第2話 僕らは情報の八百屋なんです | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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2000年4月にスタートした「シブヤ経済新聞」(シブ経)は、ネット上の広域渋谷圏におけるビジネス&カルチャーニュース新聞として注目され、そのページビューは現在では約100万ビューまでになっている。最初たった一人ではじまった「シブヤ経済新聞」は、現在はそのネットワークが広がり「みんなの経済 新聞ネットワーク」(みん経)として18都市で展開されている。今回は「シブヤ経済新聞」の編集長であり、ネットワークのディレクションを担当している 西樹氏に話をうかがった。


第2話 僕らは情報の八百屋なんです




ーーシブヤ経済新聞らしい情報とは?

●西:情報提供にお金をとっているわけではないので、あまり大きな時事ネタや、お金がかかったものを優先して書くということはなくて、その情報自体に価値があるかどうかってことですね。情報としては大も小もごちゃまぜにしています。街っていろいろな要素でできているのが面白いわけで、イベントとかベンチャーとかの分類分けをしていません。ベンチャー企業の情報の次に、二人きりではじめた小さなお店の記事がきて、その下にはコアな映画情報があったり、そういったシャッフル感が僕は好きだし、その方が街の動きがよくわかるのではないかと思っています。

あと「おバカネタ」も好きですね。はたからみたら少しばかげて見えるかもしれないけど、街には誰かが一生懸命やっていることってあるんですね。そういうことを見つけたらできるだけ紹介したいと思っています。例えば、昨年恵比寿ラーメンが店を閉じたのですが、そういった閉店のニュースもなるべく伝えられればいいですね。そのお店が街のなかでこれまでがんばってきたわけだから、そうしたこともできるだけ書いてあげたいんですよね。あと、若い人たちがお店をオープンしたりしてPRまで手がまわらないので、それをニュースとして応援したり。あとNPOなども面白いことをやっているのだけど、世の中に情報を出すのがあまり得意ではないところなどもあって、僕らはお金を出したりすることはできないけれど、情報面でお手伝いすることができるのではないかと思っています。できるだけそういった情報は載せてあげたいですね。それがシブ経らしさかもしれないです。

ーー掲載するかどうかの境目はあるのですか?

●西:僕らは情報の八百屋みたいなところがあって、その日によって品揃えはちがっています。当然品揃えがあまりよくない日には、少しハードルを下げてでも載せますが、情報がたくさんあるときには、シブヤという街好きの人にとって、それが面白いと感じられるかどうかということですね。編集部で話し合ったりすることもありますが、直感的に「シブヤ経済新聞」のユーザーがどう思うかな?というところで判断します。セレクションそのものにルールといったものは特にないです。やはり情報はナマモノなのでスピード感も大切ですから、その場でさくさくと決めていきますね。八百屋さんや、魚屋さんのように、ある程度のノリみたいなものも重要かなとおもいます。ライブで情報は動いて行きますから。突然面白い情報が飛び込んでくることもあります。それに対応できるのがネットのいいところでもありますよね。

ーー「シブヤ経済新聞」におけるデザインに対するこだわりは?

●西:デザイン的にはわかりやすいのが一番だと思っています。シンプルで、控えめで、色数を減らして、長くもつ、飽きないデザインですね。デザインをし過ぎないというのをポリシーにしています。テキストが中心なので、表側の目に見えるデザインだけではなく、裏側のデザインであるCMSも大切だと思っていて、表側の情報が増えてくると裏側もますます複雑になってくるので、表裏面と裏表面の両方のインターフェイスを使いやすく、わかりやすいようにしています。

ーーニュースとして理想の文字数があったりするのですか?

●西:文字数は伝えたいことが伝わるのであれば短くても長くてもいいと思っています。字数制限は特にありません。ただ文章については、ネット上の新聞なので、渋谷にいない人でも読めるような文章は特に意識していますね。通常、地域情報やニュースだとそこに住んでいる人に向けて書くのですが、ネット上のニュースなので、大阪や沖縄の人が読んでも面白くて、付加価値が理解してもらえるような内容、そして書き方をしています。例えば「渋谷の小さな神社でお祭りがありました」という記事を書いたとしても地方の人には面白くもないし、まったく関係ないですよね。エリアを越えて読むことができるニュースということを意識して、情報や書き方を考えています。具体的には文章の精度をあげる、他のエリアの人にも理解しやすいように補足をつけるようにしています。それがインターネットならではのこだわりですかね。


ーービジネスモデルとしてはどう考えていますか?

●西:僕たちがやっていることはWebビジネスのように見えて、ですので何というか、コンテンツそのものに理解がないと長続きできませんね。ひとつひとつの記事に対する思いとか、書き方とか、スタンスとか、それがトータルにマネジメントされているからこそ成立しているわけで。そこにお金の概念をダイレクトに持ち込むんでしまうと、うまくいかなくなると思うんですね。ビジネスだけで捉えるとを、ロジカルには語れない。何がプラスで何がマイナスとか。でもやっている人たちはみんな楽しくて、取材先の人たちもハッピーだし。「シブヤ経済新聞」のようなニュースサイトは、なかなかキャシュベースのエクセルがあてはまらない気がしますね。でもボランティアでやるつもりはまったくなく、やはりいい仲間が集まることは同時にメディアとして力をもつことでもあり、少しでも収益がある仕組みを考える必要もあります。

ーー将来的にビジネスプランを具体的に考えているのですか?

●西:いまのところはあまり考えていません。基本的にもうからないんです(笑)。ページビューはそこそこありますが、渋谷エリア限定という地域性が場合によって仇になるというか、渋谷だけに広告を出したいというところは実際少ないですね。でも、いまはネットワークが広がってきているので、そのネットワーク全体に広告を展開することもできますし、あるいは逆に地域に絞り込んで展開するということもできます。広告についてはアドセンスとかアフィリエイトとか、新しい広告スタイルもできるだけ早く取り入れるようにしています。あとYahooやmixiなどのポータルニュースサイトや、渋谷駅の街頭にあるデジタル地図案内版などにも渋谷のニュースを配信しています。広告や通信料など小さな収入をコツコツと集めてなんとか運営を続けてきました。ですので「シブヤ経済新聞」では、あまり「ビジネスモデル」といった概念を考えた事はありません。





(取材:蜂賀 亨 写真:谷本 夏)


西  樹(にし・たてき)

(プロフィール)
1960年生まれ、兵庫県出身。青山学院大学経済学部卒業。卒業後、大手PR会社を経て、1988年(昭和63年)花形商品研究所を設立。2000年(平成12年)4月、広域渋谷圏の動向を伝えるニューサイト「シブヤ経済新聞」を開設。パートナー企業と共に「ヨコハマ経済新聞」「六本木経済新聞」「天神経済新聞」などを各地で運営。デパ地下の情報サイト「デパチカドットコム」も同社の運営。
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