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「『nakata.net』10周年で考える、著名人OWNメディアとブランディング」 - MdN Design Interactive

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「『nakata.net』10周年で考える、
著名人OWNメディアとブランディング」

2008年5月23日

TEXT:加藤智明(つくねパパ)
(株式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー)



元サッカー日本代表のヒデこと中田英寿氏の公式サイト「nakata.net」が、2008年5月21日に10周年を迎えました。この10周年を機に、「nakata.net」では大幅なデザインリニューアルが施されたのとともに、イベントなどさまざまなプロジェクトが企画されているようです。

「nakata.net」が開設された1998年5月21日は、フランスW杯の直前です。ドイツW杯の前の日韓共催W杯のその前のW杯ってことで、「ジョホールバルの歓喜」を思い起こされる方も多いのではないでしょうか。もちろんそのころは、ブログやSNSはまだ存在していない時代でした。そんな時代に、ヒデの「第3者を介さずに、自ら情報を発信したい。ファンとストレートにコミュニケーションをはかりたい」という思いから、この「nakata.net」は産声をあげたわけです。

◆nakata.net -- 中田英寿オフィシャルホームページ
http://nakata.net/
nakata.net -- 中田英寿オフィシャルホームページ


「nakata.net」は、現役時代からヒデの声が最初に届くメディアとして大きく成長してきました。1998年のペルージャへの移籍発表をはじめ、数々の移籍発表を行ったほか、2006年7月3日の引退発表もこのサイトで行われました。

ネットレイティングスによると、ヒデが引退を発表した2006年7月3日~9日の1週間だけで121万5,000人が「nakata.net」を訪れたとのことです。なお、引退を表明する以前でも、その利用者数は6月19日~25日が44万5,000人、6月26日~7月2日が24万5,000人ということですから、月間ユニークユーザー数100万超えのメガメディアと位置づけることができます。日本の名だたる企業サイトでもこれほどのOWNメディア力を有しているところは少ないといえましょう。


著名人のOWNメディアでのブランディングの先駆

今でこそ、自身の公式ブログをもつ著名人は珍しくありませんが、10年前の当時は「サッカーの中田って、自分のホームページがあるんだって……」と私のまわりでも語られたことを記憶しています。また、ヒデの引退発表当時、野球界出身の重鎮解説者がテレビの情報番組で「大物プロスポーツ選手たるもの、やはりきちんと記者会見で引退を発表すべき……云々」といった発言で、ヒデのとった行動に喝が入れられていたことも思い出されます。

当時ヒデが「nakata.net」を拠点にしてとったコミュニケーション行動は、いつも新鮮なもので、見かたを変えれば礼儀知らずとも受け取られてしまうような時代であったわけです。

それが今はどうでしょう。「眞鍋かをりのココだけの話」からはじまった“ブログの女王”の系譜も、しょこたんこと中川翔子さんの「しょこたん☆ぶろぐ」を経て、最近のタレントのロマンスネタは山田優さんにしても、押切もえさんにしても、ご自身の公式ブログが発信源になるといったことが日常化しています。

記者会見を経てのマスコミでの記事化といったものが「公式」チャネルであった時代から、日々のコミュニケーションツールが「公式」の場と化しているわけです。「公式」チャネルが、「ハレ(非日常)」の舞台から「ケ(日常)」のコミュニケーションへと変化してきているともいえましょう。

また、中川翔子さんもリスペクトしているという、松田聖子さんに象徴される80年代のアイドルと、現在のブログの女王たちとでは、そもそもユーザーとの関係性のとり方がまったく違ってきており、それらの構築には、ブログをはじめとしたCGM(消費者生成メディア)が、大きな役割を果たすようになってきていることにも気づかされます。

その庶民性をもウリにする「アイドル」、「お笑い系」などはもとより、「お客さまは神様です」といいながらもその“高嶺の花”性を強調することで価値づくりをしてきた「スター」や「モデル」の間にも、自身のブログ(サイト)によるコミュニケーション・ブランディング活動がどんどん広まってきているともいえましょう。

このように、「nakata.net」から始まったともいえるWebサイトのCGM的利用による著名人の自己ブランディングは、今後もますます一般化・公式化していくことと考えられますが、これは著名人の自己ブランディングに限ったことなのでしょうか?


消費財ブランディングも影響?

従来、一流と称された広告媒体にのせてこそ、あるいは、その広告と連携したFlashなどによるブランドサイトを構築してこそ、そのブランドの「格」を示すことができ、その格へのあこがれ感の記憶こそが購買を誘発させるといった「AIDMA理論」がありました。このAIDMA理論に疑問が持たれる昨今、ハードルを低くした「ケ」のコミュニケーションで獲得できるユーザーとの関係性が、商品の裸の評判情報を誘発し、結果的に販促につながるといった考え方がかなり一般化してきました。

また、発売当初は親会社ブランド(ロゴ)を冠されずにいたコンビニコスメブランドに、最近では、堂々と親会社のブランドロゴが併記されるようになるなど、旧来からのブランドの位置づけや階層のとり方が変化している例もよくみられるようになっています。

CGMを活用したブランドコミュニケーションは、とかく、「マス広告などを展開していない(中小)企業のコスト効率の高いマーケティングコミュニケーション手法」と捉えられてしまう節がありますが、決してそれだけではありません。いまや、リーチの大きいマス媒体での広告表現とも相乗効果を発揮し、なおかつそのクロスメディア効果も管理する「ケ」のコミュニケーションツールとしてブランドサイトのCGM的な使い方が必要になっている時代と考えられるのです。

「nakata.net」はいわゆるブログではありませんので、厳密にはCGMとはいえないのかもしれません。ただし、著名人をブランドと位置づけた場合のOWNメディアでのWebブランディングのパイオニアサイトであることは確かです。

10年ひと昔とはよくいったもの。効率的な媒体づかいの事例として価値が語られるWebブランディングの時代から、ユーザーとブランドとの望ましい・新しい関係性構築のために必須のものと位置づけられるWebブランディングの時代へと、“メガ”OWNメディア「nakata.net」は走り続けていくようです。




加藤智明氏近影

[筆者プロフィール]
かとう・ともあき●株式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー。市場調査会社でのR&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、ペットのミニチュアダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。




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