
音楽を中心に据えて、制作スタッフたちとイメージを共有する制作スタイルは森本氏ならではのもの。そのわけに迫るとともに、森本氏にとっての「アートディレクションの面白み」について聞く。キーワードは「人と人とをつなぐコミュニケーション」。
第3話 音楽でイメージを共有する
人に喜んでもらえるのが嬉しい。
それが私の原動力。
??多くの人たちを巻き込みライブで作り上げるには(第二話参照)、制作スタッフとのイメージ共有が重要になると思います。そのために何か工夫されていることはありますか?
森本●まず作るものの内容や空気感に合う音楽を選びます。それをテーマソングに定めて、聞きながら作業するんです。その曲は制作スタッフにも必ず聞いてもらっています。会議で音楽を流しながら「こういう音楽の気分で作っています」と説明することもあります。発泡酒『8月のキリン』を手がけた際は、BE THE VOICEというアーティストにイメージを伝えて音楽を作ってもらいました。そのときも、企画から撮影、デザイン、仕上げ、入稿まで、常に曲を聞いてイメージが統一されているか確認しながら作業を進めました。その曲はCMソングとしても使っています。
??発泡酒『8月のキリン』は、パッケージ、ポスター、CM、展覧会、音楽、そして『8月のキリンノート』という恋愛小説へと発展しましたが、クライアントからのオーダーはどういった内容だったのですか?
森本●最初はパッケージデザインだけの依頼でした。そのとき決まっていたことは「夏限定の発泡酒でターゲットは女性」ということだけ。それを聞いて「パッケージの中でキリンの聖獣が気持ち良さそうに散歩をしているようなものを作りたい」と思ったのです。そういったイメージをスタッフと共有しながらアイデアを出しあっていくうちに、「ポスターはワークショップで作ったらいいかも」とか、「展覧会で8月の散歩という空間を作ろう」とか、「世界観を小説にしたら素敵だね」と盛り上がっていったんです。
??それをクライアントに提案されたのですか?
森本●そうです。この仕事に限らず、まわりの人たちからは「森本はいつも楽しそうな仕事をしている」とか「仕事がたくさんあっていいね」と言われますが、決して誰かが与えてくれるわけじゃないんです。その多くは、ひとつひとつのオーダーに真剣に向き合った過程で思いついたこと。出会いの
中で、クライアントに対して「これもあったら楽しい」「こんな風になったらいいね」と提案して実現させているんです。そして作ることが決まったら制作現場を仕切っていくのも私の仕事。アートディレクターは舞台監督のようなポジションだと思っています。
??森本さんにとって、アートディレクションの面白みは何でしょうか。
森本●私は「人と人をつなぐコミュニケーション」を生み出すことが大好きなんです。たとえば、CDジャケットや装丁の仕事でも、外側のデザインだけを考えるのではなく、手に取った人たちがどういう風に触って、どこに面白みを感じて、どんな風に驚くかなどをイメージする。それが楽しいのです。
実際のところ、アートディレクターの仕事は、ポスターやパッケージなどを作ることだけではありません。どの制作スタッフよりも、長く商品と向き合うのがこの仕事。クライアントから商品についての説明を受けて企画を立てる、そして完成後には売り上げの推移も気になりますし、次の展開に向けたアプローチ方法もすぐに考えます。生み出してから成長を見届けていくという点では、子育てにも似ていますよね。
??同時に多くの仕事を手がけていても、一つひとつていねいに仕事をされているように感じます。その原動力はなんですか?
