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第3話 ニュースにはアナログ的な世界のほうが重要

2024.4.28 SUN

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2000年4月にスタートした「シブヤ経済新聞」(シブ経)は、ネット上の広域渋谷圏におけるビジネス&カルチャーニュース新聞として注目され、そのページビューは現在では約100万ビューまでになっている。最初たった一人ではじまった「シブヤ経済新聞」は、現在はそのネットワークが広がり「みんなの経済 新聞ネットワーク」(みん経)として18都市で展開されている。今回は「シブヤ経済新聞」の編集長であり、ネットワークのディレクションを担当している 西樹氏に話をうかがった。


第3話 ニュースにはアナログ的な世界のほうが重要




ーー「みんなの経済新聞ネットワーク」について教えてください。

●西:当初は「シブヤ経済新聞」だけだったのですが、その後、横浜、六本木、天神と広がってきて、現在は20エリア都市になっています。「シブヤ経済新聞」を続けている間に、渋谷という街といろいろな縁ができてきて、それがとても楽しいということを、いろいろな人に話していたら、たまたま横浜の知人が興味を持って、試しに横浜でもやってみようってことになったのが最初ですね。横浜は2004年4月にスタートしました。そうしたらやはり渋谷と同じように横浜でも地域の縁がたくさんできてきたんですね。そのあと2005年4月には六本木も始まって。今月スタートした「高崎経済新聞」と「広島経済新聞」で20エリアになりました。シブヤ、銀座、下北沢の3エリア以外については、印刷会社やウェブ制作会社、TV番組制作会社などの各エリアのパートナーさんたちが運営しています。

ーーどんな人たちとパートナーを組むようにしているのですか?

●西:ネットワークを始めるにあたって、たまたま手をあげていただいたり、ご縁があった方々に最初にお話しすることは「ビジネスモデルではないので、儲かりませんよ。でも細く長くやっていると地域と縁ができてくるので、なんらかの面白いことが起こる可能性はあります」と。まず最初に「キャッシュベースではすぐには儲からないですよ」という話を先にさせていただいて、それでも前向きな意思を持っていただけるかどうかを確認してからご一緒させていただいています。メディアですから、面白そうだからってことで始めても、儲からないからいきなり辞めますということが一番困るので、その辺は注意しています。ネットワーク全体に迷惑がかかりますから。


でも、自分の経験から細く長く続けていると、まわりで何かしら面白いことが起きてきているんですよね。地域で縁ができていくということは、ポジティブな何かを生んでいると思うんです。もしシブ経をやっていなかったら、7年間で出会った人の数がおそらく一桁、いや二桁違うかもしれませんね。出会いがあるということは、やはりいろいろな価値観の人に触れるということができるわけで、面白い価値観を持っている人と出会うと「じゃあ、なにか一緒にやってみましょう」ってことになったりもするんです。

僕らは、見方を変えると「出会い系」とも言っているんですが(笑)、地域の人たちといろいろな出会いができるわけで、その出会いをポジティブに捉えることができる経営者は、会社として大きくその価値観を共有できたり、街に対する意識が変わってきたりすると思うんですね。それぞれは小さなメディアですが、間違った情報は書いてはいけないとか、それなりに緊張して、そういった目に見えないような価値観を感じてくださっているからこそ、みなさん続けてくれていると思うんです。


ーーネットワークを展開するうえでの運営方法はどのように?

●西:昨年から「みんなの経済新聞ネットワーク」という名称を導入しました。「シブヤ経済新聞」はそのフラッグシップという位置づけです。ツールや広告商品は、シブ経など一部のエリアでこっそり(笑)やってみて、面白ければ、他でもやってみたりとか、反応をみながら導入しています。

フラッグシップである「シブヤ経済新聞」では、ネットワークの方針を固めていき、広告についても東京が主体にはなるケースが多いので、大手の代理店にも対応できるようなシステムの維持も課題になりますね。スピードが必要な世界だとは感じています。

ーーエリアごとに特色があったりするのしょうか?

