第4話 GRAPH×DAIMU ポスター | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考のプロセスと、創作のスタンスに迫るコーナー。最終話となる今回は、GRAPHがアライアンスを組む製版会社DAIMUとともに生み出したポスターを紹介。怪しげな気配を感じさせる、色表現に富んだ作品の舞台裏に迫る。


第4話 GRAPH×DAIMU ポスター
トップクラスの製版技術と、
デザイン、印刷技術の融合。


●ポスター3点
印刷の技術を訴求するために、GRAPHとDAIMUが共同制作したポスター。CMYKでは再現されない深くて澄んだ青が特徴。謎めいた空気感が人目をひく

●ロゴ
DAIMUとGRAPHのロゴは遠目には見えないが、接近すれば目に入る。広告的に声高に主張しない程度のさじ加減が、展覧会場ではかえって目立つ



GRAPHが技術提携しているDAIMUは、製版の技術の世界ではトップクラスの会社で、CMYKでは表現できない、色域の広い写真の分解のエキスパートなんです。彼らの技術は、消費されていく印刷物よりも、美術品の写真など付加価値の高い印刷物に求められるものです。その技術をもっと幅広く活用できないか両社で模索しています。
このポスターは、印刷技術を訴求するためのものなのですが、青の発色がすごいですよね。通常、青のゾーンを美しく再現するのは非常に難しくて、深みを出すためには青に紅を混色してきたものですが、このポスターだと青の中に別の青があって、しかも平面的ではなくディテールがある。印刷インキでこういった深くてしかも澄んだ青を出すのは本当に難しいんですよね。

それにこの写真も怪しくていいでしょう?(笑) 被写体はカーペットとカーテン。ですが、より抽象的で怪しげな気配が表現されています。ポスターでは、技術をアピールする以前に、まずは目を留めてもらわなければなりません。そこで、必ずしも何か具体的なイメージを提示することだけが戦略とはなりえません。各社が声高に主張しあう会場などでは、そんな広告的なアプローチをせずとも、一歩引いて抽象的な写真で「謎感」を醸し出すことも有効です。それによって技術者の目にとまれば、自ずとDAIMUとGRAPHの仕事であることが伝えられるわけですからね。

DAIMU以外にも、全国のいくつかの会社とこういったアライアンスを進めています。すでに大量生産大量消費の時代じゃありませんし、印刷物は今後ますますマスの役割を担うものではなくなります。だから、大量生産を前提としてGRAPHが単独で拡大するのではなく、特別な能力を持つ企業同士が連盟を結んでいくほうがいいはずです。そんな風にしながら、オンラインの世界では表現できない、印刷ならではの質感や細やかさを、これからも大事にしていきたいですね。
(取材・文:立古和智 人物写真:谷本夏)





●北川一成(きたがわ・いっせい)
1965 年兵庫県生まれ。87年筑波大学卒業後、GRAPH(旧北川紙器印刷)に入社。「デザイン×プリンティング」の相乗効果を生かした仕事で定評がある。代表作 に富久錦のCIなどがある。国際グラフィック連盟、日本グラフィックデザイナー協会、東京TDC会員。NYADC・イギリスのD&AD Awardsなどの、国際デザインコンペの審査員も務める。著書に「変わる価値」(ワークスコーポレーション)がある。
http://www.moshi-moshi.jp/

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