森本●愛情が源です。私は人と人を繋ぐことだけではなくて、人自体も大好きなんです。とにかく人に喜んでもらえるのが嬉しい。学生時代から演劇部の裏方だったのですが、仲間がステージでスポットライトを浴びて拍手されている姿を見るのも嬉しかった。それは広告制作でも同じ。商品の裏側でCMやポスターを作って、それによって商品が世の中で注目されて売れるとやっぱり嬉しいんです。だからちゃんと見届けたいんですよね。
(取材・文:山下薫 写真:谷本 夏)
次週、第4話は「気持ちのいいメッセージを届ける仕事」についてうかがいます。こうご期待。
森本●まず作るものの内容や空気感に合う音楽を選びます。それをテーマソングに定めて、聞きながら作業するんです。その曲は制作スタッフにも必ず聞いてもらっています。会議で音楽を流しながら「こういう音楽の気分で作っています」と説明することもあります。発泡酒『8月のキリン』を手がけた際は、BE THE VOICEというアーティストにイメージを伝えて音楽を作ってもらいました。そのときも、企画から撮影、デザイン、仕上げ、入稿まで、常に曲を聞いてイメージが統一されているか確認しながら作業を進めました。その曲はCMソングとしても使っています。
??発泡酒『8月のキリン』は、パッケージ、ポスター、CM、展覧会、音楽、そして『8月のキリンノート』という恋愛小説へと発展しましたが、クライアントからのオーダーはどういった内容だったのですか?森本●最初はパッケージデザインだけの依頼でした。そのとき決まっていたことは「夏限定の発泡酒でターゲットは女性」ということだけ。それを聞いて「パッケージの中でキリンの聖獣が気持ち良さそうに散歩をしているようなものを作りたい」と思ったのです。そういったイメージをスタッフと共有しながらアイデアを出しあっていくうちに、「ポスターはワークショップで作ったらいいかも」とか、「展覧会で8月の散歩という空間を作ろう」とか、「世界観を小説にしたら素敵だね」と盛り上がっていったんです。
??それをクライアントに提案されたのですか?森本●そうです。この仕事に限らず、まわりの人たちからは「森本はいつも楽しそうな仕事をしている」とか「仕事がたくさんあっていいね」と言われますが、決して誰かが与えてくれるわけじゃないんです。その多くは、ひとつひとつのオーダーに真剣に向き合った過程で思いついたこと。出会いの
中で、クライアントに対して「これもあったら楽しい」「こんな風になったらいいね」と提案して実現させているんです。そして作ることが決まったら制作現場を仕切っていくのも私の仕事。アートディレクターは舞台監督のようなポジションだと思っています。??森本さんにとって、アートディレクションの面白みは何でしょうか。
森本●私は「人と人をつなぐコミュニケーション」を生み出すことが大好きなんです。たとえば、CDジャケットや装丁の仕事でも、外側のデザインだけを考えるのではなく、手に取った人たちがどういう風に触って、どこに面白みを感じて、どんな風に驚くかなどをイメージする。それが楽しいのです。
実際のところ、アートディレクターの仕事は、ポスターやパッケージなどを作ることだけではありません。どの制作スタッフよりも、長く商品と向き合うのがこの仕事。クライアントから商品についての説明を受けて企画を立てる、そして完成後には売り上げの推移も気になりますし、次の展開に向けたアプローチ方法もすぐに考えます。生み出してから成長を見届けていくという点では、子育てにも似ていますよね。
??同時に多くの仕事を手がけていても、一つひとつていねいに仕事をされているように感じます。その原動力はなんですか?森本●愛情が源です。私は人と人を繋ぐことだけではなくて、人自体も大好きなんです。とにかく人に喜んでもらえるのが嬉しい。学生時代から演劇部の裏方だったのですが、仲間がステージでスポットライトを浴びて拍手されている姿を見るのも嬉しかった。それは広告制作でも同じ。商品の裏側でCMやポスターを作って、それによって商品が世の中で注目されて売れるとやっぱり嬉しいんです。だからちゃんと見届けたいんですよね。
(取材・文:山下薫 写真:谷本 夏)
次週、第4話は「気持ちのいいメッセージを届ける仕事」についてうかがいます。こうご期待。
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[プロフィール] も りもと・ちえ●1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業。1999年博報堂入社。2005年から博報堂クリエイティブ・ヴォックスに所属。主な仕事にMr. ChildrenやSalyuのアートワーク、日産「NOTE」、三陽商会「AMACA」、キリンビール「8月のキリン」、東京大学文学部「古典を読む」 のアートディレクション、協和発酵やワールド通商「FRANK MULLER」の映像演出、AP bank活動、ホンマタカシ写真集「アムール翠れん」の装丁、作品集に「8月のキリンノート」、「futo ?Kiyokawa Asami + Takimoto Mikiya + Morimoto Chie」、「GIONGO GITAIGO J"SHO」、「HAPPY NEWS」などがある。N.Y. ADC賞、ONE SHOW、東京ADC賞、JAGDA新人賞をはじめに受賞歴多数。 |