●西:エリアによっては少しずつメディアの特徴付けを行い、いわゆるマーチャンダイジング的な視点を加味しています。下北沢とかはかなりディープなネタですし。このエリアだったらこの情報とかは考えています。

パートナー各社が、それぞれサイトをカスタマイズしてコンテンツのあり方そのものが変わってしまうと、メディアとしての総体感としてのパワーが弱くなってしまうと思います。ですから、サーバーやプログラムはみん経全体で一元管理を行っています。ネットは無制限になんでもできてしまうメディアなので、いろいろとやりたいこともあるのですが、コンテンツを増やすということはそれだけ負担も増えるわけで、みん経全体の現在のスタンスとしてはニュースに集中していくようにしています。いいニュースを一本でも多く伝えていくということを目指していますね。なので、どちらかというとネットでありながらもかなりの我慢もしていまね。やりたいことはたくさんありますが、やればやるほど大変になり、それだけコストもかかりますので。長く続けることを大事に考えています。

ーー実際どういった人たちから問い合わせがあるのでしょうか?










2006年11月17日朝日新聞夕刊より

●西:一例ですが、昨年11月に朝日新聞の夕刊で紹介していただいた時には、出張で上京されていた山口の印刷会社の社長さんが、たまたまホテルでその記事をご覧になってすぐに連絡をいただきました。それで、もう山口は2月には立ち上がりました。みなさんやはりとてもポジティブで動きが早いんです。それほど規模が大きくない会社の方が多いので、ポジティブにものごとが進みますね。でも、そのスピード感覚って大切だと思うんですよね。メールでも電話でも反応が早いし。

地域によって、業種も違うし、人も違う、異なる会社が運営しているにもかかわらず、お互いに縁が生まれることに面白さを感じます。これまで縁のなかった会社の方々同士にネットワークができて、結果的に異業種ネットワークが生まれてきていて、それはそれで楽しいですね。年に1回はみんなで1カ所にが集まるイベントをしようと決めていて、今年は3回目になります。

ーーネットワーク新聞を展開する上で重要な要素はなんだと思いますか?

●西:一番大事なのはスタイルを変えないで長く続けることです。日々の作業は手間もかかり地道なことの連続ですが、それが続けられる仲間が集うと、いい意味で大きな力をもってくると思うんです。

ビジネスモデルとして売り上げを最初から優先して考えるとを、先ほども話しましたが、まったく違うものになってしまうと思うんです。ローコストで、長く続けて、全国のいい仲間と出会って行く。Webというデジタルなメディアですけど、アナログ的な世界感が重要で、そこにお互いの相乗効果が生まれるではないかと思っているんですね。

Web上の新聞ネットワークですから、イメージ的には、最後の5%とか10%はもちろんWebの恩恵を受けてはいるのですが、残りの90%とか95%とかはアナログのウエットな世界がないとニュースって成立しないんです。システムが勝手にニュースを書いてくくれるわけじゃありませんからね(笑)。Web2.0とかいったWebの知識も大事ですが、みん経ではやはり、人と会ったりするあったり、コミュニケーション力が重要です。目の前で起きていることや、取材先から伺がったことを正確にテキストにして伝えるということの大事さをいつも痛感しています。





(取材:蜂賀 亨 写真:谷本 夏)


西  樹(にし・たてき)

(プロフィール)
1960年生まれ、兵庫県出身。青山学院大学経済学部卒業。卒業後、大手PR会社を経て、1988年(昭和63年)花形商品研究所を設立。2000年(平成12年)4月、広域渋谷圏の動向を伝えるニューサイト「シブヤ経済新聞」を開設。パートナー企業と共に「ヨコハマ経済新聞」「六本木経済新聞」「天神経済新聞」などを各地で運営。デパ地下の情報サイト「デパチカドットコム」も同社の運営。
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