第2話 かっこよさと使いやすさの両立
Web2.0の時代に、あえて1.0で?
──Webデザインにおける“かっこよさ”とは、何だと思いますか?
足立●やっぱり面白いインターフェイスとか、技術的なところから攻めるほうがインパクトありますよね。それも相当、難しい。みんな同じようなことをやってますから。
大谷●最近のWeb2.0とか、進み過ぎちゃって、ついていけないこともある(笑)。利用することは多くて、使ってみればかなり便利なのですが……やっぱりWeb1.0世代の僕としては、難しいですよ。
足立●でも、あえてWeb1.0でいくっていうのも、結構イイと思うけど。
大谷●たしかに2.0みたいに、すべてを共有したくないという気分もあったりする。「こういう情報は出したくないな」とか、そうした場合はアナログのほうにいきますよね。
足立●ええ、あえて対話性を作らないで。
大谷●一人で勝手にやらせてくれよ、と。
足立●絶対、参加したくても参加させないという頑固さで(笑)。
「いまはあまりにも進み過ぎちゃって不安になることも」と大谷氏
大谷●環境はそうかもしれないけれど、逆に違う意味のストレスが出てきてますよね。たとえばフォントならば、昔なら職人が木を削って作ったものを活字にして、それを印刷物に利用してきたという長い経緯があるじゃないですか。いまはコンピュータで個人が作れるようになり、あまりにもそれを誰もが使えるようになった。そうした結果、技術が平坦になってしまい、紙に印刷した手触りみたいなものがなくなったわけですね。すべてが小さい画面上に集約されて、玉石混交でよほどクォリティの高いものでない限りは代わり映えしなくて……。
足立●それはありますね。僕もいろんなサイトを見てて思うのは、自分が作ったフォントをダウンロードしてロゴなどとして使ってくれていても、結構カーニングがめちゃくちゃで打ちっ放しのものも少なくない。フォントの制作段階から、そういうケースを想定して作ってあるといいのですが、それでも対応しきれない部分がある。作り手としては複雑な心境になります。
──以前、足立さんがダメ・サイトのリンク集を紹介して、逆にそっちを面白がるということを話していましたが。
足立●ああ、個人的にはそっちのほうが好きですよ(笑)。
大谷●わざと、狙って作ってるんじゃないか……というサイトもあって。
足立●たまに天然もあります。いまだに10年前のHTMLバリバリやってたり。そういうの見ると、うれしくなる(笑)。
インターフェイスの問題意識
──大谷さんが取締役を務めるWeb制作会社「コムストラクト」では企業のサイトを主に手がけていますが、そうしたものを作るときに心がけていることは?
大谷●まず、お客さんのカラーに合わせて作ることを念頭に置いています。いま現在、花のショッピングサイトを作ってる最中なのですが、お客さんがどう売りたいか、どう見せたいか、当然考えて作っていながらも、アナログなところもある。結局、Webが進化してるというのもあるんだけど、そういった部分では話を聞いた上で、かっこいいとか見た目よりも、実用を考えながら作るのが大事。
──技術が進化しすぎて、一般の人がわかりづらくなるよりは、インターフェイスを簡単に?
大谷●要はバランスなんだと思います。日本のサイトも、昔に比べると大分よくなってきていると思いますが、使いやすさで参考になるのは、やはり海外サイトなんです。たとえば「flickr」なんかのインターフェイスはよくできているなと思って。かっこよさと使いやすさが両立しています。その点、日本のWeb2.0系のサイトって、まだかっこよさが追いついてないのかな、と。
足立●ああ、それは同感です。
大谷●万人受けするのも大事なんだけれど、いかんせんデザイン的なセンスに改善の余地がありすぎて。
「対話性を求め過ぎると個の存在感が薄くなる」と足立氏
──どこに理由があると思いますか?
大谷●単に欧文で作っているからなのかな?
足立●うーん……海外のサイトって、ソースもかっこいいんですよ。洗練されてて、見た目もよくて無駄がない。
──ソースの段階で、数学的な美しさを追求するような。
足立●ええ。日本のサイトもリニューアル直後はすごく良いのに、段々グチャグチャに破壊されていくのが多いじゃないですか。最初はきっと一人のデザイナーのコンセプトでまとまっていたのに、いろんな人の手が入っていくうちに崩れていくんだろなって。
──それはどんなメディアも一緒ですよね。
大谷●たしかに。たとえば交通機関の駅などの表示板、最初の段階ではうまく設計してるのに、つぎはぎにやっていくから汚くなっていくのと同じで。
足立●後から、とってつけたような表示が多いですよね。
大谷●そうすると、さっきの企業サイトを作るときに気をつけていること……という質問に戻りますが、単にデザインだけではなくインフォメーション的な誘導が大事なんですね。いくらデザインがかっこよくても、あるべきところにあるべきボタンがないとすべてが台無しになってしまう。インターフェイスの問題意識なんですね。
大谷●単に欧文で作っているからなのかな?
足立●うーん……海外のサイトって、ソースもかっこいいんですよ。洗練されてて、見た目もよくて無駄がない。
──ソースの段階で、数学的な美しさを追求するような。
足立●ええ。日本のサイトもリニューアル直後はすごく良いのに、段々グチャグチャに破壊されていくのが多いじゃないですか。最初はきっと一人のデザイナーのコンセプトでまとまっていたのに、いろんな人の手が入っていくうちに崩れていくんだろなって。
──それはどんなメディアも一緒ですよね。
大谷●たしかに。たとえば交通機関の駅などの表示板、最初の段階ではうまく設計してるのに、つぎはぎにやっていくから汚くなっていくのと同じで。
足立●後から、とってつけたような表示が多いですよね。
大谷●そうすると、さっきの企業サイトを作るときに気をつけていること……という質問に戻りますが、単にデザインだけではなくインフォメーション的な誘導が大事なんですね。いくらデザインがかっこよくても、あるべきところにあるべきボタンがないとすべてが台無しになってしまう。インターフェイスの問題意識なんですね。
次週、第3話は「いかに『パーフェクト』を求めるか」を掲載します。
(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)
[プロフィール] おおたに・ひであき●1964年生まれ。Webデザイナー。武蔵野美術短期大学グラフィックデザイン科卒業後、グラフィック&エディトリアルデザイナーを経て、90年代中頃よりWebデザイン、オリジナルフォントデザインを開始。現在、株式会社コムストラクト取締役。著書に『ヘルベチカの本』がある。 |
あだち・ゆうじ●1969年生まれ。Webデザイナー。愛知県立芸術大学卒業後、インダストリアルデザイナー、プランナーを経て、96年よりWebメディアを中心に活動。97年に開設した個人サイトでオリジナルフォントを数々発表し、Web Design Award'99銅賞とHotwired Japan Awardを受賞。著書に『HTMLデザイン辞典』などがある。http://www.9031.com/ |