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1年生デザイナーの1週 間



1年生になったら~ 1年生になったら~♪ ということで、デザイナーという職業に憧れる読者のみなさんに先駆けて、一足早くデザイナーになった先輩デザイナーの1週間を追いかけるのが、このコーナーです。夢を現実にした新人デザイナーの仕事と生活ぶりは実際どのような感じなのでしょうか? 毎月第3週に、その曜日の出来事を毎日更新でお届けします!


今月の1年生デザイナー

矢部佳奈子さん(ジュン・キドコロ・デザイン)

yabesan

土曜。青山ブックセンターのトークイベントヘ。


7:30 起床

また風邪をぶり返したかのような頭の重さ。私はお休みですが、夫のエリックは土曜日もお仕事なので、寝坊はしていられない。



9:00 洗濯

洗濯ものを干すときは、いつもバレエ音楽をかけます。今日は「白鳥の湖」。指先とつま先に神経を集中させて、くるくるしながら洗濯物を干すとちょっと楽しい。バレエを習ったことも観たことも1秒たりともございません。あこがれだけ。気分だけ。



自分の洗濯物が干されてるのを眺めているとちょっぴり幸せな気持ちになります。精密に切り刻まれ縫い合わされた布切れの集合体。布帛の服の美しさ。私のいとしい子たち。服や服を取り巻く状況はとても興味深いものだと思う。体を守るものであり、文化であり、人類の技術の発展の軌跡であり、デザイナーの自己表現、芸術作品であり、消費ビジネスであり、着る人のアイデンティであったりもする。たくさんの意味や役割がある。個人的には、考え抜かれて丁寧に作られた長く愛せる服が好き。



それにしても、眠い……。ゆっくりしてたら昼ごはんを食べる時間が、ない。きゃ。



13:00 中目黒のヘアサロンへ

中目黒のヘアサロン「hanjee」でカットカラーのお約束。私のスタイリスト、CHIHARUちゃん。彼女が前に勤めていた店のスタイリスト最終試験で「やべちゃんのヘアは、私が一生面倒みるよ!」とプロポーズのような言葉とともに私の髪を40cmほど切り落として以来、ずーっと髪は彼女に任せています。たま~に、もろもろの事情で浮気するけど。


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▲仲良しのスタイリスト、CHIHARUちゃん


アシスタント時代からの仲良しさんです。スタイリストになりたての頃はノルマがあったので、友人知人をたくさん紹介して、当時、やべ斡旋事務所などと呼ばれたりしてました。「hanjee」に移ってからも、みんな変わらず通っているらしく、これはもう、彼女の技術と人柄だからこそだと思う。なれなれしくない、ぎこちなくない、ちょうど良い親しみやすさ。ヘアサロンの接客はけっこう難しいと思います。CHIHARUちゃんのセンスとカンの良さは、先輩スタイリストの方々からもお墨付き。先日、遅い夏休みで、ダンナさんとロンドンとパリに行ってきたらしい。たっくさん写真をみせてもらう。面白い。面白いんです、この夫婦。前髪短くして冬色に染めてもらう。私は前髪が短い方が大人っぽく見えるのではないかと、勝手に思っている。



16:30 表参道へ

渋谷から、246沿いに表参道までぶらぶらと歩く。道行く人を眺めつつ、いろいろ想像するのは楽しい。中でも、キラッと光る女の子を見つけると嬉しい。おしゃれっぽい人はたくさんいるけれど、キラっとしている人はなかなかいない。この辺を歩く時は、つい足の悪いブルーのよく似合う女性はいないものかと探してしまう(『国境の南、太陽の西』村上春樹著)。



探しものがあったので、スパイラルに寄る。カレンダーフェアをやっていました。そうだ、来年の蒼井優のカレンダーを買わなくちゃ。このところ、カレンダーは蒼井優と決まっている。デザイン重視の実用性ゼロのカレンダー、普通の芸能人のカレンダーとはまったく違う、すごくかわいいカレンダー。かわいいからいいんだけど、実用性と美しさを兼ね揃えたものを作っていただきたいという思いもある。



18:00 友達と待ち合わせ

高校時代の友人と待ち合わせ。あ、発見。くみちゃん。彼女は「nakagawa kumiko」というブランド名(本名)で、メタルキャスティングのアクセサリーや小物を作っています。私がいつもつけている指輪も彼女の作品。いやなことがあっても、この指輪を見ると、がんばる気になれる。何の気負いもなく話せる大切なお友達。高校の同級生の中で、唯一、今も会う人。


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▲友達のくみちゃんが手がける「nakagawa kumiko」のつぶの花シリーズ


くみちゃんと一緒に、青山ブックセンターに向かいます。実は、新作のあふれる大きな本屋さんには滅多に足を踏み入れません。たくさん積まれた新品の雑誌や本から出る、あふれんばかりの自己主張に辟易してしまうから……。古本屋さんが好きです。欲しい本が決まっていればインターネットで買います。お。入り口付近で高野文子の『棒がいっぽん』(マガジンハウス)を発見。ちょっと立ち読み。知り合いの、よしいちひろちゃんの本も見つけた。たまには大きな本屋もいいものだ。



今日、青山ブックセンターに向かった理由はブルーマークの菊地敦己さんの連続対談「つくるということ」を聴講するため。


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▲ブルーマーク・菊地敦己さんの連続対談「つくるということ」。月1回開催、全9回を予定しているそうです


