「Googleの焦りが生んだ新サービス、Google Buzz──後編」



「Googleの焦りが生んだ新サービス、Google Buzz──後編」

2010年3月1日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

Googleは自力でのWebインデックス化を諦めた?

Googleのエリック・シュミットCEOは2005年10月に、「全世界の情報をインデックス化し、これを検索可能にするためには300年かかる可能性がある」との予測を示している。当時、彼はWeb全体の34%をインデックス化できているという自信を示していた。

「2008年には200年」というコメントも出していたから、それなりの進捗があるという思いがあったのだろう。もちろんどっちにしても相当の時間がかかるわけで、そもそも無理かもしれないよ、という意味を言外に込めていたのかもしれない。しかし、それでも期間目標を出せること自体は、やはりWeb全体の大きさを把握していなければできない相談だ。

しかし、2010年になり、Googleは自力でのWeb全体をインデックス化するという野望を完全に諦めたようだ。ネットユーザーがあるWebサイトを閲覧しようとするときに取る行動は主に3つある。「オフラインから得たURL(あるいはQRコード経由でもよい)を直接ブラウザに入力すること」が1つ。ブラウザ上のブックマークもこの行動に入れていい。次は「検索によるサイトへの送客」であり、3番目が「ソーシャルメディアからのサイト送客」となっている。



既にGoogleの送客量を超えたと報告のあるFacebook
http://www.facebook.com/


このうち、Facebookは既にGoogleの送客量を超えたとの報告があり、しかもFacebookの中身をGoogleは検索することができない。Twitterのインデックス化は大金を出して実現できたものの、Facebookとの連携がなされない限り、いつまでたってもGoogleの野望は果たせない、というわけだ。


Google Buzzの狙いはそれ自体の成功ではなく
Twitterの弱体化か

対Facebookの戦略については置いて、Twitterに代表されるリアルタイムかつオープンなソーシャルメディアについては、Googleは2つの施策をとる。1つは上述のようにお金を出して直接Twitterなり他のソーシャルメディアなりのデータファイルを直接インデックスさせてもらうこと。もう1つが自前のソーシャルメディアの提供、すなわちGoogle Buzzだ。

Googleからすれば、正直、Google Buzzがものすごく大きな成長をしたり、おカネにならなくてもいい、徐々にTwitterの勢力を弱めることができればいいと考えているのかもしれない。GoogleドキュメントやChrome OS自体がすぐにマイクロソフトを倒せなくてもよくて、徐々に彼らの勢力を弱めることができればいいと考えるのと同じだ。相対的に敵の強みを奪えれば、それは自分たちにとってプラスだからだ。

そもそもGoogleはソーシャルメディア向きの会社ではない。体質的に研究家的オタクであってもコミュニケーションオタクではない。むしろ自分1人で数学的に割り切れる世界にどっぷりとつかるタイプの人間が多い企業である。だからソーシャルメディアを送出することは彼らには非常に難しい。

従って、GoogleはGoogle Buzzで大成功できるとは考えていないと思われる。このサービスはあくまでTwitterの力を弱めるための戦略的サービスである。Appleがソーシャルメディアを使わずにソーシャルメディアに愛される企業であるとすれば、Googleはソーシャルメディアを触診しつつ、ソーシャルメディアを理解しようとする企業といえるだろう。


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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