第2話 展覧会自体のアイデンティティ「スーパーピュア展2008」 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第2話 展覧会自体のアイデンティティ「スーパーピュア展2008」

2024.5.26 SUN

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旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考のプロセスと、創作のスタンスに迫るコーナー。第34回目は板倉敬子氏。第2話では障がいを持つ人たちのアート展「スーパーピュア展2008」のポスターにフォーカスする。



第2話
展覧会自体のアイデンティティ「スーパーピュア展2008」


メインビジュアルは展覧会参加者が作成


キャッチコピーに「アートは障がいを超える」を掲げた「スーパーピュア展2008」は、これが3回目の開催となる障がいのある人たちのグループ展。「工房しょうぶ」「工房絵」「アトリエ・パンパキ」「アートかれん」「神奈川県立麻生養護学校、高等部表現支援コース、美術グループ」の5つのアトリエが集まり、昨年10月24日から11月9日まで、アートフォーラムあざみ野にて開催された。

「展覧会ビジュアルの制作依頼をされた際に、展示作品を拝見したのですが、ペインティング、ソーイング、立体作品などと、幅広い作品があり、それらの写真を単に並べただけのポスターでは、展覧会の魅力は伝えきれないと感じました。それくらいバラエティに富んでいて、個々がパワフルだったんです」

つまるところ「展覧会で観られる作品はこれ」と語りかけるポスターではなく、展覧会自体のアイデンティティをポスター上で言い表したかったということ。そこでメインビジュアルの担当として白羽の矢が立てられたのが、出品者のひとりでもある澁谷遊歩さん。

「彼の作品は、まるでデジタルでビットマップ表現されたかのようにカクカクした特徴的な絵です。そこには、普通に考えるとあり得ないほどのインパクトがあります。澁谷さんには展覧会に関する文字情報をそのタッチで描いてもらいました」


アピール度の高い箔押し印刷


こうして生み出された「展覧会自体のキャラクター」は見た目にも強度抜群。そこに輪をかけるようにほどこされたのが箔による印刷だ。

「普通に刷るのではなく、何か印刷面でもワンフックがほしかったのです。アート通はもとより、普段アートとはあまりなじみのない一般の人が多く足を運ぶ展覧会でしたので、少し安易かもしれませんが箔のようにストレートにアピール度の高い手段が有効だろうと考えたのです。それに、この会場ではポスターに、これまで箔を使ったことはないと聞いていましたから」

紙違いで4種類のポスターが用意されたのは、複数を並べることで箔によるストイックなイメージを和らげ、やさしさを生み出すしたかったためだ。結果、過去3回の開催のなかで、最も多くの集客を起こし、さらにはポスターを欲する人たちまでが現れることに。

「この仕事では、障がいを持つ人たちのピュアで、ためらうことなく自分を出せる能力や、健常者には思いもよらない視点を持つ姿勢に、何度となく驚かされました。そういった柔軟なスタンスは、私たちアートディレクターも見習うべき部分ですよね。ちなみに、今回のポスターを目にした澁谷さんは、嬉しくて小躍りしていたと聞いています(笑)」
(取材・文:立古和智 人物写真:谷本夏)

次週、第3話は「不思議な空気の漂う世界感」について伺います。こうご期待。





●板倉敬子(いたくら・けいこ)
1973 年11月22日生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。ゼブラ株式会社、good design companyを経て、2005年独立。2006年イッカクイッカ株式会社設立。ワコール、パルコ、リクルート、KDDI、サントリー、ロッテ、オンワー ドなどの広告、パッケージデザインなどを手がける。モノトーンの線画のアートワークでも国内外で提供がある。NY ADC会員、JAGDA会員。
http://keikoitakura.com/

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