHIROCKS」とのコラボレーションによるキャラクタープロジェクト


今回で「これがデザイナーへの道」第30回・古賀学さんのインタビューは終了です。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)


古賀学さん

[プロフィール]

こが・まなぶ●1972年長崎県生まれ。タウン誌の発行会社勤務を経て、創形美術学校に入学。在籍中の93年からフリーペーパー『PEPPER SHOP』を制作、中退後にフリーランスのデザイナーとして活動。村上隆氏の作品・宣伝デザインワークの他、雑誌など各種デザインを勤める。現在、アートプロジェクト「&a water/アンダーウォーター」を展開中。

http://peppergear.com/




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