第4話 個に向けて「箱」を提供するデザイン
パーソナライズされた、自分専用のZOZOTOWNになっていけばいい。
――実際にWEBビジネスで、物販以外ではどのようなことを考えてますか?
前原●今のところ物販です。
――ネットという新しいメディアでいろいろなビジネスが生まれはじめていると思うのですが、今後どうなっていくと思いますか?
前原●ある程度、淘汰されてくると思います。言い方に語弊がありますが、うちのサイトを模倣したようなサイトもたくさん出てきてきていますけど、コンセプトが明確なものは比較的少なくて、ただ『売れるだろう、商売になるだろう』といった目的のものが多いような気がします。
最終的には価格競争にもなってくるかもしれないですが、徐々に淘汰されてくると思っています。残っていくものは当然残るでしょうし、消えていくものはそれなりに理由があるはずです。さらに先のことを考えるとより厳選されていくのではないでしょうか。
「増えつつあるインターネット上のショッピングモールだが、今後淘汰されていくだろう」と前原氏は語る
――では、リアルリョップはどうなるのでしょうか?
前原●リアルショップはこれからもあり続けると思います。リアルだろうがネットだろうが、どんなショップであってもサービスや品揃えが悪ければそこの店はダメになっていくでしょうし、どんなにネットが便利になったとしても、接客のいい店員さんがいるリアルショップにはお客様が集まるでしょうし。WEBであってもリアルでも結局は人がやっていることなので、売る側がどこまでお客さんのことを真剣に考えてあげられるかが重要で、そこはリアルもWEBも変わらないんではないじゃないですかね。
あと、逆に最近うちがメーカーさんとかブランドさんに言われるのは、うちで売り切れになっていたり、実際自分で試着してから買いたいということで、うちのサイトを見てから、実際のお店にお客様が購入に行くというケースもあるみたいです。
――相乗効果があるわけですね?
前原●そうですね。
――リアルショップとうまくコミュニケーションがとれているのですね。
プロモーションとして関係者等にプレゼントされたその名も「像造麺」
前原●そうだと思います。最近よく言われるのですが、「ZOZOTOWN」にアクセスが増えて、たくさんの人たちに認知されてきたので、「ZOZOTOWN」自体がメディアみたいな感じで見られているようで。
――要は、コンペティターじゃなくて、共存してるということですね。
前原●そうですね。うちのネットで紹介しているサングラスの画像が良かったらしく、そのサングラスがショップでもとても売れたという話もありましたね。
購入してくれたお客さんに送られるビジュアルブック「ZOZOBOOK」
――WEBデザインの今後はどうなると思いますか?
渡邊●最近ではブログが普及したのもそうですが、誰もが手軽にサイトを更新したくなってきていると思うんです。企業ページも、これまでオペレーターじゃなければ更新できなかったことをなんらかのツールを使って誰もが簡単に更新できるようになっていくと思います。なので、デザイナーの役割は、どのように更新されても、美しく見えるような「テンプレート」「箱」のようなものを用意してあげることが必要になってくるのではないでしょうか。
渡邊氏は、「個人の趣向や目的に合わせ、よりパーソナライズされたものになっていけばいい」と語る
例えば、トップページのビジュアルひとつとっても、いつでも変えたい時に自分たちで変えたいというニーズがあると思うんです。だから、そんな時にページデザインとして完成されたものをデザイナーが作るのではなくて、その「テンプレート」「箱」をデザイナーが提供して、あとは個人で更新をするようになるのではいでしょうか。そうするとデザイナーの役割も変わってきますよね。
――Flashや、映像はどうなると思いますか?
渡邊●それももちろん進化していくと思います。動画が上げられるYOU TUBEのようなサイトも普及していくでしょうし。それらとブログがうまく機能していくと面白いですよね。WEB 2.0ってよく言われていますけど、個人で情報や映像を上げることが容易にできるようになってきたら、デザイナーの役割も状況にあわせて変化していきますよね。
――「ZOZOTOWN」の今後のデザインは?
渡邊●Flashや動画、音楽といった、いろいろなことが自由にできるとは思うのですが、今後はより商品の情報をわかりやすいようにしていきたいと思っています。
例えば、買い物画面でも、商品が360度いろいろな角度から見ることができたり、自分の洋服サイズにあわせて商品がセレクトできたり、よりパーソナライズされた自分専用の「ZOZOTOWN」になっていけばいいなと思います。買い物についても、ほんとにコンシェルジュがつくような感じになればいいと思うんですね。動画とかFlashや音楽などをうまく使えばそれもきっと可能だと思うんです。
もちろんエンターテイメント性も重要だとは思います。実際、「ZOZOTOWN」は夜のある時間になると流れ星が流れたりとか、そういったエンターテイメント的なこともこっそりとやっているのですが、エンターテイメントのためだけに映像や音を使わなくてもいいのじゃないかと思うんです。そうじゃない使い方というのも当然あると思う。そういう部分で、映像、音などを効果的に、新しい使い方をしていきたいですね。
「Webプロデューサー列伝」第2回 前原正宏さん、渡邊 順さんのインタビューは今回で終了です。
(取材/文:服部全宏(GO PUBLIC) 写真:谷本 夏)
[プロフィール] 前原正宏(まえはら・まさひろ) ●株式会社スタートトゥデイ マーケティング本部 ディレクター 渡邊 順(わたなべ・じゅん) ●株式会社スタートトゥデイ 創造開発本部 デザイン部 ディレクター |