「iPhone」「Apple Watch」成功の先に、先駆者アップルが思い描く未来 ― ARデバイスの可能性 ―

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「iPhone」「Apple Watch」成功の先に、先駆者アップルが思い描く未来 ― ARデバイスの可能性 ―


2017年11月6日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)
いよいよiPhone Xが、一般ユーザーの手にも渡る時期となった。筆者も予約品の到着を心待ちにしているが、意外(?)なことに、いまLTEに対応したApple Watch Series 3が一般消費者の興味を大きく集めているようだ。これは、アップルとしては予想外の展開なのだろうか、それとも思惑通りだったのだろうか。今回は、近年開発が進んでいるアップルの主力商品をキーに、ティム・クックが思い描く「アップルの未来」を考察してみたい。

▷Apple Watch Series 3 好評の先に…

先ごろも、調査企業GBHインサイツのデータとして、フォーブス誌が新型Apple Watchの購入者の7割が新規ユーザーであり、購入に関心を示す消費者の8割がLTEモデルを検討していることを報じた。これを見る限り、アップルは初代iPhoneのときと同様に、電話機能をフックにして新たな情報機器を市場に認知させたと考えて良いだろう。

実際にApple Watchを使って通話するかどうかが問題ではないことは、初代iPhoneも通話以外の用途がメインになっていったことからも推測できる。しかし、アップルがApple Watch Series 3をアピールする上で、スペシャルイベントでの発表時にもCMでも通話機能を前面に押し出したのは、それがウェアラブルデバイスを使ったことのない人々にとって、最もわかりやすいポイントと言えるからだ。

初代iPhoneのときにも、実際にはインターネットコミュニケーションデバイスでありながら、「電話を再発明」というキャッチフレーズを使うことで、消費者に「身近なアイテムが生まれ変わった」という印象を与えることに成功している。Apple Watch Series 3の場合も、「ウェアラブルデバイスで何ができるの?」という疑問を抱く人々に対して、(専門家から見ればベタな表現だとしても)「スマートフォンを持ち歩かなくても通話ができる」という点を一番に持ってきた。

この「電話がさらに進化して腕に付いた」という解りやすいフックによって新デバイスに興味を持たせることが重要であり、他のアプリやフィットネス、ヘルスケア関連の情報は後から自然と収集するようになると考えたのだ。

Apple Watchの累計販売台数は2015年の発売以来約3000万台といわれ、四半期ごとに5000万台は売り上げるiPhoneと比べればまだパイは小さい。だが、この数字は、いわゆるアーリーアダプターが中心となった購買層によるものであり、Series 3がそれ以外の人々の目をApple Watchに向けさせることに成功した意義は想像以上に大きい。アップルは今後ますますApple Watch関連の開発に力を入れ、iPhoneに続く主力製品へと育てていくことだろう。


▷理想のコンビはApple Watch+ARグラス?

さて、アップルCEOのティム・クックは、「ARが現在のWebサイトと同じように重要な存在になる」としながらも「(自分たちが満足できるほどの)高品位なARを実現できる(ARグラスの)テクノロジーは、存在していない」とヴォーグ誌のインタビューで語っている。

短期的に見れば、アップルはiPhone本体のスクリーンを中心に、サードパーティ製のスマートフォン装着型ゴーグルアクセサリを利用してARの普及を図っていくだろうが、本当に自然な形で、目線の先の現実が拡張している感覚をユーザーに与えるには不完全といわざるをえない。また、ARゴーグル自体に全処理能力を持たせて単体で利用する手法についても、重量や装着時のスタイルの点で長時間に渡る使用や(今後、拡大が見込まれる)屋外での利用には適さない。

一方で、ティム・クックとジョナサン・アイブは、近頃、「スマートフォンの使いすぎは良くない」旨の発言をするようになっているが、今のままiPhone(とiPad)上でARを推進していくならば、その意見と相違して利用頻度はますます高まってしまうだろう。

そう考えると、アップルが目指す将来的なAR環境の方向性としては、普及が進むApple Watchの先にあるモデルと、軽量で、センサーと映像関連の処理系のみを内蔵するアップル流のARグラスを組み合わせた、分散型のウェアラブルデバイスシステムとなる可能性もありえそうだ。近視や遠視でなくてもグラスをかけるかという問題はあるが、腕時計を着ける習慣のない人でもApple Watchを使うようになりつつあるのと同様、機能的な裏付けがあれば、さほど障壁にはならないようにも思う。

ともあれ、飽和しつつあるスマートフォンマーケットに比べて、依然、十分な拡大の余地のあるスマートウォッチ市場で、アップルが確実な足がかりを得て普及の弾みをつけ始めたことは、来年以降の同社の動きにも大きな影響をもたらすに違いない。

[筆者プロフィール]
大谷 和利(おおたに かずとし) ●テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。

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