「Googleの焦りが生んだ新サービス、Google Buzz──前編」



「Googleの焦りが生んだ新サービス、Google Buzz──前編」

2010年2月22日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

Googleのソーシャルメディア戦略

Googleが2010年2月9日に発表した「Google Buzz」は、彼らのWebメールである「Gmail」に統合されたSNSだ。

Google Buzzは“文字制限がなく、さらにマルチメディアに対応するTwitter”といっていい。いや、むしろTwitterよりは“オープンなFacebook”というべきかもしれない。というよりも、Googleが放ったTwitterおよびFacebook対抗策だろう。




Googleバズを紹介するページ。動画による説明も視聴できる
http://www.google.com/buzz?hl=ja


Twitterが成功した理由が、140文字しか書くことができないという一見不自由な利用上の制約が生んだ簡便さと気楽さに依るところが大きく、画像や動画などを自身では扱えないこともかえってそのシンプルさを強調していることを考えると、Google Buzzはその高機能が逆にあだになりそうな感じもする。

Google Buzzが優位なのはGmail利用者には設定が不要という点だが、昨今のWebアプリケーションサービスのほとんどはGmailやHotmailの連絡先をインポートすることができるから、それほど大きなアドバンテージとは言えないかもしれない。


インターネットの大きさを把握できなくなったGoogle

Web2.0という現象が明らかになった2006年当時、世界のWebサイトはおおよそ100億サイトくらいあったと思われる。1サイトあたりのデータ量をざっと5MB(メガバイト)と仮定すると、Web全体で50,000TB(テラバイト)。1TBは約1,000GBほどのデータが保持されていることになる。当時のGoogleは、Webの大きさを明確に把握し、しかもそれを自社サーバーの中にほぼ収めていた。

しかし、ソーシャルメディアがこれだけ爆発的に普及した2010年では、GoogleでさえもWeb全体の大きさを把握することはかなわぬ夢となったと言っていいだろう。

Googleの創業者であるラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンは、スタンフォード大学の博士号取得コース在学中に論文執筆のための研究の一環としてGoogleをはじめたが、そのときに「1週間でWeb全体をダウンロードする」と話していたという。ダウンロードする、つまり検索エンジンのインデックスにすべてを収めるための所要時間を算出していたわけだ。

2008年、Googleは「まだWeb上にアップロードされていない、世界中の情報(たとえば書籍、一部の音楽、地図、人間の思考など)の総量を、数百万TBと見積もっている」と言っていた。同社のシュミットCEOは、「200年でリアル世界からすべての情報をWeb上にアップロードし、それをまたGoogleのサーバーにダウンロード(つまり検索対象に)しようと考えている」とコメントしていた。

しかし、2010年のGoogleは、その考えを捨てつつある。ソーシャルメディアによって、Webの膨張は彼ら一社による努力ではとても追いつかなくなったからである。


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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