第3話 ピンからキリのプラットフォーム | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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1996年の誕生から10周年を迎え、いまやデジタルコンテンツ制作になくてはならないソフトウエア=Adobe Flash。紙に絵を描くようにコンピュータ上で気軽に描画、アニメーション表現を可能にさせようと開発されたFlashは、この10年で飛躍的な進化を果たしてマルチメディアの「現在」を形作る。その歴史を見守り、もはや生活のためのツールとして活用を続けるクリエイター・高木氏、そしてMacromedia時代からFlashを担当してきた太田氏に、その軌跡を振り返るとともに今後の展望を語ってもらおう。

 


第3話 ピンからキリのプラットフォーム



牛刀をもって鶏を割く?



──ちなみに、お二人が最初に出会ったのは?

太田●マクロメディアのユーザー・カンファレンスでしたよね?

高木●そうそう。それも10年前ですよ。

太田●日本で初めてホテルを借りてユーザー・カンファレンスを開催したとき、高木さんは講師で私は裏方で……あ、でもその前から高木さん、Directorの講師として月に10日ぐらい東京に来てましたよね? よくお見かけはしていたんですよ。

高木●マクロメディアが開いていた、オーソライズド・トレーニングですね。あれはすごく役立ったと思う。10日間の厳しい虎の穴をくぐると、マクロメディアがインストラクターの資格をくれる。その資格試験を司っていたのが僕であり、3人のクリエイターでした。だから最初、僕はFlash使いとしてマクロメディアからお呼びがかかったことがなかったんですよ。

太田●高木さんはDirectorの方という認識でしたね。そういうパワーユーザーの方々がコアになって毎月いろんな人に知識を伝授すると、その人たちが散らばって全国のいろんなところで教える。いまだとコミュニティとかお洒落な言葉がありますが、実はその頃からユーザー、クリエイターのコミュニティが出来上がっていたんですね。で、同じような状況がFlashにもあって、それがいまでも続いている。


高木氏(左)と太田氏(右)

マクロメディアのオーソライズド・トレーニング講師時代については、高木氏のブログに詳しい
高木●細かく樹形図を作ると、系統立てができますね。青池良輔さん、エイサクさん(A.e.Suck)……と、それぞれの分野で大家がいて。

太田●そういうソフトウエア製品って、世の中にあまりないですね。そこがすごく特殊なところなのですが。

高木●個人的にはあまり好きではないけれど、ドラえもんやサザエさんをパクったエログロみたいなものをFlashだと思ってる人もいるじゃない? それぐらい、悪貨が良貨を駆逐するような状態になって……。

太田●はい(苦笑)。

高木●かたや大家たちが名作を残してる一方、テクニック的にはものすごくわやくちゃなんだけれど、そこがFlashという道具のすごいところなんですよ。牛刀をもって鶏を割くように(笑)チープな使い方をしている連中がいたりしても、そこはプラットフォームとしてすごく興味深い。


敷居が低いというメリット



──10年が経ち、物心ついた頃にはもうFlashがあったという世代がいますね。

太田●ええ。だから幅が広いんです。上は40〜50歳で、先日お会いしたユーザーの方は60歳でした。孫の写真を動かしたいとか。

高木●ああ、いい話だね(笑)。

太田●でも、やはりFlashの特徴は若い人ですね。Webに100%向いてるので、Webデザイナーの人が使う機会が断然多くて。

高木●簡単なんですよ。最初全然わからなくても、一番始めの障害をピョンと飛び越えると、あとは無限大に広がってる感じがある。多くの3DCGソフトが修行をかなり必要としているのに比べると、すんなり入っていける。

太田●そうですね。

高木●極めるのは大変なことだけど。


高木氏(左)と太田氏(右)

Flashの奥行き、そして裾野の広さを実感し合う両者
太田●若い人たちも、すごい人はすごい。あまり最近、個人で実験サイトをやるのは見ないけれど、たまに高校生でActionScript使いのすごい子がいたり、確実に新しい世代がいる。そこはうれしいなって思います。

高木●たとえば写真という媒体が、お父さんの撮るスナップからスタジオの物撮り、風景……と細分化しているように、FlashもSWFという拡張子の中でピンキリ。それは僕、すごく楽しいことだと思う。

太田●アスキーアートだけとか、タイポグラフィもMSゴシックだけとか(笑)それでも面白いものは面白い。一枚絵で動かないものもFlashだし、綿々と写真がスライドして朗読してるものもFlash。それができるところが底力で、Directorが担ってきた役目がシフトしてきたのかと感じます。結局、敷き居が低いところがAdobe Flashのいいところで。

高木●そうそう、それが言いたかったんです。

太田●しかも、5分ぐらいマウスで遊べば、それなりのものができますよね。すぐ結果に繋がって、面白いと思っていただきやすい。



次週、第4話は「10年の歴史を経た現在」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)



高木敏光氏

[プロフィール]

たかぎ・としみつ●早稲田大学文学部美術専修卒業。翻訳会社勤務を経て、株式会社データクラフト入社。1991年頃より、マルチメディアコンテンツの制作を開始。2005年、独立して「株式会社タカギズム」設立。アニメーションやゲーム、インタラクティブコンテンツの制作に携わっている。著書に『高木工務店』(BNN)などがある。http://www.takagism.net/


太田禎一氏

おおた・ていいち●アドビ システムズ株式会社に勤務。プロダクト&セールスエンジニアリング部 プロダクトスペシャリスト。http://www.adobe.com/jp


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