第1話に引き続き、タイクーングラフィックスの宮師雄一氏と鈴木直之氏によってデザインされた作品を紹介し、その制作過程における思考のプロセスに迫る。第3話では、3組のアーティストのCDを中心として音楽にまつわる仕事にフォーカスする。
第3話
アーティストの“筋”を最大限に尊重
「音楽CDのバリエーション」
事務所の中心に存在する仕事
さまざまな媒体で腕を振るうタイクーングラフィックスだが、とりわけCDジャケットなど音楽関係の仕事は、彼らの十八番とも呼べる分野。「事務所を起ち上げた当初から、僕らの中心にある」と宮師さんが語るように、現在も数多くのアーティストと仕事を通じて関わり続けている。
「中島美嘉さんのCDジャケットは、通算何十枚もデザインしています。彼女のデビュー当時からの仕事なので、彼女がどんどん輝きを増していく様子を間近で見てきました。それを見守りながら、旬の彼女を撮影してジャケットにするのです。1枚では完結しない人間の成長ドラマのようなイメージです」(宮師)
「一方、テイ・トウワ氏の場合は、制作プロセスが大きく異なります。彼はミュージシャンであると同時にアートディレクターでもあるので、ジャケットを制作する際にも、具体的なアイデアをわれわれに提示してくれるのです」(鈴木)
アーティストによって求めるビジュアルの方向性も、仕事のプロセスも異なるわけだが、それが顕著なのがBUMP OF CHICKEN。本人たちがジャケットに登場することはめったにない。さらに、いずれもエッジの効いたジャケットであることが印象的だ。
「彼らにとっての判断基準は、5年、10年後でも古びて見えないか否や。だから、はやりの書体を使うデザインはないですね。僕たちの仕事は、そのような“筋”を最大限に尊重して形にすること。だから結果としてアーティストごとにまったく異なる仕事になるのです」(宮師)
自分自身を見つめ直す機会になる
ちなみにBUMP OF CHICKENは、メジャーデビュー前にタイクーングラフィックスの事務所を来訪している。以後、ジャケットなどで使い続けているロゴは、その際にタイクーングラフィックスが作ったものだ。このエピソードからもうかがえるように、ふたりはアーティストから全幅の信頼を寄せられている。そんな彼らは、個人的な音楽の趣向で仕事を選り好みすることはないと語る。こと音楽に関しては、ジャンルによって得意・不得意が明確にわかれそうなものだが、そこには次のような思いが秘められていた。
「個人の好き嫌いの範囲で仕事をすることはありません。様々な分野の人たちと関わりを持てる仕事は、自分にとってはありがたい」(鈴木)
「大切なのはジャンルではなく人です。アーティストにとっては一枚一枚のCDが真剣勝負で、物事に向き合う姿勢が100パーセントな本物の人ばかり。そういった人たちと向き合って仕事をすると、自分のことを見つめ直す機会になります。だから音楽の仕事はやめられないのです」(宮師)
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第4話は「自分らしさを出せる仕事」について伺います。こうご期待。
次週、第4話は「自分らしさを出せる仕事」について伺います。こうご期待。
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