第2話 成安造形大学 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考のプロセスと、創作のスタンスに迫るコーナー。第35回目はGRAPHの北川一成さん。第2話では、来年90周年を迎える成安造形大学のブランディングに注目。


第2話 成安造形大学
学校の職員、学生とともに時間をかけて
ブランディングしていくことの重要性。



●90周年ロゴマーク
学生より募ったアイデアを元にブラッシュアップしたロゴマーク。横に伸びるバーは、コアなイメージとしては時間軸であるものの、必ずしも90年という長い歴史を表現しているわけではない。その解釈は受け手に委ねた






●90周年Webサイト
90周年のロゴマークが、Webサイトのナビゲーションにあわせて伸び縮みする。もともとは裁縫などを教える学校としてスタートした成安造形大学だが、特定のカラーや型にはまらない変幻自在な体制へと変化している様子を思わせる

●学校案内
在学生が登場する学校案内。つくりものの世界ではなく、成安造形大学でのリアルな日常をドキュメントした写真を使用。撮影は新津保建秀

●案内サイン
A4のプリンターでプリントアウトして、学内のサインとして使用。怪しげでキモカワイイ矢印は、ひとつのデザインのあり方「美しくないといけない」に反するもの。それがデザインの意味を改めて考え直す機会をあたえる


滋賀県の成安造形大学は、2010年に90周年を迎えます。そのときに向けて、90周年のロゴマークや学校のツールのデザインを徐々に変化させながら、ブランディングし直しています。特に美大の場合は、徐々に変化していくプロセス自体がリアルなデザイン教育になりますし、そのプロセスに身を置くことは学生にとっても先生たちにとっても、価値があると思うんですよね。

よく言われることですが、CI制作やブランディングをする際は、第三者に「どう変わったのか」を伝えていくのと同時に、そこで働く人たちや学ぶ人たちのマインドを変化させていくことが大事。組織のトップがデザイナーを連れてきてマークやロゴをデザインさせるだけではダメです。入学してきた学生が、外から見ていた姿と中に入ってみて感じたものが異なるようでは「格好だけだったのか」とがっかりするでしょう? やはり数年かけて、全員参加でCIを構築するべき。そういった一連の行動こそがデザインです。デザインは見た目を変えるだけの仕事ではありませんからね。いずれにしても、一夜城のように一気に変わるのではななく、時間を追って変化していく行動に意味があるのです。

早ければこの冬には、新しい大学のロゴマークも登場します。2010年には名刺やステーショナリーなどのデザインも一新します。また、授業そのものについても提案しているのですが、開かれた大学にしていくためにも、オープンキャンパスを設けることはもちろん、足を運べない人を対象にオンラインを含むさまざまな活動を通じて情報を配信していくことで、学校の活動が垣間見れるようにしていきたいと考えています。
(取材・文:立古和智 人物写真:谷本夏)

次週、第3話は「東京をもっと元気にのロゴ制作」についてお送りします。こうご期待。



●北川一成(きたがわ・いっせい)
1965 年兵庫県生まれ。87年筑波大学卒業後、GRAPH(旧北川紙器印刷)に入社。「デザイン×プリンティング」の相乗効果を生かした仕事で定評がある。代表作 に富久錦のCIなどがある。国際グラフィック連盟、日本グラフィックデザイナー協会、東京TDC会員。NYADC・イギリスのD&AD Awardsなどの、国際デザインコンペの審査員も務める。著書に「変わる価値」(ワークスコーポレーション)がある。
http://www.moshi-moshi.jp/

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