
最終話では、森本氏の近作二点を紹介する。一点目は“次元の異なる世界”を融合させた坂本美雨のプロモーションビデオ、二点目はコスモスイニシアの社名変更にともなうCM。制作物を問わず、コミュニケーションを念頭に置いた森本氏の制作スタイルに迫る。
第4話 気持ちのいいメッセージを運ぶ
何をデザインしてもアプローチは同じ。
単に格好良いだけのものを作ることはない。
??森本さんは広告以外のものも多く手がけられていますが、広告と広告以外のものとではデザインの考え方に違いはあるのでしょうか。
森本●基本的には一緒です。私はどんな仕事でも「何となく好き」とか「格好良いから」といった主観だけでデザインすることはありませんので。音楽ものを例にするなら、音楽自体がメッセージを持っていますから、アーティストが発信しようとしていることを、ビジュアライズすることが仕事だと思っています。最近手がけた坂本美雨さんの『ネバーエンディングストーリー』のプロモーションビデオもそのひとつです。
??その作品はどういったプロセスを経て制作されたのですか?
森本●まず坂本美雨さん本人にお会いしました。そして「どういった気持ちで歌っているのか」、そして「どんな風に聞いてほしいのか」など、とにかくたくさんの話をしました。その過程で「出会いは永遠に繰り返される」というテーマが見えてきたんです。アルバムタイトルでもある「Harmonious」(ハーモニアス)は「調和」という意味なのですが、そのキーワードとともに美雨さんが話してくれた抽象的なイメージに対して、「じゃあ次元の異なる二つのストーリーを交錯させよう」「永遠に交わらない何かを描こう」などと、二人で内容を煮詰めていきました。
森本●基本的には一緒です。私はどんな仕事でも「何となく好き」とか「格好良いから」といった主観だけでデザインすることはありませんので。音楽ものを例にするなら、音楽自体がメッセージを持っていますから、アーティストが発信しようとしていることを、ビジュアライズすることが仕事だと思っています。最近手がけた坂本美雨さんの『ネバーエンディングストーリー』のプロモーションビデオもそのひとつです。
??その作品はどういったプロセスを経て制作されたのですか?
森本●まず坂本美雨さん本人にお会いしました。そして「どういった気持ちで歌っているのか」、そして「どんな風に聞いてほしいのか」など、とにかくたくさんの話をしました。その過程で「出会いは永遠に繰り返される」というテーマが見えてきたんです。アルバムタイトルでもある「Harmonious」(ハーモニアス)は「調和」という意味なのですが、そのキーワードとともに美雨さんが話してくれた抽象的なイメージに対して、「じゃあ次元の異なる二つのストーリーを交錯させよう」「永遠に交わらない何かを描こう」などと、二人で内容を煮詰めていきました。




坂本美雨『ネバーエンディングストーリー』
??具体的にはどういった内容になったのでしょうか。
森本●まず、美雨さんの映像を撮影しました。次に美雨さんの映像を、浅く水を張ったプールに映し出しながら、その中でコンドルズの近藤良平さんにライブで踊っていただきました。男女の感覚や本能といった生理的な部分を調和させる意味も込めて、美雨さんは女性スタッフ中心、近藤さんは男性スタッフ中心で撮影しています。
結果的には、音楽が流れ、映像が映し出され、その中をライブで踊るという、それぞれ異なる次元の内容が融合した素晴らしい仕上がりになりました。音と光によって近藤さんは自由に動き、それによって波紋が起こり、音がビジュアライズされるのです。近藤さんの踊りはノーカットで撮影したので、曲が終わると同時に完成。美雨さんを撮影した女性スタッフも全員現場に来ていたのですが、完成した瞬間の濃厚な時間をみんなで過ごすことができました。身体の動き、空間がそのまま水を通して音になっていく様は素晴らしかったです。
??近作のひとつ、「コスモスイニシア」のCMについても聞かせてください。これはどういったコンセプトで制作されたのですか?
