第2話 「お菓子屋の息子と歯医者の息子の結託」
社長、そして副社長として
――現在、お二人が経営に携わる「風とバラッド」設立の経緯は?
ヒロ●それも編集室のソファに座っていたとき、箭内さんが「今度、会社をやろうと思うんだけど」と話し始めたんです。僕のエンライトメントは登記してないから、会社って「面白そうだな」と思ったのが参加のきっかけ。箭内さんが社長やるなら、僕は副社長をやりたいな、って。気が楽そうだし(笑)。
箭内●で、ヒロさんから「副社長になるにはどうすればいいかな?」というメールが届いたんですよ。そこで「じゃあ、出資してください」と。
ヒロ●その後、あれよあれよという間に物件を探しに行ったり、何人か入りたいという人が出てきたから、一挙に話が進んで。
――「リアルタイムクリエイティブエージェンシー」というのは……。
箭内●真面目な話はしたくないんですけど……広告の世界って意外と作り方が凝り固まってるんですよね。悪い意味で、いいかげんじゃないというか。でも、やっぱり世の中の様子を見つつ、去年作ったらつまらなかったんだけど、今年だったらアリだね、みたいなことがある。普遍と逆のことを時代に適応させた形で、どんどん安請け合いしていけるいいかげんな会社という意味なんですけど。
――“広告やデザインのニュース化”というか。
箭内●あ、それはカッコイイからボツ!(笑)
――箭内さんの関わっている会社は、ネーミングが「風とロック」や「風とバラッド」というように一風変わってますよね?
箭内●「風とロック」は偶然なんです。最初「風」と「ロック」というふたつの名前で迷ってて、相談した相手が「風とロック、いいじゃないか」と言うので、合体して登記したのですが。
――「風とバラッド」は、片岡義男の本のタイトルを彷彿します。
箭内●全然、関係ないです。コピーライター出身の人が2名最初に入って、言葉の響きが詩っぽくていいかなって。
ヒロ●キャッチーだよね。
箭内●社員には「バラット」と言ってる人間もいますけどね。外部の人が間違えるのはいいんだけど、うちの社員が電話に出て「風とバラットです」ってのは(笑)。
――経営陣として、ヒロさんも毎日出社されているのですか?
ヒロ●いや、基本的に僕はエンライトメントにいて……。オフィスに行くのは仕事の打ち合わせか、箭内さんと会社経営の相談をするときくらいですね。
箭内●あ、それ(経営の相談)は多いですね。大誤算。会社作れば、黙っててもお金が入ってきて、部下が働いてくれるのかなと思っていたら、部下を働かせるためにどうすればいいか悩むとは思いもよらなかった(笑)。
ヒロ●それも編集室のソファに座っていたとき、箭内さんが「今度、会社をやろうと思うんだけど」と話し始めたんです。僕のエンライトメントは登記してないから、会社って「面白そうだな」と思ったのが参加のきっかけ。箭内さんが社長やるなら、僕は副社長をやりたいな、って。気が楽そうだし(笑)。
箭内●で、ヒロさんから「副社長になるにはどうすればいいかな?」というメールが届いたんですよ。そこで「じゃあ、出資してください」と。
ヒロ●その後、あれよあれよという間に物件を探しに行ったり、何人か入りたいという人が出てきたから、一挙に話が進んで。
――「リアルタイムクリエイティブエージェンシー」というのは……。
箭内●真面目な話はしたくないんですけど……広告の世界って意外と作り方が凝り固まってるんですよね。悪い意味で、いいかげんじゃないというか。でも、やっぱり世の中の様子を見つつ、去年作ったらつまらなかったんだけど、今年だったらアリだね、みたいなことがある。普遍と逆のことを時代に適応させた形で、どんどん安請け合いしていけるいいかげんな会社という意味なんですけど。
――“広告やデザインのニュース化”というか。
箭内●あ、それはカッコイイからボツ!(笑)
――箭内さんの関わっている会社は、ネーミングが「風とロック」や「風とバラッド」というように一風変わってますよね?
