第1話 Webの世界はまだまだ未成熟 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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インターネット創成期からWebサイトの構築に関わり、現在“コミュニケーション・プロデュース”というまったく新しい視点から、メディアとしてのWebの可能性を追求している株式会社キッズプレートの茂出木謙太郎氏。 “Web制作”という既成概念にとらわれない独自のスタンスと、Webメディアの今後の展望について話をうかがった。

第1話 Webの世界はまだまだ未成熟




??茂出木さんの現在のご活動について教えて下さい。

茂出木●「キッズプレート」という会社を今年の3月に立ち上げて、Webサイトの構築をメインに手がけています。これまでWeb関連の会社というと、たとえば “Web制作会社” という呼び方であれば、単にWebサイトの制作のみを手がけるケースばかりだったと思いますが、うちの場合はよりプロデュース、ディレクション、企画といった部分を意識しています。

事業内容をひとことで言う場合は、“コミュニケーション・プロデュース”という言い方をしていますね。もちろんWebサイトを中心に考えてはいるのですが、お客さんとクライアントがコミュニケーションをとる際に必要な要素全般を提案していく、というスタンスです。

というのは、現状では大手でもない限りweb制作会社はサイトの構築と運営、印刷会社というと印刷物の制作のみ、広告代理店というと広告基軸の制作のみ、というようにそれぞれの会社がそれぞれの専門分野に特化していて、コミュニケーション全体を統括できるスタンスの視点というものがなかったと思うんです。そこで、それぞれのいいところを引き出して、そのプロジェクトに見合ったかたちで組み合わせていく、ということを実践しようとしています。




??Webの世界に足を踏み入れてから考えてきたことを反映して、現在のスタンスがあるのだと思いますが、そこに至るまでの経緯について教えて下さい。

茂出木●Web業界に関わりはじめて、もう10年以上経ちますから、長い話になりますが(笑)、僕はそもそもインターネット雑誌とかの創刊時に「ああ、こういう世界があるんだ!」と思って飛びついた人間なんです。雑誌付録のCD-ROMに入っていたネットスケープver.1.0をインストールしたところから話が始まるわけですが……。

僕は最初おもちゃ会社のトミー(現・株式会社タカラトミー)でパッケージや取扱説明書のデザインをしていました。それから今のUSEN社長の宇野さんが社長を務めていた「インテリジェンス」という人材派遣会社に移り、広告の制作を担当しました。当時アルバイトに来ていたのが株式会社サイバーエージェント社長の藤田くんでしたね。その時は、まさか彼らがWebに本気で参入していくことになるとは思っていなかったから(笑)、「Webに関わる仕事をしたい」ということで、すぐにIBMに移ってしまったんです。

その当時、IBMは「e-ビジネス」の名の下に、レガシーのデータベースを機軸にネットサービスに転換していこう、としていましたから、ちょうどうまくそこで大手のWebサイト構築の仕事に携わることができた。それから広告代理店を経て、アイベックス・アンド・リムズに移り、プロモーション軸でのWebサイトを手がけました。

その頃は肩書きとしては“ディレクター”と言っていたんですが、その時に感じていたことが、「金銭管理と行程管理の細かい部分にはタッチしないほうが、自分としてはサイト全体をよりよくする方向に力を注ぐことができる」ということだったんです。そこで、アイベックスがデジタルガレージの子会社になったタイミングで、独立を決意して、いくつかの会社を立ち上げて、そしてそれを今年に入ってから一本化した、というかたちになります。とにかく、Webの世界を知ったときは、「こんなに面白い世界があるのか!」という驚きと、とてつもない可能性を感じた、これが今に至る大きなきっかけですね。

??その時の決意が、まさに転機になったということですね。

茂出木●そうですね。ただ、今感じていることとして言えるのは、Web業界はいまだに混沌としているということです。20歳の若さでプロデューサーを名乗って仕事をしている人もいれば、30代後半でデザイナーとして自宅で1人で仕事をしている人、一方でWebクリエイターとして大企業を率いている人もいる。確かに自由ではありますが、対企業で考えると、あまりに無秩序だと言えるのではないでしょうか。また、今のWeb業界においては、Web制作の専門知識以外のことに対する知識が多く求められる、ということも感じています。パソコンをいじっているだけで偉かった時代はすでに終わっている、ということですね。



??でも、Web業界が成熟を迎えるのは、そんなに先のことではないような気がします。

茂出木●そうですね、そう遠くはないでしょう。そしてその時には、“Webに求められるもの”の本質が問われてくるのでは、と思っています。今はまだ、ネットの特異性に合わせてモノを作っていくことについてのノウハウが業界全体に浸透・蓄積されていない状況です。より具体的に言うと、Web業界は個人的なノウハウと偶然で成り立っている。ようするに個人が作ったとても面白いブログがあるとして、でも今のところ、その人が立ち上げるブログがどれも面白い、という状態にはなっていない。コンテンツで考えると、多くが一発屋の状態なんです。もしかするとエッセイストと呼ばれる人たちのようなプロフェッショナルが今よりももっとブログの世界に入ってきて、よりブログに特化したエッセイを書き始めたら、そういう人の方が安定して強いのではないか、ということが言えると思います。




茂出木さんがプロデュースしている「マコロン!」のサイト


僕が運営している「Macoron!」というコミュニティサイトでも、スポンサー企業がブログを書いていて、実際に読んでみるとそれなりに面白い。このサイトのユーザーであるママたちの価値観に沿って、きちんと書かれているのかということについて常に試行錯誤している。その部分を手がけていく立場の人はいったい誰なのか、ということを考えると、デザイナーでも、ライターでも、インフォメーション・アーキテクトでもない。そういう状況を踏まえたうえで、コミュニケーションを作っていく、ということにスポットを当てていきたい、と思っています。


(取材・文:深沢慶太  写真:谷本 夏  編集:蜂賀 亨)


[プロフィール]

茂出木謙太郎

株式会社キッズプレート

代表取締役/プロデューサー


Webサイト構築に携わり10年。 JPPプロモーションアワード2003銀賞受賞。OCNデザインアワード2004審査員。リクルートクリエイティブグランプリ審査員
著書『Webデザイン-コミュニケーションデザインの実践-(共著)』(CG-ARTS協会発行)、監修に『Webサイトユーザビリティハンドブック』『XHTML時代のWebデザインバイブル』(以上オーム社刊)ほか Web creators誌には創刊当時からの執筆協力を行う。CG-ARTS協会会員


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