第4話 シブヤという街をしつこく見届けたい | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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2000年4月にスタートした「シブヤ経済新聞」(シブ経)は、ネット上の広域渋谷圏におけるビジネス&カルチャーニュース新聞として注目され、そのページビューは現在では約100万ビューまでになっている。最初たった一人ではじまった「シブヤ経済新聞」は、現在はそのネットワークが広がり「みんなの経済 新聞ネットワーク」(みん経)として18都市で展開されている。今回は「シブヤ経済新聞」の編集長であり、ネットワークのディレクションを担当している 西樹氏に話をうかがった。


第4話 シブヤという街をしつこく見届けたい




ーーニュースという情報を選んだのはなぜですか?

●西:ニュースってやはり面白し、ニュースそのものが僕が大好きだからです。新聞といっても大きなメディアもたくさんあれば、専門のものもあるでしょうし。僕らはそのスライスを「街」にしているわけで。そういった意味でニュースはまだまだこれから多様化されていくんじゃないですかね。スポーツもエンタテイメントもあるし、「街」っていうところで捉えるシブヤ経済新聞のようなモノもありだと思います。

あと、テキストというメディアのあり方に、僕はシンプルだけど強さを感じるんです。画像や動画よりもテキストは、もしかしたら先々まで残るんじゃないかなって思っていて、そういった意味で、僕は新聞が好きですね。僕自身も紙の新聞を読むのが大好きで隅から隅まで読んでいますから。

Webにおいては、僕はテキストという表現のスタイルがすきなので、テキストとWebとの相性のなかで、どういったことができるかなって考えて経済新聞とになったわけです。新聞は英語ではニュースペーパーですけど、日本語だと紙という漢字が使われているわけではなく、創刊当時はたまたまメディアとして「紙」しかなかったので、新聞イコール紙になったんだと思うんです。新聞という本来の文字のコンセプトをもう一度Web上でゼロから検証しながら、自分たちのあり方を探っていきたいなっていうのが、僕ら経済新聞のネットワークでもあるんです。









ーー「シブヤ経済新聞」の今後について教えてください

●西:僕らは、大きな資本をかけてはいないので、お金のかかることはあまりやらないし、やれないし、やろうとも思わない。そういうことはお金があるところがやればいい。僕らはお金をかけないで、どんなことができるのかということにも面白みを感じています。なので、APIみたいにお金がかからないで情報量が増えるということに対しては積極的でありたいし、RSSの配信なども取り組みが早かったと思うんですね。新しいことはできるだけ早くやっていきたいですね。ネットワークの今後の広がりについては、ビジネスモデルがベースにあるわけではないので、エリアがこの先いくつになるのかはわからないですね。

別に積極的に営業しているわけでもないですし、ノルマもないですから(笑)。ネットワーク展開にしても、いち早く手をあげていただいて、ポリシーが同じ方がいらっしゃったらどんどんやりましょうってことです。だからエリアもちょっととびとびなんです。もし営業マンをおいてビジネスライクでやっていたら、こうはならないかも(笑)。僕らのスタンスは最初からシンプルで変わらないんです。今後も新しいエリアが加わっていくと思いますが、ネットワークが増えても基本的なスタンスは変わらないですね。

ーー西さんが考えるWebとは?

●西:僕らは紙で新聞を展開することはあり得なくて、たまたま手持ちにあるメディア展開としてコストの問題もありWebというメディアを使っているわけです。それは僕らそういう時代に生きているからですかね。Webがなかったらシブヤ経済新聞はやっていなかったと思います。印刷物はコストがかかりますから。Webは、コストが決してかからないわけではないですが、当初の開発が社内でできる環境にあったので、それを除くと、かかるコストは当初は僕の時間だけだったんですね。だからビジネスモデルでなくても立ち上がれた経緯があります。

Webに可能性を感じるというよりは、ないと困りますよね(笑)。すでにインフラですから。グーグルを使わない日ってもはや考えられないし。ネットを使って、何を伝えたいかとか、何ができるかという、原点に戻って考えることが大事なのかなって思います。例えば水をつかって、何ができるかみたいなことですよね。大きな工場を建設することもできれば、自分の飲み水にもできるでしょうし。難しく考えるというよりは、このインフラを使って何をしたいかをシンプルに突き詰めてみることも大事だと思いますね。当然、そのインフラがなければシブヤ経済新聞はあり得ないですけど・・・。



ーー読者に望むことはありますか?

●西:一日一回、自分の住んでいるエリアのニュースを見ていただけるとうれしいですね。書き手の立場からすると、せっかく書いたのだから、ひとりでも多くの人に見ていただきたいというのがあるので。もちろん、そこに書いてある情報をもとに、店やギャラリーなどにも足を運んでもらえると嬉しいですね。僕たちは、小さくてもいいから良い情報の循環のようなものを作りたいんですね。小さいネタだから小ロットしか流通しないのでなはく、そこに情報的な価値があればエリアを越えて、多くの方に見ていただいてもいいじゃないかという発想です。


ーー最後に西さんが「シブヤ経済新聞」をやっている楽しみは?

●西:よく、「お前が一番楽しんでいるんじゃないか」って言われます(笑)。でも、やはり面白いんですよ。もしかしたら、読者よりも書いている側のほうが面白いのかもしれないですね。ただ、その面白さがボランティアでいいかというと、そうとは思わなくて、民間の会社がやることなので、やはり少しでもお金になる方向を目指すことは必要だと思うんです。

でも、なぜやっているのかというと、街が好きということと、あと、人に会うことが面白いということですね。縁ができるということは本当に素敵なことで、シブ経を長くやっていると、その延長線上で結果的に仕事になったりすることもあるんですね。決してそれを目的にやっているわけではないんですが・・・。ネットワークが増えてきたことによって、地方へ出張する時も楽しみが増えましたね。各都市のパートナーの方達が、それぞれの街の楽しさをいろいろと教えてくれたりもしますから。

あと、僕はひとつぐらい自分がきちんとコミットできる街があってもいいんじゃないかなって思っていて。そこで住んだり働いたりするわけだし。それがたまたま仕事と職住エリアが一致していたらなおさら楽しいですよね。ひとつの街をずっと見ていくというか。渋谷という街はこれから東京メトロ副都心線が来年開通し、さらにその数年後には副都心線と東横線がつながるようになったり、これから先10年15年の間で激変する街なのですね。そのシブヤという街をこれからもしつこく長く見届けていきたいと思っています。





(取材:蜂賀 亨 写真:谷本 夏)


西  樹(にし・たてき)

(プロフィール)
1960年生まれ、兵庫県出身。青山学院大学経済学部卒業。卒業後、大手PR会社を経て、1988年(昭和63年)花形商品研究所を設立。2000年(平成12年)4月、広域渋谷圏の動向を伝えるニューサイト「シブヤ経済新聞」を開設。パートナー企業と共に「ヨコハマ経済新聞」「六本木経済新聞」「天神経済新聞」などを各地で運営。デパ地下の情報サイト「デパチカドットコム」も同社の運営。
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