第2話 フルFlash、そして携帯時代へ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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1996年の誕生から10周年を迎え、いまやデジタルコンテンツ制作になくてはならないソフトウエア=Adobe Flash。紙に絵を描くようにコンピュータ上で気軽に描画、アニメーション表現を可能にさせようと開発されたFlashは、この10年で飛躍的な進化を果たしてマルチメディアの「現在」を形作る。その歴史を見守り、もはや生活のためのツールとして活用を続けるクリエイター・高木氏、そしてMacromedia時代からFlashを担当してきた太田氏に、その軌跡を振り返るとともに今後の展望を語ってもらおう。


第2話 フルFlash、そして携帯時代へ



高木敏光氏(左)と太田禎一氏(右)

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obe Flashが作った表現領域

Adobe Flashが作った表現領域



──世の中の趨勢で、予想外の部分だったことはありますか?

高木●全画面がFlashとか、急にブラウザを占拠するような使い方が増えて……。

太田●それも賛否両論、功罪半ばだったのですが……そういう使い方をされ始めて、当初は異端児だったのに次第に企業のプロモーション・サイトなどでも使われるようになったんですね。というのは、クリエイターの方々が「これスゴイでしょ」と作りながら、段々広まっていった経緯がある。クリエイター主導型で企業も動いていった。そこは予期していなかったことでもありましたね。

高木●フルFlash時代の到来ですね。あと、線がビューンって出てきたり、クロスラインが出たり、字がバラバラっと出たり……

太田●あの動きの表現スタイルは、Flashから始まりましたね。それが映像の世界に影響を与えた。特にタイポグラフィが動くというような動きは、テレビのコマーシャルなどを見ていると非常にFlashっぽいな、と。

高木●そうそう。Flashが作った表現領域ってありますよね。

太田●いまは、みなさんが見なれてきたから当たり前の表現になりましたが、それは確かに大きいと思います。


高木敏光氏

「今後もFlashの表現領域は広がっていくと信じている」と高木氏
高木●Directorはビットマップ指向だから、線画の拡縮があまり得意じゃなかった。だからゲームでもなんでも板つきのものが多かったけれど、Flashになってからそのへんがダイナミックになってきましたね。

太田●デザイナーの方たちも「この手もあるんだ」とわかってきて。当然、新しい表現というものは段々陳腐化していきますが、みんなが持っている武器が増えていくような感覚ですね。Directorっぽい表現だけでなく、ベクターがあり、スムーズでなめらかで、拡大も縮小もして、アルファチャンネルでうっすらと重なったり……という作法が浸透してきて底上げになったと思います。


容量制限があるほうが楽しい



──ネット・アニメなどのクリエイターも増えましたね。

高木●『やわらか戦車』とかもFlashですよね?

太田●そうですね。

高木●あと道は間違ってなかったと思うのは、いま携帯Flashの時代でしょ?

太田●そうですね。一時、ブロードバンドになってから、DirectorでもFlashでもなんでも大きい容量をバンバン使うという時代がありましたよね。それまでのFlash黎明期はいかにダウンサイズできるかが問題だったのに、そのうち誰も気にしなくなった。でも、次は携帯に載せなくてはならなくなると、やはりハードルが高いんですね。容量に制限があるので抑えなくてはならない。


太田禎一氏

Flashの携帯電話における動向は興味深い」と太田氏
高木●初期のShockwaveに似ている。僕は“箱庭”と呼んでるのですが、いかに小さい世界の中に言いたいことを打ち込めるか……それはクリエイションと別の部分だけど、それはそれで楽しいんですよ。

太田●制限があるほうが……

高木●面白い(笑)。だからブロードバンド時代って、僕ら作ってる側は謳ったことがないけれど、ちまたでその言葉が言われ始めた頃、コンテンツとしては陳腐なものがたくさんありましたよね。単にデカすぎるもの、重すぎるものが。

太田●大きければイイっていう。でも実際、ブロードバンドと契約すると、まっさきに見に行くのって大画面で一番重いビデオとかじゃないですか(笑)。そのノリは当然あったと思います。ただ、いま考えると、Directorで作ったCD-ROMとほとんど同じぐらいのレベルの動きだったり情報量のものが、普通にWebサイトに流れてますよね。

高木●そうですね。

太田●CD-ROMも転送速度に制限がある世界で、そこでどれだけクイックタイムをなめらかに、しかも容量少なく見せるかというテクニックがあって。それはいまのFlash Videoも同じような感覚だったりする。だから、どこか巡っている感じがします。

高木●確かに巡ってますね。



次週、第3話は「ピンからキリのプラットフォーム」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)



高木敏光氏

[プロフィール]

たかぎ・としみつ●早稲田大学文学部美術専修卒業。翻訳会社勤務を経て、株式会社データクラフト入社。1991年頃より、マルチメディアコンテンツの制作を開始。2005年、独立して「株式会社タカギズム」設立。アニメーションやゲーム、インタラクティブコンテンツの制作に携わっている。著書に『高木工務店』(BNN)などがある。http://www.takagism.net/


太田禎一氏

おおた・ていいち●アドビ システムズ株式会社に勤務。プロダクト&セールスエンジニアリング部 プロダクトスペシャリスト。http://www.adobe.com/jp


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