デザインのプロセス
──どのようなプロセスでデザインが進んだのか教えてください。
ト●これ(下の図)が最初のデザインのコンセプトのドローイングです。まずインスピレーションになるようなイメージを集めてからスケッチをしていきます。イメージも適当に集めるのではなく、デザインする靴のイメージに通ずるものを意識的に集めていきます。今回のTIEMPO RONALDINHOの場合は、全体のコンセプトは「クラシック」で、ステッチのディテールとかが大事なので、それに関係したような、家具、カバン、手袋といった物を集めました。とくに、ステッチの考えはジーンズから出てきたんです。クラシックだけではなく、こうしたユニークさもちょっと入れたかったんです。
ト●これ(下の図)が最初のデザインのコンセプトのドローイングです。まずインスピレーションになるようなイメージを集めてからスケッチをしていきます。イメージも適当に集めるのではなく、デザインする靴のイメージに通ずるものを意識的に集めていきます。今回のTIEMPO RONALDINHOの場合は、全体のコンセプトは「クラシック」で、ステッチのディテールとかが大事なので、それに関係したような、家具、カバン、手袋といった物を集めました。とくに、ステッチの考えはジーンズから出てきたんです。クラシックだけではなく、こうしたユニークさもちょっと入れたかったんです。
トム氏による最初のスケッチ。ステッチが強調されたデザインコンセプトであることがわかる
Illustratorで描いたドローイングを、Photoshopで革のテクスチャも入れながらリアルなイメージにしていきます。コンピュータはMacで、ワコムの「Cintiq(シンティーク)」という液晶ペンタブレットを使って描いています。紙にスケッチするんじゃなくて、液晶ディスプレイに直接スケッチして、それに色を着けて……そういう感じで今はやっていますね。
スケッチを基に、Illustratorで図面を起こし、Photoshopでリアルなイメージを再現したビジュアル。この段階で完成品の写真と見まごうほどのクオリティ
──写真かと思うようなリアルなイメージ図ですね。
ト●だんだんこういう作業にも慣れてきたんですよ(笑)。ほかにも、Illustratorで機能的なディテールの部分も描いたり、カンガルー革などの素材のテクスチャ画像を呼び出してあてがってみたりとかいろいろしています。スケッチの段階では自分だけのスケッチなので、きれいでなくてもかまわないし、きれいにする時はこういう風にすべてコンピュータで行う、という感じですね。最近社内ではエイリアスの3Dソフトで靴を作ってしまおうという動きもあるんですよ。
ト●だんだんこういう作業にも慣れてきたんですよ(笑)。ほかにも、Illustratorで機能的なディテールの部分も描いたり、カンガルー革などの素材のテクスチャ画像を呼び出してあてがってみたりとかいろいろしています。スケッチの段階では自分だけのスケッチなので、きれいでなくてもかまわないし、きれいにする時はこういう風にすべてコンピュータで行う、という感じですね。最近社内ではエイリアスの3Dソフトで靴を作ってしまおうという動きもあるんですよ。
Illustratorで細かいディテールの部分を描いた図面。靴本体の側面や中面のデザインを検証している
──プロダクトの部分もグラフィックの部分もおひとりで?
ト●はい。NIKEでは靴なら靴ですべてをひとりで担当します。クルマなどとは違いますよね。プロダクトがそう大きくないということもありますが。そしてプロダクトといっても、グラフィックはすごく大事なんですよ。グラフィックがなければシンプルなスパイクになってしまうので。
たとえばこの靴のグラフィック(写真)にはとても時間をかけました。黒と銀色の「豆」が交わっているというような動きをIllustratorで表現したんですが。この靴はスピードがテーマの靴なんで、「豆」はそれを表すための手段として(笑)。プロダクトを作るのと、グラフィックを考えるのは、思考からまったく全然違ってくる。グラフィックを作るほうが大変かもしれないですね。
ト●はい。NIKEでは靴なら靴ですべてをひとりで担当します。クルマなどとは違いますよね。プロダクトがそう大きくないということもありますが。そしてプロダクトといっても、グラフィックはすごく大事なんですよ。グラフィックがなければシンプルなスパイクになってしまうので。
たとえばこの靴のグラフィック(写真)にはとても時間をかけました。黒と銀色の「豆」が交わっているというような動きをIllustratorで表現したんですが。この靴はスピードがテーマの靴なんで、「豆」はそれを表すための手段として(笑)。プロダクトを作るのと、グラフィックを考えるのは、思考からまったく全然違ってくる。グラフィックを作るほうが大変かもしれないですね。
靴に施すグラフィックの制作もトム氏の重要な仕事。黒と銀の「豆」(本人談)の交わりでスピードを表現したもの
──これはスパイクの中敷きですね?
ト●中敷きも自分でイメージしたものととても近い仕上がりになりました。ほかのブランドの靴と比べてみても、NIKEは中敷きなど目に付かない部分も含めてあらゆる部分のディテールづくりに時間をかけてるなと思いますね。NIKEのデザイナーはそういう面でアドバンテージがあるんじゃないでしょうか。
ト●中敷きも自分でイメージしたものととても近い仕上がりになりました。ほかのブランドの靴と比べてみても、NIKEは中敷きなど目に付かない部分も含めてあらゆる部分のディテールづくりに時間をかけてるなと思いますね。NIKEのデザイナーはそういう面でアドバンテージがあるんじゃないでしょうか。
中敷きのイメージビジュアル。こうした表に出ないパーツのデザインも疎かにしないのがナイキで培われたデザインの精神だ
実際の中敷きの完成版はイメージビジュアルとまったく同じ仕上がり
たとえば、構造上、どうしても継ぎ目ができてしまう部分を、結んだ靴ひもでちょうど隠れるような位置にするとか、装飾用のスウッシュ(NIKEのロゴマーク)を切り抜く際にも、なるべく素材のムダが出ないように面取りするだとか。そういった“地球にやさしい”みたいな考えも最近は特に生まれてますね、NIKEでは。