第3話 いかに「パーフェクト」を求めるか | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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第3話 いかに「パーフェクト」を求めるか

ユーザー環境の「格差」問題


──やはり以前、足立さんがインタビューで「ポータルサイトのゴシャっと詰まった感が好き」という発言をしていましたね。

足立●ああ、あの当時(1999年頃)は……いまもそうなのですが、その頃は特にブログがない時代でしたよね。個人サイトなのに、ポータルみたいな三段組でビシッとレイアウトがまとまっているサイトって、あんまりなくて。それが好きで自分でもやっていたのですが、いまはみんなそうだから、全然目新しくない。

──そう考えるとYahoo! JAPANとか完成されてますよね。

足立●結局、使いやすさを突き詰めると、ああなってしまう。

大谷●でも、アメリカのYahoo!は日本とは全然違って、Ajaxバリバリじゃないですか。

足立●違いますね。

大谷●日本もそのうち、そうなっていくと思うけれど……その点では、見かけ上は完成していても、まだまだこれから便利になるんだろうなって思う。


大谷秀映氏

「使いやすさだけを追究してもパーフェクトにはならない」と大谷氏
──仮に、どのように?

大谷●たとえば写真サイトの「flickr」はyahoo.comのマップと連動してて、あれは使いやすい。最近、日本のアルプスマップと提携して「flickr」に自動的にリンクが張られるようになったり。yahoo.comのアバウトなマップ以外に詳細なアトラスのマップにつながったりする。あれは便利。そのあたりの部分は日本と全然違う進化をしているような気がします。

足立●日本ではそういう方向、難しいかもしれませんね。

大谷●インターフェイスの格好がどうしても……。

足立●あと日本って、まだブラウザのバージョンを低く設定している企業が多いんですよね。クライアントによっては、FlashでもいまだにVer.7以上で。早く8以上にして欲しいところもあるのですが。

──ユーザー層を考えると、敷き居を低くということですよね。

足立●そうなんですが、その違いをクライアントがわかっているようでわかっていなかったり……。バージョンの数字だけで判断してる部分もある。自分が仕事で作るとき、Flashのバージョンの古いものはバッサリ切っていきたいのですが。

大谷●強制的にダウンロード・ページに誘導しちゃうとか。

足立●そうそう。それでいいんですよね。

クライアントに「内緒」のこと


大谷●それで思い出したけれど、最近、ほとんどブロードバンド回線になってますよね。でも、日本でもそういう回線が引けない地域があるそうなんです。

足立●あるんですよね。山のほうとか、回線が繋がらないそうで。

大谷●いまだにISDNのお客さんがいることも想定しなければならないのは、さすがに困ってしまって。もう、JavaScriptを切るしかないんじゃないか、と……。

足立●そうなるとAmazonで買い物するのも難しいですよね。

──足立さんは、いま手がけている仕事で感じることは?

足立●僕は最近はエンタテインメント系で、全面Flashみたいなサイトが多い。特に映画のサイトとか、派手さが求められるんですね。でも、個人的には地味なほうが好きなんです。シンプルで静的な感じ。グラフィックも無駄な要素が一切ないもの。

大谷●CSSもclearfixハック(*1)を使うというような。

足立●そうそう。Flashバリバリのページでも、基本はXHTMLとCSSで、FlashやCSSをオフにしても見られるような、パーフェクトなものを作る。ただそれはクライアントには内緒……というか特に伝えていないんですけど(笑)。そこのこだわりを話しても、あまり伝わらないだろうし。


足立裕司氏

「こだわりって……伝わりづらいんですよ(笑)」と足立氏
大谷●さっき話した花のショッピングサイトは、内緒にせずにパーフェクトなCSSで作っていると言ってます。検索に引っ掛かりやすかったり、ソースがきれいに出てきたり、わりとそういうのに理解があるクライアントで。でも、普通はないですよね。

足立●ないです。理解が少ないという意味では、作業的にリスクがある。パーフェクトなフォーマットでやろうと思う反面、どこかで矛盾が発生してます。

──仕事として考えると、そういうシステム上の制限は仕方がない?

足立●ですね。むしろクライアントは、XHTMLとかCSSとかバージョンの話とか、そういうことを一切知らないでいてくれたほうが助かる(笑)。

大谷●FirefoxでCSS切ったり、タグの格付けをチェックしたり、そういうのが楽しくて仕方ない。

足立●楽しいですよね。個人的には、CSSハックのマイブームが続いていますよ。

 

 

(*1)「CSSハック」とは、ブラウザ(とくにInternet Explorer)によって異なってしまう表示を、そのブラウザの持つバグを逆手にとって利用することで調整する方法。CSSコーディングの本来の仕様とは反するケースが多いので、裏技的技法とされる。「clearfix」は、ボックス内に画像とテキストを回り込みで表示させた際に、画像がボックスからはみ出る現象を回避する目的のCSSハック。

次週、第4話は「Webデザインの『前提』とは?」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)



大谷秀映氏

[プロフィール]

おおたに・ひであき●1964年生まれ。Webデザイナー。武蔵野美術短期大学グラフィックデザイン科卒業後、グラフィック&エディトリアルデザイナーを経て、90年代中頃よりWebデザイン、オリジナルフォントデザインを開始。現在、株式会社コムストラクト取締役。著書に『ヘルベチカの本』がある。

http://fontgraphic.jp/



足立裕司氏

あだち・ゆうじ●1969年生まれ。Webデザイナー。愛知県立芸術大学卒業後、インダストリアルデザイナー、プランナーを経て、96年よりWebメディアを中心に活動。97年に開設した個人サイトでオリジナルフォントを数々発表し、Web Design Award'99銅賞とHotwired Japan Awardを受賞。著書に『HTMLデザイン辞典』などがある。http://www.9031.com/


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