箭内●「風とロック」は偶然なんです。最初「風」と「ロック」というふたつの名前で迷ってて、相談した相手が「風とロック、いいじゃないか」と言うので、合体して登記したのですが。
――「風とバラッド」は、片岡義男の本のタイトルを彷彿します。
箭内●全然、関係ないです。コピーライター出身の人が2名最初に入って、言葉の響きが詩っぽくていいかなって。
ヒロ●キャッチーだよね。
箭内●社員には「バラット」と言ってる人間もいますけどね。外部の人が間違えるのはいいんだけど、うちの社員が電話に出て「風とバラットです」ってのは(笑)。
――経営陣として、ヒロさんも毎日出社されているのですか?
ヒロ●いや、基本的に僕はエンライトメントにいて……。オフィスに行くのは仕事の打ち合わせか、箭内さんと会社経営の相談をするときくらいですね。
箭内●あ、それ(経営の相談)は多いですね。大誤算。会社作れば、黙っててもお金が入ってきて、部下が働いてくれるのかなと思っていたら、部下を働かせるためにどうすればいいか悩むとは思いもよらなかった(笑)。
仕事の本質をつく「駐車問題」
――いま、何名ぐらい在籍してるのですか?
ヒロ●8人ですね。会社としての規模は小さいけれど……。
箭内●でも経営者、キツいですよ。ヒロさんが「副社長になりたい」と言ってくれて、僕は本当に助かってるんです。ヒロさんのエンライトメントは会社ではないけれど、すごくうまくいってる企業体。だから組織の作り方や社員の教育とか、実は経営者としての能力が高いですよ。
――それは、湯村輝彦さんのフラミンゴスタジオ時代の経験が?
ヒロ●いや……というか僕、おせっかいだから(笑)。ジワジワと教育していくタイプの調教系なんです。ガツンとは言わない。チョコチョコ言いながら、補正していく感じ。ほら、歯の矯正ってあるじゃないですか。あれ、1年ぐらいかかるでしょ? ガクンと曲げるわけではなく、ジワジワといい形にしていく。ああいうイメージ。
――ご実家の家業の影響ですか?
ヒロ●そうそう(笑)。
箭内●うちはお菓子屋なんで、対立関係なんですよ。俺は虫歯を作る家、ヒロさんは虫歯を直す家で(笑)。
ヒロ●でも、利害関係は合ってるんだよね。
箭内●そうですね。こっちはジワジワ蝕んでいくタイプ。ま、歯がなくなってもいいかって(笑)。
ヒロ●よく「生き急いでる」って、社員から言われてますからね。
箭内●それ言われて一番火がついた。瞬間「うるせー!」って(笑)。
――でも、そういう生き方に憧れて、会社に入りたいっていう人もいませんか?
箭内●いや、そういう人は入れないんです。憧れられても……ねぇ。で、逆のタイプを入れてるから苦労するんですよ。尊敬してくれない。まぁ、そのほうが楽しいんだけど。
――そう考えると、お二人のバランスはとれてるのかもしれませんね。
ヒロ●そうかもしれない。
箭内●うん。でも、ヒロさん、お金のことはよくわからないけど(笑)。
ヒロ●全然ダメだね。
――逆に「ここは直してくれないか」というところは?
箭内●それ、聞きたくないなぁ。余計な質問、やめてください(笑)。
ヒロ●でも、別にないけどね。
箭内●僕としては、引っ越してきてほしいんですよ。エンライトメントのある上野毛から、こちら(原宿)へ。
ヒロ●それは、ずっと言われてることですね。でも、上野毛の広さを近辺で探すと、家賃が3倍ぐらいするんですよ。だったらその分、みんなのお給料を上げてあげたほうがいいかなって。
箭内●ほら、こういうところが出来た人なんです(笑)。
ヒロ●でも、近いほうが楽だなって思う。最近はそうでもないけど、設立当初は毎日クルマで来てたから……。明治通り沿いの東郷神社の駐車場がなくなったじゃない?
