金曜。オビのデザインに悩む。 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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1年生デザイナーの1週間



1年生になったら~ 1年生になったら~♪  ということで、デザイナーという職業に憧れる読者のみなさんに先駆けて、一足早くデザイナーになった先輩デザイナーの1週間を追いかけるのが、このコーナーです。夢を現実にした新人デザイナーの仕事と生活ぶりは実際どのような感じなのでしょうか? 毎月第3週に、その曜日の出来事を毎日更新でお届けします!


今月の1年生デザイナー

矢部佳奈子さん(ジュン・キドコロ・デザイン)

yabesan

金曜。オビのデザインに悩む。



7:10 起床

だんだん寒くなってきました。寒いと、ベッドから出たくなくなる。



お気に入りの地中海料理レストランのママからいただいたトルコ土産を、開けてみた。“夜のお菓子は豚の国への片道切符”ということで、お菓子は朝開けることが多いです。一口食べてみると、なにやらオリエンタルな味。そして懐かしい食感、駄菓子っぽい。


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▲トルコ土産のお菓子


「僕はこういう薔薇の香りのお菓子は苦手だね」とエリック。いや、これは薔薇とは違うでしょ、どちらかというと、トイレの芳香剤の香りに近いかも、どうしよう。食べ物を粗末にしたくないけれど、私も積極的に食べたい味ではない。



9:00 会社へ

今日の音楽は、AKB48 teamA 2nd Stageのアルバム。「会いたかった」を聴いてたら動悸が激しくなってきた。これは青春パンクだ。歌唱力のない女の子たちが大勢で歌った時に生じるイノセントな響きが大好き。上手くなっちゃうと逆に表現できない、最高のピュアネス。私の推しメンは前田あっちゃんです。ブログは毎日チェックしますが、ここ半年くらいの、にわかファンです。「渚のCHERRY」も名曲。不朽の昭和アイドルポップソングに乗る、あっちゃんの不安定なあどけない声がたまらない。売り出し方にいろいろ波紋は呼んでいるけれど、だからといって彼女たちを批難したり中傷するのは、筋違いだと思う。夢に向かってがんばってる人っていうのは美しいものだ(容姿の問題じゃなく)。東京ドームでライブなんて、すごい夢じゃないか。いったい日本人の何%の人が東京ドームでライブができると思ってるんだ。全然くだらなくないぞ!と、イメージだけで批判してる人に言ってやりたいと、いつも思ってる。



10:10 出社&掃除

いつもの掃除が終わったら、さっそく『SALUS』の連載ページをいくつか渡される。もうフォーマットはできているものなので、微調整しながら原稿を流すような、どちらかというと作業に近いもの。こういうのをやる時は、目標時間を設定して、早く終われそうなものから、とにかく急いでやる。なぜなら、私はどうも手が遅いからです。パソコンがそもそも苦手という、救えな〜いハンデがあるので、とにかく早くできるように、手を早く動かす訓練だと思ってやる。

昨日から手を付けている『スコアブック』はまだ時間があるので、後回し。午前中に全部終わらすつもりだったけど、まだ力不足だったらしい。ひとつ残ってしまった。ぶふんっ。『SALUS』をやるときはバックナンバーを机に広げて、照らし合わせながら作業することが多いです。


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▲『SALUS』連載ページの流しこみ


12:55 お昼ごはん

ところで、夏に目のアレルギーでコンタクトレンズをお休みしていたのをきっかけにメガネを新調しました。憧れのクラシカルな丸メガネ。七宝焼のきれいな金色の華奢なフレーム。かなり気に入ってるのに、ストレートに言って不評です。「ないほうがいい」とはっきり言われるか、特に何もメガネについては触れられない。ひどい。最近はすっかりくじけて、仕事中しか掛けてません……。


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▲誰もいないので自分撮り。ピースは小顔効果


ここで一句。 丸メガネ 「似合う」といつかは 言われたい (そのまんま!)



