第5話 いま、そしてこれからの職人気質 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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第5話 いま、そしてこれからの職人気質

炎上用スキン開発?


──今後「こんなことができたら……」と思うことは?

大谷●Webを始める前は何していたのかと振り返ると、メールもなかったし、でもそれなりに仕事できてましたよね。今後こうしていきたいと考えると、WebはWebで単に便利な機能だと思ってて……。今後そういう気持ちで作っていくと、基本的には画面の中でのグリッドのデザインだったり、細かい部分のデザインが大事なのかな。Flashでスクリプトが絡んで動こうが、Ajaxで便利になろうが、画面の基本的なデザインが重要だ、と。

足立●僕は2.0とか参加型とか、双方向とか……そういうのをあえてしない方向で。コメントもつけてくれなくていいし。

大谷●コメントつけられる機能、任意で選べるようにしてもらいたかった。

足立●つけたくてもつけられないだろう、ぐらいの感覚で。ただし、アクセスログだけはしっかりとりますが(笑)。


大谷秀映(右)と足立裕司氏(左)

対談も終盤、話がくだけてきた大谷氏(右)と足立氏(左)
大谷●そういえば足立さん、炎上のはしり(*1)かもしれないですよね?

足立●あのときはコメント欄もトラックバックも付けてなかったので、いわゆる炎上とはちょっと違うのですが、サーバがダウンしたり、祭りになったり、まとめサイトができたり、かなり大変でしたね。

大谷●そういう意味では、ネットの注意しなくてはならない怖さがある。

足立●だから、ブログのスキンで炎上用を作ろうかな、と。

大谷●ああ、燃えてるやつを(笑)。

足立●炎上したらメラメラ燃えてるスキンに切り替えて、炎上の度合いをコメントの書き込みペースとコメント数から自動的に算出して、炎の大きさで表示するとか(笑)。

大谷●最近のタグクラウド機能(*2)とか、すごく便利になりましたからね。昔は記事を探さなければならなかったけど。

足立●そうそう、クラウド機能のように炎を表示する、そういうブログ検索やMovable Typeのプラグインなんかもあったらいいのに。

大谷●ちょっとダークだけど、作ってくださいよ(笑)。

フォント回帰、そして手作業へ?


──ちなみにオリジナルフォントは、いまも作っているのですか?

足立●僕はフォントのダウンロードページは5年ぐらい更新してないです。でも、アクセス数は相変わらず多い。5年間、何もしてなくても、いまだに「雑誌に掲載・収録していいですか?」と問い合わせがあって。これは一生いけるなって。なんの儲けにもならないけれど。

大谷●僕もいまやってないのですが、フォントDLサイトを復活させようかと思っているんです。ちょっと前、ショッピングサイトを作って売ろうと思ってたんだけど、経験上、買う人はいないとわかってますよね。ネット上で出回っているフォントにお金は払わないから。だったらフリーで全部公開しちゃおうかって。

足立●需要はずっとありますよね。自分の中では完全に終わってて、メンテナンスする気も起きないのに。

大谷●カーニングとかバラバラなのに、5?6年前のものがダウンロードされて使われてるのを見ると懐かしくて(笑)。

足立●たしか、mixiのロゴもそうですよね?

大谷●あのへんを復活させてDLさせようかなって。

足立●いいんじゃないですか。僕も作りかけで配付してないのが結構あるから、それをまとめて出したいなと思っているんです。

──時代が一回転したみたいですね。

大谷●そう。Web1.0に戻ってコツコツと(笑)。

足立●今度フォントのダウンロードページを更新する時は、一生メンテナンスしなくてもいいくらいのクオリティと仕組みで作って、これでおしまいって感じにしたいですね。とどめを差すみたいに……そう思い始めてから、結構時間が経っているのですが。

大谷●足立さんのサイトって、かなり昔からあの形ですよね。ブログのはしりみたいな感じじゃないですか?

足立●一見ブログ風で、内容はただの掲示板なんですけどね(笑)。

大谷●まだ日本で、誰もやってない頃から。

足立●あの頃、アフィリエイトもまだ日本では全然普及していなくて、LinkShare(*3)も日本に進出する前で。でも、どうしてもサイトのデザイン的にはバナーを貼り付けたかったから、アメリカのLinkShareやAmazon.comのアフィリエイトプログラムに加入してバナーを貼ってたんですね。

大谷●誰も知らないときからやるのは大変ですよね。いまでこそ誰でもやってるけど。

足立●みんなやっちゃうと、つまらないんですよね。だから次を探さないと……。

大谷●平均的に誰もができるとつまらない。

足立●ええ。どうもモチベーションが上がらなくて。

大谷●だから最近、僕はアナログに戻ってて。ガスバーナーを買ってきてガラス細工をやったり、組紐をやってみたり、手作業で職人みたいなことをよくやっているんです。やっぱりパソコンばかり見てると、目が悪くなってきて……視力を回復しようと思って。

(と言って携帯の組紐ストラップを見せる)

足立●あ、それ、そうなんですか。すごい!

大谷●先生について教わってるのですが、一本作るのに2時間ぐらいかかって。


足立裕司氏

これが大谷氏お手製の携帯組紐ストラップ(お見事)
──逆に目が疲れません?

大谷●疲れないけれど、時間が経つのが早い。いま、こんなの時間がかかるし大変だしでそれほどやってる人はいないんだけど、絹糸を買ってきて手で組んでいるんです。昔……といっても江戸時代頃でしょうけれど、割とポピュラーだったようで刀や甲冑なんかには必ず使われていたりするので、歴史資料館に行ってそういった一点ものの手工芸品を見るのも目の保養になる。

足立●手を動かすことは、心が落ち着きそうですね。僕はよく、ヤフオクで売れた出品物の梱包作業で気分が上がってくるんですよ(笑)。

大谷●画面を見ずに、手作業だけやるのが楽しい。今後、そういうふうになっていくケースもあるのでは……と思うんですけれど。

足立●ええ。きっと、進化もしすぎるといけないんですよ。

 

 

(*1)2005年3月、足立氏制作のフリーフォントが商業利用されたことに端を発した、著作権問題をめぐるネット騒動。

(*2)ブログにおけるタグ付けを自動集計し、人気、利用度の高いキーワードのタグが大きな文字で表示される機能

(*3)90年代半ばに登場した、米国のアフィリエイト主体のインターネット広告代理店

今回で「Webデザイン 職人気質」は終了です。

(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)



大谷秀映氏

[プロフィール]

おおたに・ひであき●1964年生まれ。Webデザイナー。武蔵野美術短期大学グラフィックデザイン科卒業後、グラフィック&エディトリアルデザイナーを経て、90年代中頃よりWebデザイン、オリジナルフォントデザインを開始。著書に『ヘルベチカの本』がある。現在、株式会社コムストラクト取締役。社員募集中!
http://www.comstruct.org/recruit/

http://fontgraphic.jp/

 



足立裕司氏

あだち・ゆうじ●1969年生まれ。Webデザイナー。愛知県立芸術大学卒業後、インダストリアルデザイナー、プランナーを経て、96年よりWebメディアを中心に活動。97年に開設した個人サイトでオリジナルフォントを数々発表し、Web Design Award'99銅賞とHotwired Japan Awardを受賞。著書に『HTMLデザイン辞典』などがある。http://www.9031.com/


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