森本●これはリクルートコスモスがコスモスイニシアに社名変更したことを告知するための広告です。15秒のCMですので、企業理念などを細かく伝えるよりも、新しくなった企業の佇まいを見せていこうと考えました。
コスモスイニシアは、住む人が幸せになるためのお手伝いをしていく企業なので、CMの中でもそこに住む人たちの生活を描くことにしました。そこに登場するのが、みんなに「ちょっとした幸せ」を運んでくれるキャラクラター「コスモスイニシアくん」。彼はCMの中でみんなが幸せになれるように、ちょっとだけ良いことをするんです。たとえば、忙しい家事の合間にベランダでくつろぐママに、扇風機で爽やかな風を送ったりとかね(笑)。
森本●まず、美雨さんの映像を撮影しました。次に美雨さんの映像を、浅く水を張ったプールに映し出しながら、その中でコンドルズの近藤良平さんにライブで踊っていただきました。男女の感覚や本能といった生理的な部分を調和させる意味も込めて、美雨さんは女性スタッフ中心、近藤さんは男性スタッフ中心で撮影しています。
結果的には、音楽が流れ、映像が映し出され、その中をライブで踊るという、それぞれ異なる次元の内容が融合した素晴らしい仕上がりになりました。音と光によって近藤さんは自由に動き、それによって波紋が起こり、音がビジュアライズされるのです。近藤さんの踊りはノーカットで撮影したので、曲が終わると同時に完成。美雨さんを撮影した女性スタッフも全員現場に来ていたのですが、完成した瞬間の濃厚な時間をみんなで過ごすことができました。身体の動き、空間がそのまま水を通して音になっていく様は素晴らしかったです。
??近作のひとつ、「コスモスイニシア」のCMについても聞かせてください。これはどういったコンセプトで制作されたのですか?
森本●これはリクルートコスモスがコスモスイニシアに社名変更したことを告知するための広告です。15秒のCMですので、企業理念などを細かく伝えるよりも、新しくなった企業の佇まいを見せていこうと考えました。
コスモスイニシアは、住む人が幸せになるためのお手伝いをしていく企業なので、CMの中でもそこに住む人たちの生活を描くことにしました。そこに登場するのが、みんなに「ちょっとした幸せ」を運んでくれるキャラクラター「コスモスイニシアくん」。彼はCMの中でみんなが幸せになれるように、ちょっとだけ良いことをするんです。たとえば、忙しい家事の合間にベランダでくつろぐママに、扇風機で爽やかな風を送ったりとかね(笑)。
住む人を少しだけ幸せにしてくれるキャラクター「コスモスイニシアくん」
??企業が訴求したいことを、わかりやすく表現するために大切にしていることは何でしょうか。
森本●アートディレクターの仕事は、クライアントが消費者に宛てたメッセージを受け渡すこと。消費者の気持ちを考えて、メッセージ内容を多少アレンジすることもあれば、手紙だけではなく景色のスケッチを加えてみたり、本と一緒に渡したりと、そのつど「受け渡し方」を真剣に考えていくのです。興味のない人から一方的に「私はあなたのことが好きだからわかってください」と言われるとちょっと嫌なものですよね? ちゃんとアートディレクションされていない広告はそれと同じ。受け手の気持ちを考えて、人と人とをつなぐことが大切です。少しでも晴れるものが作れたらいいな、と思っています。
(取材・文:山下薫 写真:谷本 夏)
「このアートディレクターに聞く」第4回・森本千絵さんのインタビューは今回で終了です。次回からは高井薫さんのお話を掲載します。
森本●アートディレクターの仕事は、クライアントが消費者に宛てたメッセージを受け渡すこと。消費者の気持ちを考えて、メッセージ内容を多少アレンジすることもあれば、手紙だけではなく景色のスケッチを加えてみたり、本と一緒に渡したりと、そのつど「受け渡し方」を真剣に考えていくのです。興味のない人から一方的に「私はあなたのことが好きだからわかってください」と言われるとちょっと嫌なものですよね? ちゃんとアートディレクションされていない広告はそれと同じ。受け手の気持ちを考えて、人と人とをつなぐことが大切です。少しでも晴れるものが作れたらいいな、と思っています。
(取材・文:山下薫 写真:谷本 夏)
「このアートディレクターに聞く」第4回・森本千絵さんのインタビューは今回で終了です。次回からは高井薫さんのお話を掲載します。
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[プロフィール] も りもと・ちえ●1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業。1999年博報堂入社。2005年から博報堂クリエイティブ・ヴォックスに所属。主な仕事にMr. ChildrenやSalyuのアートワーク、日産「NOTE」、三陽商会「AMACA」、キリンビール「8月のキリン」、東京大学文学部「古典を読む」 のアートディレクション、協和発酵やワールド通商「FRANK MULLER」の映像演出、AP bank活動、ホンマタカシ写真集「アムール翠れん」の装丁、作品集に「8月のキリンノート」、「futo ?Kiyokawa Asami + Takimoto Mikiya + Morimoto Chie」、「GIONGO GITAIGO J"SHO」、「HAPPY NEWS」などがある。N.Y. ADC賞、ONE SHOW、東京ADC賞、JAGDA新人賞をはじめに受賞歴多数。 |