14:00 『ふたりのサンドウィッチ』のオビ作成

『SALUS』の続きに取り掛かろうとしたら、『ふたりのサンドウィッチ』の通常版のオビ原稿が届いた。こちらを先に取りかかります。絵本版とほとんど同じ内容だが、雰囲気はまったく変えたいとのリクエスト。絵本版のオビの文字の入れ方でかなり悩んだので、ちょっと気が重い。うまくできるかな。



結局、かなり悩んでしまう。オビはパズルのようだ。だんだん混乱してくる。気分転換に『SALUS』の連載で使うチャートを作ったりする。絵を描くみたいでけっこう楽しい。


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▲ちなみに、これがチャートです


16:00 城所さんの鋭いチェック

とりあえず一度、城所さんにオビのデザインを見てもらう。見るなり一言、「ずいぶん子どもっぽく作ったね」。ああ、やっぱりそうですよね……。通常版の方が対象年齢が高いので、絵本版の子供っぽいのとは違うようにしなくてはいけないのです。ミッフィーやムーミンが好きな大人の女性が買いたくなるような感じ、とヒントをもらう。なるほど。私、両方好きよ。自分が欲しくなる感じにすればいいのね。でも、自分が欲しくなるような感じがわからない。オビを見て、本買わないしな……。う~ん、なんとなくわかったような、わからないような。



さらに、くもん出版の新刊本の途中経過を城所さんにチェックしてもらう。行間をもっと広げる指示。やっぱりな。章見出しのデザインがやや固いので、手書きにすることに。章見出しにあたしが使った書体は、活版のときはとても綺麗な書体だったそうだが、PostScriptフォントに移行したときに形が崩れたらしく、城所さんにとっては「ナシ」な書体だったらしい。書体選びは奥が深い。文字組みも。あたしと城所さんの目では、文字の見え方が全然違うんだろうな、といつも思う。いろんなものが見える目になりたい。



その後、数々の修正を経た章見出し。右が一番最初のデザインで、真ん中のを経て、左のデザインへ。手書きのラインで一筆箋風に仕上げました。


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▲章見出しのデザイン(途中経過)


18:00 『SALUS』連載ページ

PDFを送る前に城所さんのチェックは必ず入ります。さっそく、字ヅメの甘い箇所を指摘される。言われてみると、パラパラしてることに気付くけど、作ってる時に自ら気付くことができない……。あう。集中力か経験か。おそらく両方足りない。



19:00 退社

もう少しやったほうが後々良いかもしれないけど、今日は予定があるので、早めにあがることに。城所さんに「オビは月曜までだからね」と念を押される。はい。



19:30 新宿伊勢丹前で待ち合わせ

友人が国産ワイン専門のワインバーを10月に新宿二丁目にオープンさせたのですが、なかなか来ることができず、やっと初めての訪問です。ワインバー&ワインショップ JIP(ジップ)というお店。バーとは言っても。カジュアルな入りやすい雰囲気のお店です。普段、ワインはボルドーワインくらいしか普段飲まないので、ちょっとドキドキ。


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▲お友達のジュニア(と、私は呼んでいる)、店長さんです


意外にサマになっていた店長姿。ワインの説明を丁寧にしてくれる。かっこいいじゃんか。ジュニアとは初めて苗場で開催されたフジロックで知り合って、以来、私のわがままによく付き合ってくれています。スペイン最西端の、ほとんど下界から隔離されたような漁村にまで車を出してくれたこともありました。当時、彼はバレンシアに住んでいた。年下ですが、私よりずっとしっかりしていらっしゃる。「国産ワインってどうなの?」と、ちょっと下に見てたところもあったけれど、当たり前だけど美味しいものは美味しいのね。かわいい赤ちゃんみたいなワイングラスで、いろいろ試飲もさせてくれる。食事も美味しいです。


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▲パテ・ド・カンパーニュ。パテ大好き♪


これで半分なので、かなりのボリュームです。ポトフもサービスしてくれた。お肉が! うー・まー・いー・ぞおおお! イメージとしては、背後で富士山噴火!(ミスター味っ子風)


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▲本日お伴してくれたのは、いちさん(と、私は呼んでいる)

いちさんはベーシストです。ウッドベースを巧みに奏でるジャズマン。9月にやったライブのサポートベースを弾いてもらった縁で、お知り合いに。ワイン好きだと知って、ひっぱってきました。音楽の発表の場としてのニコニコ動画について語り合う。いちさんはボーカロイドの人気曲をジャズアレンジしたものを数曲ニコニコ動画にアップしています。わたしも同じく「歌ってみた」をアップしています。CDが1000枚売れても、いったい誰に届いてるのか実態がつかめないより、金銭的な見返りがなくても「好き」ってコメント100個もらえるほうがずっと届いてる実感がある。さらに派生動画まで作ってもらえたりしたら、こんなに嬉しいことはない。ところで、いちさんは歯と歯茎を見れば人の年齢がわかるらしい。へえ、それ面白いね。でもなぜ突然? どうやら、私の年齢が読めなかったらしい。