箭内●なくなった。
ヒロ●あそこにいつも駐車してたんだけど、なくなったらほかのところが常に満車で……。
――話題の駐車問題ですね。
箭内●でかいですよ、駐車問題。だから、仕事するなら駐車場のあるところを優先しますから(笑)。
ヒロ●ハハハ。それは意外に、こういう仕事の本質をついてるかもしれないね。
(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)
次週、第3話は「仕事は自ら作り出すという姿勢」についてうかがいます。
ヒロ●8人ですね。会社としての規模は小さいけれど……。
箭内●でも経営者、キツいですよ。ヒロさんが「副社長になりたい」と言ってくれて、僕は本当に助かってるんです。ヒロさんのエンライトメントは会社ではないけれど、すごくうまくいってる企業体。だから組織の作り方や社員の教育とか、実は経営者としての能力が高いですよ。
――それは、湯村輝彦さんのフラミンゴスタジオ時代の経験が?
ヒロ●いや……というか僕、おせっかいだから(笑)。ジワジワと教育していくタイプの調教系なんです。ガツンとは言わない。チョコチョコ言いながら、補正していく感じ。ほら、歯の矯正ってあるじゃないですか。あれ、1年ぐらいかかるでしょ? ガクンと曲げるわけではなく、ジワジワといい形にしていく。ああいうイメージ。
――ご実家の家業の影響ですか?
ヒロ●そうそう(笑)。
箭内●うちはお菓子屋なんで、対立関係なんですよ。俺は虫歯を作る家、ヒロさんは虫歯を直す家で(笑)。
ヒロ●でも、利害関係は合ってるんだよね。
箭内●そうですね。こっちはジワジワ蝕んでいくタイプ。ま、歯がなくなってもいいかって(笑)。
ヒロ●よく「生き急いでる」って、社員から言われてますからね。
箭内●それ言われて一番火がついた。瞬間「うるせー!」って(笑)。
――でも、そういう生き方に憧れて、会社に入りたいっていう人もいませんか?
箭内●いや、そういう人は入れないんです。憧れられても……ねぇ。で、逆のタイプを入れてるから苦労するんですよ。尊敬してくれない。まぁ、そのほうが楽しいんだけど。
――そう考えると、お二人のバランスはとれてるのかもしれませんね。
ヒロ●そうかもしれない。
箭内●うん。でも、ヒロさん、お金のことはよくわからないけど(笑)。
ヒロ●全然ダメだね。
――逆に「ここは直してくれないか」というところは?
箭内●それ、聞きたくないなぁ。余計な質問、やめてください(笑)。
ヒロ●でも、別にないけどね。
箭内●僕としては、引っ越してきてほしいんですよ。エンライトメントのある上野毛から、こちら(原宿)へ。
ヒロ●それは、ずっと言われてることですね。でも、上野毛の広さを近辺で探すと、家賃が3倍ぐらいするんですよ。だったらその分、みんなのお給料を上げてあげたほうがいいかなって。
箭内●ほら、こういうところが出来た人なんです(笑)。
ヒロ●でも、近いほうが楽だなって思う。最近はそうでもないけど、設立当初は毎日クルマで来てたから……。明治通り沿いの東郷神社の駐車場がなくなったじゃない?
箭内●なくなった。
ヒロ●あそこにいつも駐車してたんだけど、なくなったらほかのところが常に満車で……。
――話題の駐車問題ですね。
箭内●でかいですよ、駐車問題。だから、仕事するなら駐車場のあるところを優先しますから(笑)。
ヒロ●ハハハ。それは意外に、こういう仕事の本質をついてるかもしれないね。
(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)
次週、第3話は「仕事は自ら作り出すという姿勢」についてうかがいます。
[プロフィール] ひろ・すぎやま●1962年東京都生まれ。東洋美術学校卒業後、湯村輝彦氏に師事。92年に独立、97年「エンライトメント」設立。グラフィック・デザイ ンや映像制作、VJなどの活動と同時に、フリーペーパー『TRACK』『Display』やアート作品集の発行を手がけている。国内外での個展開催、グループ展への参加多数。http://www.elm-art.com/ |