今回のゲストは、クリエイティブディレクターの小池一子さんです。とても濃厚な2時間でした。対談というよりは、ほとんど小池さんのこれまでの活動の話だったのだけども、小池さんの活動は多岐に渡るので、とても2時間じゃあ話し尽くせない感じでした。演劇にのめりこんでいた大学時代から始まって、コピーライティングのこと、渋谷の都市開発、無印良品の立ち上げ、佐賀町エキジビット・スペースのこと。すごくさらりと話すけれども、やってきたことの規模の大きさに圧巻……それまでなかったものを次々と生み出してきた人です。「公園通り」を誰が名付けたかなんて考えたこともなかったけれど、小池さんが付けたのだということを初めて知りました。なんというか、アクティブ。動ける人というのは、きっとできるかできないかなんて考えないのだろうな。もしくは考える前に動くか。そして、やはり人との繋がりが新しい何かを生むんだなあと思った。ひとりでやれることなんてそんなに多くなくて、いろんな人の協力があるからこそ実現する夢、みたいなもの。そして、人に協力したいと思わせる、周りの人を巻き込むほどのパッション、人柄。こういう、実績を残してきた人というのは総じてみんな物腰やわらか。気取らない、飾らない、いばらない。人間的魅力に溢れてる。生きている時代も違うし世の中や経済の流れも違うので、今の時代、彼女のしてきたことを模倣することは無理だけれど、その情熱や行動力や人柄は、ぜひ学ばせていただきたい。学べる種類のものなのか、謎だけど。



ところで、私は、現代アートがよくわからない。横浜トリエンナーレも何度か行ってみたし、学生の頃は勉強だと思っていろいろ足を運んだりしたけども、理解以前に、好きだとか嫌いだとか、そういう感情すら起こったことがあまりない。 じっくり見れば何かが見えてくるのかもと、目を凝らしてみてもだいたい頭の中が「?」でいっぱいになるだけ。 解説や説明を読んで、やっと作家のやろうとしてることや表現したいことがなんとなくわかる、ということがほとんど。 音楽や映画や芝居や本や写真や、そういうものでアドレナリンが一気に分泌される感じにはなっても、いわゆる現代アートのエキシビジョンで、身体が熱くなったことは一度もない。だから、現代アートをやる人や、それの発展のために何かをしている人に対して、嫉妬混じりの羨ましさがある。



結局私は俗物なのかと自分の芸術的感性やセンスに大きく欠落したものを感じてしまう。自分の理解できないものへの理解、情熱。国内外の現代アートを紹介してきた小池さんの仕事「佐賀町エキジビット・スペース」の話を聞いていて、すっかり置いてけぼり感をくらっていたら、最後の質疑応答で「今出ている女性誌、全部燃やしたくなる」と小池さんが言っていたので、一気に親近感がわいた。まったく同感。いつから女性誌はただのカタログになってしまったのだろう。新しいクリエイティビティはどこにもない。ただ、消費を促しているだけ。表面をなぞっただけの右に倣えのうすっぺらな流行。内輪で完結している感じ。ファッションスピリットは消えてしまったように思える。ドキドキもワクワクも何もない。



また、別の聴講者からの質問で(質問内容は長いし難しいので割愛。端的にいうと消費者のあり方について)、菊地さんが「みんな本当に自分の欲しいもの好きなものだけを買えばいいんだよ」とあっさり言っていて、やっぱこの人好きだなあ、と思いました。大半の人は、自分が本当に好きなもの自体気付いてないものだ。きちんと自覚しているからこそ言えるセリフ。アートディレクターなのだから当然と言えば当然なのかもしれないけれど。そういえば数年前、菊地さんは「10年間全く連絡とらなくても信頼できて、久しぶりに会っても、昔と変わらない距離で話せるのが本当の友達だ」という話をしていたことがあって、その当時の私にとって10年前とは中学生のことで、いまいちピンとこなかったけれど、最近ようやくその言葉の意味が実感できるようになった。「本当の友達」って思える人たちに出会えてるってことなのかしら。



くみちゃんとふたりで、対談の内容を反芻しながら帰りました。誰かと一緒に行くと、後で感想を言い合いながら、もう一度その内容や自分の感じたことを確認できるから良い。自分が取りこぼしていた内容も、友達が拾ってたりするとそこでまた気付くことができる。先月、青山スパイラルのミナ・ペルホネンのエキシビジョンで行われた皆川明さんと菊地敦己さんのトークイベント行った時はひとりだったので、憶えておきたいのに、頭の中でおさらいすればするほど少しずつ薄れていくようで、ほんと、切なかった。一番印象に残ったのは、ある問いかけに菊地さんが「僕、毒吐いちゃいますけどいいですか?」と言ったときに、皆川さんがすかさず「まあ、“毒を吐く”というのは理想を語るってことだからね」と加えたこと。そんな発想、初めて出会った。なんて素敵な感性だろうと胸が高鳴った。


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▲別れ際に、くみちゃんをパチリ


22:30 帰宅

ドラマ『Q10』観れず。AKB48の前田あっちゃんが出てるので、なるべく観るようにしているのですが、間に合わなかった。エリックがワインを飲んでいたのでご一緒させてもらう。あ、夜ごはんを食べてない。リンゴを剥く。リンゴとワイン。悪くない。今日は、果物くらいしか食べてないじゃないか。


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▲「Sally Scott」からDM


「Sally Scott」から、ちょうど案内が届いてました。「Sally Scott」は、皆川明さんがお洋服を、菊地敦己さんがグラフィックを、それぞれデザインしているアパレルメーカーブランド。新しい絵。今期のもの。素敵。明日行こう。



27:30 就寝

考えごとしてたら、眠れなくなった。

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