お会計。ずいぶんとお安いのね、と思ったら、割引した上に私が美味しくないと言ったワインをなんとサービスしてくれてた。う~ん、ありがたいけど、そんな商売してたら店つぶれるぞ。



新宿駅でいちさんと別れる。まったく逆なのに改札まで送ってくれた。金曜日の新宿は酔っぱらいだらけで危ないからって。ジェントルメン。また、飲みに行く約束をしました。



23:00 渋谷へ移動

渋谷に来ています。ひとりでわりとどこへでも行きますが、さすがに初めて入るDJバーの、知り合いのほとんどいない、おそらく内輪な雰囲気であろうイベントにひとりで入るのはちょっと緊張する。いざ。


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▲渋谷のDJバーへ

薄暗い、シャンデリアのある細長い店内。おお、思ったよりも人がいる。さて、どうしたものかと思ったところで「やべちゃん」と後ろから声をかけられる。このイベントに私を呼んだ人、ウスイさんだ。何だかいろんなことをやっている年齢不詳のミュージシャン。3~4年くらい音信不通だったところを、私が3週間くらい前にメールをして親交再開。



バンジョー弾きの青年を紹介される。ウスイさんが、このイベントに突然、私を呼んだ一番の目的は、彼を私に紹介すること。人も好さそうだけど、顔も良い。しばしご歓談。2ヶ月前バンジョーに魅せられて以来、バンジョーの虜になりロックに興味がなくなって、自分のやっていたロックバンド(ギター担当)を解散させてしまって、今はひとりらしい。その行為自体、とてもロックだと思うのだけど。



ウスイさんはあらかじめ、彼に私の話をしていたらしく、向こうから「一緒に何かできたらいいですね」と言ってくれた。ウスイさんの配慮に胸を打たれる。口約束で終わらせたくない。うん、何か楽しいこと、絶対一緒にやろう。しかし。バンジョーなんて、私はアイリッシュパンクか「おおスザンナ」の歌詞くらいでしか知らないんだな。しかも、私の根っこは間違いなくロックだ。どうやって、交ざっていけばよいのだろう……。そのあとも、ウスイさんに呼ばれるまま、ピチピチの平成っ子や、サラリーマン風なおじちゃんや、いろんな人にご挨拶。ああ、覚えられない。



23:45 ライブが始まる

詳細知らずに来てしまったけれど、どうやらウスイさんが面倒みているバンドたちのショーケース的なイベントらしい。ライブが始まる。楽しいライブは存分に楽しませていただくとして、何だかイマイチなライブは、それはそれでとても勉強になる。何が問題なのか。自分だったらどうするか……ちょっと考えてみたりする。上手い下手は一切関係なく、お客さんに向かっていないライヴは、まず間違いなく楽しくない。でも、そういうライブは案外多いものです。緊張なのか、優越感なのか、自己満足なのか……見えない隔たりみたいなものがあるライブ。いったい何のためにやっているのか。仰々しいパフォーマンスも、ハコが小さいと逆効果になる可能性が高い。お客さんとの距離が近いときはかっこつけるよりも素を出した方が雰囲気が和みやすい。でも一番はね、ステージに立ってる人たちが心底楽しんでないライブは、観ている方も退屈なのよ。魂の通っていない音楽に感動する人は、いない。音楽に、限った話ではないけれど。



ウスイさんの「やべちゃんが終電時間忘れちゃったらいいな~」の言葉に、我に返る。お、あと20分。みんなに挨拶をして駅へと向かう。こういうところで出会った人たちは、別れるときに「また」という。「また」。次がありそうな言葉。でも、実際に「また」がある人は多くない。でも、嫌いじゃない。「また」会うことを、期待している言葉。



24:53 終電

金曜日のJRの終電は久しぶり。混雑する車内。いろんな匂いが混ざりあっている。それぞれの過ごした夜の匂い。東京は、でかいぜ。



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