第3話 東京もっと元気に | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考のプロセスと、創作のスタンスに迫るコーナー。第3話で取り上げるのは「東京もっと元気に」というプロジェクト。コアなイメージは据え置きながら、いろんな顔に変化していくロゴの制作背景に迫る。



第3話 東京もっと元気に
増殖するロゴ、斬新なポスターともに、
完全に振りきったデザインワーク。




●Web上のロゴ
変化するロゴ。コアなイメージは一定でありながら、目鼻口などは変化させられる設定のため、いろんなロゴが増殖していく。それがコンセプトである「さまざまな人が集まりつながっていく」を体現する

●ポスター
ロゴを主体としたポスター(左)と、グラスに注がれたシャンパンの泡のイメージを形にした「東京シャンパンナイト」ポスター(右)。書体をはじめ、あえてデザイナーではない人がデザインしたかのような斬新なできあがり。デザインした北川さんもすごいが、これを採用した側もすごい



「東京もっと元気に」は、ユニマットやソルト・コンソーシアム、カフェ・カンパニーといった東京の飲食店の会社がスタートしたプロジェクト。昨年の金融危機以降、急激にしぼんでいる景気を前に「東京をもっと元気にしよう」という思いと、東京オリンピック招致への思いが重なって、こういったプロジェクトに発展しました。

月の中にお地蔵さんのような顔を描いたロゴは、「人がつながる」ことをコンセプトに、いろんな顔が増殖していく設定です。たとえば、僕の顔とスマップの木村拓哉さんの顔だと、「顔」という概念では同じですが、目鼻口のレイアウトが異なるため、彼のほうが格好いいんです。とはいえ、「顔」でグルーピングさえされていれば、まったくの別物にはなりません。巷にはまったく同じロゴを繰り返し使うことでブランド浸透をはかる手法もありますが、こんな風に枠組みの中で変化させていくのも手です。人間って本来概念化する能力が高いので、グルーピングできるゾーンも広いんです。


月を採用した理由は、月は欠けてもまた満ちるというところからです。それに「元気」の象徴は笑顔かもしれませんが、今みたいにみんなの気分が沈んでいるときに表情をスマイルにしたらカラ元気っぽいから、お地蔵さんをモチーフにして、ブレない気持ちを込めました。


ポスターに関しても、見ていただいた通り、かなり斬新な試みをしました。ここまでやると、「デザイナーとしての選手生命を脅かされる(笑)」という意見もあるでしょう。けれど、若い人も含めてもっと挑戦していかないとね。デザイナーはクライアントからの意見に従っているだけではクライアントに認められません。そこでは議論しながら解決していくのがあるべき姿でしょうし、クライアントの顔色ばかり気にして消化不良になっているようでは先がありません。まずは「自分の代わりのデザイナーはいくらでもいる」という認識を持つべきです。それにダメならダメでイチからやり直してもいいし、好きでデザインをする限りは「振りきった」という姿勢を忘れずにいたいですね。
(取材・文:立古和智 人物写真:谷本夏)

次週、第4話は「GRAPHとDAIMUの業務提携」についてお送りします。こうご期待




●北川一成(きたがわ・いっせい)
1965 年兵庫県生まれ。87年筑波大学卒業後、GRAPH(旧北川紙器印刷)に入社。「デザイン×プリンティング」の相乗効果を生かした仕事で定評がある。代表作 に富久錦のCIなどがある。国際グラフィック連盟、日本グラフィックデザイナー協会、東京TDC会員。NYADC・イギリスのD&AD Awardsなどの、国際デザインコンペの審査員も務める。著書に「変わる価値」(ワークスコーポレーション)がある。
http://www.moshi-moshi.jp/

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