第3話 ネットアニメにおける“お笑い”とは? | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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みなさん、ネットアニメ観てますか? ちょっと前まではアンダーグラウンドな動向に思われていた世界ですが、現在大ヒットを飛ばしている『やわらか戦車』を筆頭に一般レベルに浸透してきた新メディア。今回は、その最前線「livedoor ネットアニメ」のプロデューサー・高山晃氏、同サイトで刑事ドラマのパロディ作『マジデカ。』などを公開している作家・みやかけお氏に、ネットアニメの現在と今後について語っていただきます。


第3話 ネットアニメにおける“お笑い”とは?


いまのテレビにないものを……


??『マジデカ。』の制作過程は?

みや●まず、シナリオを書くことから始まります。それを声優さん側に送って、音声ができるまでの間、僕は絵の作業を進めます。POSERとSHADEでレンダリングしてますが、それが一番時間がかかりますね。何度も言ってますが、もともとアニメや漫画に興味があったわけではないので、やっぱり絵のセンスと技術が決定的にない。だから、いつもアングルを作るときに「なんでこんなのしかできないんだ?」とイライラしてます。

??高山さんサイドで、ネームチェックなどは?

高山●最初の方向性を決めるところまでは、結構みています。でも、パターンができてくると、著作権違反は気をつけますが、あとはお任せしちゃうようにしてます。プロデューサーは、あくまで作品づくりのお膳立てをする役割だと思っているんです。みやさんとも、最初の段階で「突っ込み芸やリアクション芸のような瞬発的な笑いではなくて、じわじわくるもの」というコンセンサスがあるだけで、あとは独自のお笑いセンスを追求してください……という態勢です。

??いまのテレビでは、瞬発的な笑いのほうが大多数ですよね?

高山●ええ。僕の私感ですが、たぶん蛙男商会さんはテレビ的なノリツッコミだと思うのですね。一方ラレコは、意識していないけれど落語に近い。落語って笑わせるだけではなくて、人情話や泣きもあるじゃないですか。いまのテレビの速度感だと、そういうネタについてこられない。でも、ネットアニメの環境ならばできるんですね。ラレコも最近長いものを作り出して、今度DVDを作ったんです。短いほうがいいという意見もあるのですが、30分通して観るとやっぱり落語に近いものがある。


高山晃氏

パロディだけの作品は、瞬間芸で終わってしまう」(高山氏)
??みやさんにとっても、自分の“お笑い観”を活かすための手段としてネットアニメは有効だった、と。

みや●もとはそうですね。活かすというか、自分のホームページであっても作品を出せば反応があるじゃないですか。面白いと言われれば、盛り上がってしまう。調子に乗ってしまう性格ですから……。

??アニクリで公開している『坂井さん家の卓袱台ハッピートーク』では、時事ネタを扱っていますね。

みや●あれは「flash☆bomb」など、ライブ会場で公開してきた作品の延長線上にあるものですね。だから、それなりの経験があるだけに「ここまでいかないとダメ」というラインがあって。一方『マジデカ。』のほうは、新しいことをやってる意識がありますね。

高山●みやさんは物事をすごく客観的に見てらっしゃるので、ここはこうすれば笑いがとれる……ということがわかっている。客席があったら、このボールを投げればこういう笑いが返ってくるとか。でも『マジデカ。』でやっていることは、そういう笑いではないところを掘っていますよね。

みや●尺が短いと、どうしてもナンセンスになりがちですから。わかりやすくレベルの高いナンセンスができればいいのですが、なかなか難しい。モンティパイソンやマルクス兄弟など、さんざん観てきましたし好きです。でも、いざ作るとなると、やっぱり昭和のコントっぽい、フリがあってオチがぽんっとあるものがやりたい、と。

??しかし、あの“間”をネットでやるというのは珍しいですよね。

高山●ええ。いまのテレビを見渡しても、なかなかいないと思います。

Flashは「手段」のひとつだった


??livedoor ネットアニメへの一般からの投稿は、どれくらいあるのですか?

高山●週に30本ぐらいですね。僕はみやさんやラレコなど作家さんとのやりとりに力を注いでいるので、そのすべてに目を通すことはないですが、スタッフのうち誰かは必ず全部チェックしています。中学生や高校生からの投稿で、たまにすごいものがあるのに驚かされます。

??作風の傾向は?

高山●やはりラレコの影響は大きいですね。歌で笑いをとるみたいなもので、キャラがかわいい。みやさんのフォロワーは……いないですよ(笑)。

みや●たぶんFlashやろうとする人はアニメが好きな人ですから、僕の作品を観て……という人はいないでしょう。ラレコさんや蛙男商会さんはいると思うけど。

高山●どれだけ落語を知ってるとか、どれだけひょうきん族を観てるかって話で、相当限られますよね。

みや●加えて、僕は本来Flashをいじってはいけない人間ですから(笑)。


みやかけお氏

「絵を見せるよりもネタを見せるためのツールがFlashだった」(みや氏)
??別にFlashでなくてもよかった?

みや●ええ、なんでもよかった。Flashの前に、Directorの廉価版を買ったのですが、どうも使いづらいと思ってて。で、改めて調べたらFlashに行き着いただけのことで。

??ひょっとしたら映像でもよかったわけですよね?

みや●そうですね。ただ、友達がいませんから(苦笑)。一人でやれるものは、結局コンピュータで作れるものになる。

高山●でも、脚本とかのコンテストに応募したら、普通に賞を穫れると思いますよ。

みや●いやぁ、勇気がないんです。人生後ろ向きに過ごしてきましたから(笑)。



次週、第4話は「広がりを見せるネットアニメ環境」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)



高山晃氏

[プロフィール]

たかやま・あきら●1964年生まれ。同志社大学商学部卒業後、広告代理店、映像制作プロダクション、アニメーション会社勤務を経て、2005年8月にインディーズアニメのプロデュース企業、株式会社ファンワークスを設立。livedoor ネットアニメの企画・運営、テレビ番組や携帯コンテンツの構成などを手がけている。

http://www.fanworks.co.jp/



みやかけお氏

みや・かけお●1971年生まれ。1999年より自身のWebサイトを開設。2003年「ザ・ガーベージ・コレクション」として新装、Flashによる映像作品などを公開。2005年、DVD『みつおの世界』を発表。現在、livedoor ネットアニメで「マジデカ。」を連載する他、アニクリで「坂井さん家の卓袱台ハッピートーク」を公開している。http://garbage.web.infoseek.co.jp/


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