
「世界の気になるデザイナーたち vol.001
──マーク・ファロー(ロンドン)」
2008年5月29日
TEXT:蜂賀 亨
(クリエイティブディレクター/エディター)
ロンドンには気になるデザイナーがたくさんいる。海外取材の時には会いたい人が多すぎて、いつも時間の調整がとれなくて困ってしまうほどだ。
80年代以降、グラフィックデザインが音楽やファッションとリンクするようになってから、ロンドンだからこその刺激的なグラフィックシーンが形成され、雑誌やレコードジャケットなどを中心に、多くの優秀なアートディレクターやグラフィックデザイナーたちが登場してきた。さっと思いつくだけでもネビル・ブロディ、ピーター・サヴィル、トマト、ザ・デザイナーズ・リパブリックなど、他にもまだまだたくさんいる。
今回は、そんななかからペット・ショップ・ボーイズや、スピリチャルライズドなどのスリーブデザインで有名なマーク・ファローを紹介しよう。
1960年マンチェスター生まれのマークはカレッジを中退後、地元マンチェスターの広告会社で働きながら、伝説のクラブ「ハシェンダ」やファクトリーの仕事をし、その後ロンドンへと移りXLレコーズで働いた後、独立して現在の「ファローデザイン」を設立している。まさにロンドンの音楽カルチャーシーンとリンクしてデザインの仕事をしてきた人物でもある。
あるインタビューで「色が一番大切」と本人が答えているように、マーク・ファローのデザインの特徴はその美しい色づかいだ。しかし、タイポグラフィ、写真のトリミング、レイアウトなど、彼のデザインには決して色だけではない「美しさ」がいつもどこかに存在している。余白スペースの使い方、文字サイズ、文字間など、普通にヘルベチカを使って文字がレイアウトされているだけでも、どこかにマーク・ファローらしさが必ずあるのだ。
実際の薬品パッケージを使った『Ladies And Gentlemen We Are Floating In Space』限定版は有名だろう。ほかにもスピリチュアライズドのベストアルバム『Complete Works』は、白いプラスティックカバーを開けるとCDの盤面に、赤や黄色の線が細く1本入っているだけで、それ以外はすべて真っ白だったり、ペット・ショップ・ボーイズの『BILINGUAL』の黄色がとても美しかったりする。このように、彼がデザインするCDパッケージは、いつもカバーを開ける瞬間、どんなデザインになっているのか期待してしまうし、裏面や側面のレイアウトまでもしみじみと見入ってしまうことが多い。
今回なぜマーク・ファローを選んだかというと、たまたまユニクロで彼がデザインしたTシャツを見かけたからでもある。T-SHIRTというアルファベットがそれぞれきれいな色でレイヤーにデザインされているTシャツは、やはりマーク・ファローらしいデザイン。これは宣伝ではないけれど、ちょっと気になる人はチェックしてみてはどうだろうか。

現在発売中のマーク・ファローデザインによるUTのTシャツ。(左上から)色がきれいなペット・ショップ・ボーイズのアルバム『INTROSPECTIVE』。白い余白にアーティストの写真が小さめというバランスが特徴の『Behavior』。腕の写真と白フチのバランスが美しいスピリチャライズド『Amazing Grace』。ペット・ショップ・ボーイズ『BILINGUAL』。蛍光灯を並べて4という数字を作っている『DISCO Four Remixed by Pet Shop Boys』。ネオン管でタイトル文字を作っている『PET SHOP BOYS MINIMAL』。スピリチュアライズド『The Complete Works Volume Two』は、紙ケースをはずすと真っ白いプラスティックケースになっている

[筆者プロフィール]
はちが・とおる●クリエイティブディレクター/エディター。ピエブックスを経て、クリエイターマガジン『+81』を企画/創刊させて11号まで編集長。その後ガスプロジェクトにあわせて、書籍「GAS BOOK」シリーズ、雑誌『Atmospehre』編集長などを担当。現在はフリーとしてグラフィックデザインを中心に企画/ディレクションなどで活動中。
http://www.hachiga.com/



